09. 「本当にやりますか?」〜後編〜
朝日を浴びた山が、まるで深呼吸をするかのように目覚めていく。
森が目覚め、動物が、人が目覚める。
そこでは人は自然の一部。山や森と共に眠り、目覚め、呼吸をする。
肉体と自然の境界線が曖昧になるが、同時に自分という存在がくっきりと明確になる感覚を覚える。
@ネパール、ポカラ
前回のNOTEでは、人はなかなか変われないこと、とは言え動いていかないと人生を後悔してしまうということについて書いた。
今日は、勇気ある一歩を踏み出す姿勢を見せてくれた、クライアントについて話したいと思う。
その方は、僕より二回りくらい歳上の男性。
素敵な願いを持っていて、自分の望む在り方を描いている。
自分にできる行動をしていて、それを継続している。
だけど、もっと周囲へのインパクトを与える余地が多分に残されているし、一歩を踏み出せていないことに薄々気付いている。(だけどそれを明確に言語化できていない。、、、それが意識的なのか無意識なのかはわからない)
望みを持つ一方で、心地の良いコンフォートゾーンから出ることができていない状態が、ありありと伝わってくる。
これまで踏み出すことの出来なかった勇気ある一歩というのは、簡単に踏み出すことができない。
常々「やりたい!」と思っていても、習慣や怖れがそれを押し留めてしまう。
これを打破するにはいくつかの方法があると思う。
それは、衝撃的な出来事により押し出されることであったり、人生の局面が変わったことで、一歩を踏み出すことが不可避になることもあるでしょう。
だけど、その一歩をもっと意図的且つポジティブに踏み出していきたい。だって、不可避になる局面を待ってたらいつになるかわかんないでしょ。来ないかもしれないし。
じゃあその為に何が必要なのかと言えば、それは自分と語り合うことと、そして誰かに応援もらうことだと思う。
目の前にどれだけ色鮮やかなニンジンをぶら下げてもらっても、モヤモヤが解消されないと動き出すのは難しいよ。
モチベーションのきっかけを外部に期待するのではなく、自分をよく知って、本当にそれがやりたいのか、何が阻害要因なのか、一歩を踏み出すことで将来がどんな風に変わっていくのか。
そうやって自分とよく語り合うことで、その一歩の価値を強く実感できる。
ググっても答えなんて書いてない。
答えは常に自分の中にあるものだと思ってる。
もう一つのキーは誰かの応援。
人は弱い生き物だから、自分一人では簡単に折れてしまう。
だから、自分以外の誰かの存在が大切。
「好きなあの子の為に頑張る」とか、「子どもが応援してくれてるから、その期待を裏切りたくない」とか。
そんな風に感じたこと、きっとあるよね?
そのクライアントは、「自分はこういう存在でありたい」という願いを持つと同時に、「だけど周りにどう思われるか」という不安を抱えているように見えた。
自分の内側では理想の在り方を求め、だけど外側にはそれを示すことができずにいた。
セッションの後半、彼は多くの新たな行動に対して「やります!」と軽快に答えていった。
だけど、コーチの僕には、その言葉が自分の内側にしか向けられていないように聞こえた。
要は、言ったはいいけど実行されない、という未来が見えた気がした。
「本当にやりますか?」
真っ直ぐに彼を見つめ、真剣に問いかけた。
彼の変わろうとする意志が試される。
せっかくコーチングする機会をいただいたのだ。
小さなきっかけでもいいから、意義のある変化を持って帰ってもらいたいし、そうすることで彼の人生がより彩り豊かなものになると確信していた。
彼は、コンフォートゾーンから抜け出し、勇気ある一歩を踏み出すことを約束してくれた。
それを約束し、実行していくことは簡単なことではないと思う。
不安と期待が同時に見え隠れする。
だけど、人が本当に変わっていくというのは、そういうことなんだと思う。
これまでの安全な領域から一歩抜け出していくことは、“清々しく心地良い“だけで済む訳がない。
でもだからこそ、その不安も抱えて前に進んでいける人を、僕は祝福したい。
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