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ヨーダの物語 53

【前回までのあらすじ】
 少年ヨーダはジェダイ・アカデミーに通うジェダイ・イニシエイト。
 親友ギークは、元シス・ツキシマとの戦いで顔に傷を負い、さらに謎の老人レイゴウと戦うが完敗してしまう。
 ギークはレイゴウの誘いで修行をすることになる。


 *

 ギークがレイゴウのいる恐れ山の洞窟に足を踏み入れてから二週間がたっていた。そのあいだ家には帰らなかった。おそらくそうなることは予想していたので、病弱な姉、リンクの世話を近くに住む叔母夫婦に頼んでいた。ギークはアカデミーの最後の合宿へ行くと偽って。
 叔母夫婦はリンクと一緒に暮らすことを提案してくれたが、お互い気を遣うからと、姉が断った。数日に一回様子を見にきて家の掃除や洗濯をしたり、料理を作りおきしてくれる程度の世話だった。ギークがパダワンになれば家を出なければならないため、遅かれ早かれ叔母夫婦の世話になることは増えるはずだった。それでも姉は叔母夫婦と暮らすことを拒否しつづけた。

 ギークはレイゴウの洞窟の、太陽光がわずかに差しこむ空間で木刀を構えていた。顔からはもう包帯を外していた。顔の左半分にはツキシマとの戦いで負った傷があるが、髪をおろしているためよく見えない。
 岩の壁の方ではレイゴウの『ペット』の獣が三頭、大きなあくびをして居眠りしていた。もはやギークを食おうとしても食えないとあきらめて一週間たっていた。
 レイゴウはギークに背を向け、何か金属を溶接していた。洞窟内には穏やかな太陽光と金属が発する激しい火花が混在していた。

 「そろそろ始めようか」
 レイゴウは振り返りもせずに言うと、ギークは、はい、と即答した。
 ギークのまわりには五本の金属の太い棒が立った状態で浮遊していた。それぞれの長さは均一で、ちょうどギークと背の高さと同じくらいだった。
 ギークは木刀の構えを低くした。金属棒が等間隔にギークの半径三メートルほどで取り囲むと、五本同時に回転し、ギークを攻撃してきた。
 ギークは地面を転がってそれらをよけ、目まぐるしく襲ってくる五本の金属棒を木刀で受け止め、はじき、時には受け流してしのいだ。
 金属棒をあやつっているのは背を向けたレイゴウだった。何かを溶接しながらギークの動きも見ずにフォースの流れを感じとって棒を操ってギークを攻撃していた。
 ギークが金属棒をはじくと、棒どうしがぶつかって激しい音と火花が散った。生き物ではないただの無機質な金属棒なのでそれらを倒すことはできなかった。フォースを使えば動きそのものを止めることはできるだろうが、『フォースで棒の動きを止めること』はレイゴウが禁じていた。

 (ヨーダの物語 54へ続く)