今泉力哉監督『街の上で』を観た

今泉力哉監督『街の上で』をHuluで偶然観た。
不思議な魅力の心地好さにダウンロードして何度も観た。BGMの様にただ流してたりもしたくなる様な映画。その心地好さの正体は「曖昧」なのかも知れないと思う。

「好き」「嫌い」とか気持ちはいつもハッキリしてるものではなく曖昧なもので、そんな曖昧さが曖昧なままに描かれていると感じた。その曖昧さは、脚本がある映画ではなく、まるで隠し撮りで撮られたドキュメンタリーの様な生々しさにも映る。

曖昧さは、観る側一人一人にもある。同じ映画を観てもその映画から受け取るものが個人個人違う様に、監督の思惑を全ては拾い切れる訳もない。だから「どうしてあの子はあの場面であんな嘘をついたんだろう?」なんていうシーンも残った…。だが『街の上で』は意図的にその曖昧さを描いた作品の様に思う。

現実の生活でも、自分自身でも自分の気持ちがわからない曖昧な事や、曖昧なままにしておきたい事が誰しもあるだろう。そんな曖昧さに溢れている愛しい映画だった。

エンディングで流れる「ラッキーオールドサン」の『街の人』の歌い始めにかすかに聴こえるひと呼吸が、曖昧な余韻を優しく心に繋ぎ留める。


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