6.としまえんの回転木馬は「メリーゴーランド」?  遊園地で迷子になった「ウ」

 高い所が苦手なので、遊園地ではジェットコースターや観覧車は通り過ぎ、もっぱらコーヒーカップやお化け屋敷を楽しんでいます。

 回転木馬に初めて乗ったのはとしまえん。華やかな色彩と装飾、一頭一頭の姿が異なる木馬に驚いたことを覚えています。

 その回転木馬が100年以上前にドイツで作られ、アメリカを経て日本にやってきたと知ったのは、閉園後の新聞記事でした。
 そしてさらにその記事で注目したのは、回転木馬が「メリーゴーラウンド」と表記されていたことでした。

 「メリーゴーランド」ではないのか。

 さっそく『記者ハンドブック』(共同通信社)の外来語のページで調べると「メリーゴーラウンド」となっています。手元のいくつかの国語辞典も見出しは「メリーゴーラウンド」ですが、『明鏡』は説明に「メリーゴーランド」とありました。

 では回転木馬を設置している遊園地はどう表記しているのでしょうか。

 としまえんのHPは閉園後もまだ開設されていました(2020年9月現在)。
 回転木馬「カルーセルエルドラド」の紹介ページには外来語の「メリーゴーラウンド」「メリーゴーランド」のいずれも出てきません。ただ別の乗り物で「カーメリーゴーランド」というのがありました。

 日本最古の遊園地、浅草花やしきのHPでは「メリーゴーランド」。西武ゆうえんち、よみうりランド、よこはまコスモワールドも「メリーゴーランド」。一方、富士急ハイランド、ひらかたパークは「メリーゴーラウンド」です。

 ざっとインターネットで検索をかけたところでは、「メリーゴーランド」が多数派なのかなという印象です。

 たしかに回転木馬の英語の綴りは「merry-go-round」です。「round」はボクシングやゴルフ用語で「ラウンド」として日本語に定着しています。「ラウンドネック」のような複合語もあります。

 では「ウ」はいったいどうしてなくなってしまったのでしょう。

 外国語が日本語の中に入ってくるとき、はじめは外国語の発音に近い表記がされ、日本語の中に外来語として定着する過程で表記が変わることがあります。

 「merry-go-round」が日本語に入ってきたときは「メリーゴーラウンド」だったと考えられます。それがいつからか、何かの理由で「ウ」がどこかにいってしまって「メリーゴーランド」が広がったのでしょう。

 私は「メリーゴーラウンド」が各地の遊園地にできて、楽しむ人が増えるにつれ、「round」の意味が薄れてしまったことも「メリーゴーランド」化の一因ではないかと想像していますが。

 ところで「カルーセルエルドラド」の「カルーセル(carousel)」は、アメリカ英語で回転木馬のことだと手元の英和辞典に出ています。つまりとしまえんの回転木馬「カルーセルエルドラド」は、「メリーゴーラウンド」でも「メリーゴーランド」でもなく、「カルーセル」だということになります。

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