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ヨーダの物語 101

【前回までのあらすじ】
 少年ヨーダはジェダイ・アカデミーに通うジェダイ・イニシエイト。
 親友ギークは、元シス・ツキシマとの戦いで顔に傷を負い、さらに謎の老人レイゴウと戦うが完敗する。そしてレイゴウのもとで修行をし、ダークサイドに堕ちてしまう。その後ジェダイ・マスターふたりを殺し、ヨーダにも圧倒的に勝つ。
 ヨーダは、師匠となるグラドゥの住む星へ到着し、フォースとは何かを学ぶ。そしてギークとフォースの声のやり取りをし、居場所を特定していく・・!


 他の星でジェダイを志す若きイニシエイトや、修行中のパダワン、また、銀河中に点在する現役のジェダイや、引退したジェダイ、コルサントのジェダイアカデミーで学んでいたが、道半ばでジェダイになることをあきらめた者、愛する家族がジェダイテンプルにいる者など、それらのところへ心を向ける細い糸は銀河中に無数に存在した。
 「その無数の糸の元になる部分、発信者の中でたったひとつだけ霞がかかったような場所があるはずじゃ。それがギークのいる場所だよ。そんなことをする人物は、銀河中探してもひとりのみ。フォースで気配は消せても、ジェダイテンプルへ向かう心までは消し去れるものではない。隠そうとすればするほど、逆にやつは目立つことになる」
 ヨーダはグラドゥのアドバイスを理解し、無数の糸を一本一本辿っていった。一人ひとりにそれぞれの生活があり、コルサントへの想いがあった。その中には、ギークとレイゴウに殺されたジェダイの家族も含まれており、ヨーダの心は哀しみでいっぱいになった。
 ヨーダは地面に座って目をつぶり、横に に手を広げてしばらくその作業をつづけた。やがて、糸の先に霞がかかっている一本があった。
 「・・グラドゥ、見つかりました。アウターリムの向こう側、雷が常に落ちているような星に、ギークはいるようです」
 「ついに見つけたか・・、おそらくそれは稲妻の星、ザンダーじゃ。カミーノ星系のな」
 グラドゥは少し淋しそうに言った。ヨーダがギークのいる場所を見つけたということは、ヨーダが去ってしまうことを意味する。
 ヨーダは目を閉じ、ギークが発していると思われる、根本が霞がかった糸に意識を集中した。それは時間がたつにつれて太く、強固になっているようだった。他のどの糸よりも強く。ヨーダは目を開けて言った。
 「グラドゥ、ぼくはギークのところに行かなければなりません。コルサントへ向けられた意志の糸はどんどん太くなっていきます。ギークは今すぐにでも出発してしてしまうかもしれない」
 ヨーダはあわてないように、という師匠のアドバイスを守り、冷静に話した。
 「そのようじゃの。ついに時が来た、ということじゃ。いつギークが動き出すかもわからない状況で、はやる気持ちをよくコントロールしておる」
 「ありがとうございます。ぼくは必ずギークを説得して、ここに帰ってきます。そしたら・・」
 「そしたら・・?」
 「ギークと一緒に修行させてください!」
 「ほっほっほっ!何を言い出すかと思えば!修行はもう終わりじゃよ。修了証は無いが、あたしから教えることはもう無いよ」
 「いえ、まだまだあります!ここへ来てからずっと、今だって、自分が強くなればなるほどあなたの凄さをより感じるようになりました」
 「はっは。そう感じるかもしれんが修行は終わりじゃ。あとは自分たちでなんとかしなさい。あたしは毎日の生活と、森を守ることで精一杯じゃよ。おぬしの相手だけでも大変だったのに、もうひとり連れて来られたらたまったもんじゃない。
 ほら、早く準備して行きな。あたしがあせってきちゃったよ」

 ヨーダは荷物をまとめ、久々に宇宙船を起動した。操縦席の窓から、家の前に立つグラドゥを見つめる。年老いた師匠は、杖をついてうつむき加減で背中を丸めて立っている。グラドゥと出会ってからの修行の日々が走馬灯のようによみがえり、泣きそうになるのをぐっとこらえた。
  気づくとQQ11が副操縦席にちょこんと座っている。あとからミルクボールも同じところに飛び乗って、じゃれ合い始めた。ヨーダはびっくりしてグラドゥの方をもういちど見下ろした。
 『ミルクボール、いっしょに行ってもいいんですか?』
 フォースの声で問いかけた。
 『一緒に行きたいんだとさ。その子はフォースの感応性が高い。もしかしたらあんたを手助けしてくれるかもしれない。
 それにな、あの森で採れるスパイスの原料はな、あの森にしかない山菜と、ミルクボールの子供の骨なんじゃよ。おそらくその子の兄妹は、密猟者にやられてしまったのじゃろう。その子にとって、森にずっといるよりは、あんたといた方が安全かもしれん。それに育ちざかりだから、あたしといるよりあんたたちといる方が楽しいじゃろう。連れていってあげな。でも、その子の故郷はここじゃ、必ず連れて帰ってきなさい』
 『わかりました。必ず連れて帰ってきます!』
 『あと、ミルクボールに名前をつけてあげな』
 『考えておきます!』
 『ヨーダよ』
 『はい』
 『フォースとともにあらんことを』
 
 宇宙船は飛び立った。あっという間にグラドゥとその家は小さくなり、この惑星でたったひとつの森も小さくなり、雲を抜け地上は見えなくなった。一気に大気圏を抜け、宇宙空間にでた。
 「QQ11、アウターリムの向こう側、稲妻の星ザンダーに座標を合わせてくれ。ワープするぞ」
 QQ11は、操縦席のキーボードを前足で器用にカタカタと打ち、主人を見上げた。
 「ありがとう。よし、行こう」
 ヨーダは操縦レバーを手前に引くと、まわりの星々が線になって後方へ流れ、ハイパースペースに突入した。

 (ヨーダの物語 102へつづく)