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ヨーダの物語 88

【前回までのあらすじ】
 少年ヨーダはジェダイ・アカデミーに通うジェダイ・イニシエイト。
 親友ギークは、元シス・ツキシマとの戦いで顔に傷を負い、さらに謎の老人レイゴウと戦うが完敗する。そしてレイゴウのもとで修行をし、ダークサイドに堕ちてしまう。その後ジェダイ・マスターふたりを殺し、ヨーダにも圧倒的に勝つ。
 ヨーダは、師匠となるグラドゥの住む星へ到着し、フォースの真髄を学んでゆく!


 ヨーダは、もう起動しなくなった金属の球四つをフォースで浮かせてグラドゥと森を出て、家路を歩いた。途中にある大きな岩の前を歩いていると、いきなり岩が真っ二つに割れた。ヨーダはあまりに突然なことにびっくりして「うわっ!!」と声を出して尻もちをついたが、何者かが襲撃してきたと思い、すぐに立ち上がって棒を構えた。
 「グラドゥ、これは・・!」
 ヨーダが警戒心を解かずに問うと、グラドゥは横の小さな岩に座り、「これはあたしがやったよ」と言った。
 ヨーダには、岩が割れる直前にグラドゥと岩のあいだにフォースのやり取りがあったのを感じ取れなかった。フォースのやり取りをせず、岩を割ることなどできるだろうか。ヨーダはその疑問を素直にグラドゥにぶつけてみた。
 「先日、おぬしの前で岩を割ったのを覚えているか?どれ、この石をひとつ割ってみい」
 ヨーダの前に頭の大きさほどの石が浮いてきて地面に落ちた。グラドゥがフォースを使って運んだものだ。グラドゥとその石の間には、確かにフォースを感じとることができた。ヨーダは両手を胸の前で組み、石と自分の間にフォースがあることを確かに感じた。石の重心を捉えて浮かし、石の中の亀裂が入りやすい部分をフォースによって探った。両手をぱっと離すと見事に石は割れ、地面に落ちた。
 「よろしい。それでは、そこにある岩を、いまフォースを送り、一分後に割ってみよ」
 「え?そんなことができるんですか?」
 「あたしがやったのがそれだよ。先日あんたの前で岩を割ったあと、もう一度同じ動きをしたじゃろ?」
 「あー!あれ!」
 ヨーダはその時のことを思い出して叫んだ。グラドゥは、目の前で岩を真っ二つにしたあと、同じ動きを再びしたが何も起こらなかった。グラドゥは時間を超えるフォースを操ったということだろうか?
 「とりあえずやってみい。一分後にこの岩を割るつもりで、フォースを操ってみなさい」
 「でもそんなことが僕に・・?」
 「フォースを、自分を疑うでない。まずは信じることじゃ」
 「ヨーダは目をつぶり(フォースと世界に心を開き、集中するときに、無意識に目をつぶるようになった)、自分と岩との間のフォースを感じ取った。そして、一分後に岩が割れることをイメージしながら、できる限り信じながら組んだ両手をぱっと離した、と同時に岩も割れた。
 グラドゥはうつむいて、
 「やれやれ、まだフォースと自らを信じきれていないようだね・・。フォースは時間を悠々と超えるし、空間も超える。先に、空間を超えることから始めようかね。
 まずはイメージすることじゃ。おんたの故郷と、この星の間にある無数の小惑星のことを想像してみい」
 ヨーダは再び目をつぶり、ジャクーとこの星の間にあるフォースを感じ取り、その間にある無数の小惑星のことを、時間をかけて想像した。
 「・・想像できました」
 ヨーダは小さくつぶやいた。
 「その小惑星の中からひとつ、小さいので良い、選んで割ってみい」
 ヨーダは小惑星群全体のフォースを感じ取った。小惑星群はゆっくりと音も無く移動している。密集地帯では小惑星同士が小さな衝突を繰り返し、わずかに軌道を変えている。それをヨーダは感じ取ることができた。
 その中からひとつ選んだ。ヨーダの体とちょうど同じくらいの大きさの岩だ。両手を組んでしばらくじっとした。宇宙全体に心を解放すると同時に、ひとつの小惑星に意識を集中した。そして両手をぱっと離した。
 「どうじゃ?割れたか?」
 「・・割れたと思います。いや、割れました」
 「おんたには少なくともそれが想像できたと?」
 「はい」
 ヨーダはゆっくりと目を開いた。

 (ヨーダの物語 89につづく)