ヨーダの物語 44
【前回までのあらすじ】
少年ヨーダはジェダイ・アカデミーに通うジェダイ・イニシエイト。
人間をさらって喰うと言われる元シス、ツキシマを親友ギークと共に倒すため、死の渓谷へ降りていき戦って勝ったが、ギークは深い傷を負ってしまう・・
シューマ博士はギークの肩を抱きながら、
「今は起き上がれる状態じゃあない。おまえの姉さんにはわしから説明しておく」
と諭した。
ギークは眼をかっと見開いて、
「おれは今日遊んでいたら崖から落ちてケガをした、それでいいですね?」
と、声を振り絞って言ったあと気を失った。
シューマと医師は、困った表情で顔を見合わせた。医師からギークの姉に連絡し、しばらくすると姉のリンカが来た。叔母と一緒にスピーダーに乗ってきたらしい。パジャマに上着を羽織っていた。かなり痩せていて、ギークと同じ青く美しい髪を後ろで束ねていた。顔色は白く、すこし高すぎる鼻は、鼻筋が通り、その両サイドに大きな二重の眼があった。病弱な印象だが、瞳はしっかりと青く輝いていた。
「ギーク・・!」
リンカはベッドに横たわる弟に駆けよって膝をついた。ギークは眠ったままだった。老医師が状況を説明した。
「友達と遊んでいた時に崖から足を踏み外して落ちてしまったようです・・。命に別状はありません。幸い左眼は生きていますが、今まで通り見えるかはわかりません・・」
「ギーク、崖から落ちたなんて・・。その崖はとてもずる賢くて、人間ばかり突き落とす悪い崖なのね。あなたはその崖から私を守ろうとしてくれたのね」
ヨーダは大きな眼に涙をためて顔を伏せた。ギークの姉はすべてを理解していたのだ。その上でギークを見送ったのだろう。そう思うと、ヨーダは涙を止めることができなかった。
「ごめんなさい・・おれがついていながらこんなことに・・」
「いいのよヨーダ。この子はすべてを覚悟して自分で決めたのだから。あなたを巻き込んでごめんなさいね」
「いや、おれは、おれは・・」
ヨーダはギークの姉にこんなことを言わせてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
ギークは老医師のもとに二週間入院し、やっと自宅に帰れるようになった。
それから一ヶ月ほどしたら、ジェダイ・テンプルからマスターがらやってきて、ギークの実力を見極め、パダワンにふさわしいか「査定」する予定になっていた。
ジェダイ・テンプルはギークのケガを考慮し、「査定」の時期の延長をギークに提案したが、ギークは予定通りマスターに来てもらいたい、と伝えた。
ヨーダは、ギークといっしょに死の渓谷に行ってツキシマと戦ってから、ツキシマが人間をさらっているという話はきいていない。
ツキシマの姿はヨーダが刺したあとに消えてしまったが、あのまま死んでくれていることを、ヨーダは祈った。
今もヨーダの両手には、ツキシマの腹を刺した感触がなまなましく残っていた。
(ヨーダの物語45 へつづく)