これまでやってきた事と、これからやっていきたい事について
0.はじめに
私はうちばこやというボードゲームや木駒を販売するお店を経営しています、田中潤平と申します。
「アクアガーデン」のプロジェクトを進行していく中で、関わる人数や関わる会社、作る数、流通の仕方、トラブルの発生回数なんかがどんどん増えたり変わったりしてきて、進め方を日々改善してきました。
「これ、相当なコストをかけて勉強・改善したのに、どこにも公開しなかったらもったいないな」
と思ったので、改善の道すがらではありますが、この記事を書くことにしました。
うちばこやを応援してくださっている皆様への現状の考え方の報告と、自分自身の考え方を整理したい、及びボードゲームを作るときに困っている方の解決に少しでも役立つこと、がこの記事の目的です。
本当にいろんなことを学び、考えてきて、やっと言語化できるレベルまで解像度が上がりました。すべてを書くと長くなりすぎてしまうので、掻い摘んでいます。気に入っていただけたらスキボタンを押してもらえるととても嬉しいです。
僕はボードゲームが本当に好きで、世界に面白かったり、楽しいボードゲームがもっと生み出されるととても幸せを感じます。少しでも力になれたり、話し合って理解を深めることが出来たら嬉しいです。
他の業種の方でも、感想や共有があったらお気軽にコメント欄にてご連絡ください。
1.トラブルの発生と対処について
アクアガーデンのプロジェクトを始める前、自分には扱ったことのない規模のプロジェクトでしたし、英語も当時はあまりできなかったので、トラブルが多少は発生するだろうな〜と思っていました。1年が過ぎた今正直に告白しますと、おそらく潜んでいるであろうほぼ全てのトラブルを経験したんじゃないかなあと思います。
これは僕のマネジメント能力が今よりすごく低かったことにも原因がありますし、時節柄仕方のなかったことや、頼んだ先が悪かったことに起因しているものもあります。
最初のうちはトラブルが発生するたびに食事が喉を通らないような状態になり、毎回2-3日続いていました。
しかし、送料の爆発的な値上がりや製造の遅れ、制作の遅れ、信じられないようなエラッタ、海外の小売店への配送への一部未封入、配送の遅れや箱潰れ、コンポーネントの不足etc...あまりにも何度も経験したので、少しだけ対処法が身につきました。
僕の中では、トラブルへの対処のルールは3つあります。
1、そのトラブルの発生により迷惑がかかってしまう人がいる場合は、正直になるべく早く告げ、謝り、説明し、可能な限り誠実にリカバリー対応すること。
2、自分で対処ができない場合は、助けを求めること。
3、反省し、再発しないように最善の努力をすること。
この3つを愚直に守れば、問題をそこまで大きくせずに解決できることが増えます。
理由は、問題の多くは納得感や充分な説明がないために大きくなってしまうからです。
(うちばこやにおいても、現段階ではいくつかの問題において充分な納得感や説明をできていないと思います。なるべくちゃんと文字や動画にして、内情を透明に公開し、自分がどういう考えのもとその結論に至ったかも明記していきたいと思っています。)
僕はとても不完全な人間で、今後もいろんな人や会社と仕事をしていく以上、沢山のトラブルや失敗が発生してしまうと思います。
今後はより一層、「可能な限り誠実に、素早く透明に状況を公開し、できうる限りの対処を行う」ことを徹底していきたいと考えています。
うちばこやをいつも応援してくださるお客様にはいつも暖かく見守っていただき、心から感謝しております。その暖かさに甘え続けることなく、良いお店になれるように努力していきます。
2.勝利点の一致
アクアガーデンのプロジェクト後に、いろいろと思う所があり、チーム構築の方法についていろいろと考えました。
人間関係における「勝利点の一致」という概念について書いていこうと思います。
勝利点の一致というのは、「誰かが何かに成功したり勝利したりするとき、一定以上の手数を割いて関わる人も一緒に勝利しなければならない」ということです。
これは名誉であっても、喜びであっても、お金であっても良いですが、「どちらかの利益がどちらかの損失になる」ような関わり方は長期的に見て絶対に避けた方がよいと考えています。
そういった齟齬や、成功に対するブレーキがあると、プロジェクトはどこかのタイミングでフレンドリーファイアのような負の影響を受け、必要以上に消耗し、再建に数ヶ月単位で時間を費やすことになってしまいます。
クオリティを上げるため以外のことに手数を割くことになるので、応援してくださるお客さんの期待に応えることも難しくなってしまいます。
今後は、より高いクオリティのものを作り、お客さんもチームメンバーも、もちろん自分自身も幸せになるため、各メンバーの勝利点と背反する関係にならないように定期的に関係性や報酬体制のチェックを行い、チームに関わってくれる各々のメンバーに対して丁寧にヒヤリングを行いながらプロジェクトを進めていきたいと考えています。
これは、お客様に対しても、取引先様に対しても同じです。背反する関係にならないように細心の注意を払いながら、長期的な関係を築いていけたらとても嬉しいです。
次回作のOstiaというゲームでは、プロジェクトの進め方を大幅に改善しています。各メンバーと今後もしっかりと時間をかけ信頼関係を築き、勝利点の一致したチームを編成していきます。
3.ミドルサイズ以上のゲームを販売することについて
僕はボードゲームに関する仕事をしてきて、たまに言われることがあります。それは、「ボードゲームをお金稼ぎの道具としてしか見ていない!」といったものです。
僕は自分の精神面での健康を守るために、こういったメッセージは大抵スルーすることにしていますが、これに関しては自分の情報の出し方が足りていないことに起因しており、スタンスを明確にしたかったので触れようと思います。
その上で、「僕がボードゲームをお金稼ぎの道具としてしか見ていないならば、そもそもミドルサイズ以上のゲームを取り扱うことはない」です。
簡単な表を用意してみました。
すごく感覚的で出典もないので、意味のある表ではないのですが、おおよそ感覚として理解していただけると思います。
商材として優っているところは、配送等人件費くらいだと思います。(配送等人件費は、そもそも販売個数に応じて生じる変動費用のため、この比較自体がナンセンスかもしれません。)
よって、効率よくお金を稼ぐためにミドル/ヘヴィゲームを販売するのは悪い手であり、僕がミドル/ヘヴィゲームを販売しているのはお金のためだけでないことが理解いただけると思います。(もちろん、ライトゲームを作るのはそれはそれでめちゃめちゃすごい技術で、コストのかかることです。)
僕がこのような商材を取り扱っている理由は二つあって、一つ目は「重めの面白いゲームが好きだから」です。
全員と話したことがあるわけではないですが、多分、他のミドルゲーム以上の重さのゲームをローカライズしてくれたり、出版したりしてくれている会社の人たちも、みんな一緒なんじゃないかなぁと思います。少なくとも、僕が話したことのある人達はそうでした。
そして二つ目は、「面白いゲームがもっと世に出るために、ゲーム作りが得意な人がゲーム作り以外の様々な作業をしなくていいようにするため」です。めちゃめちゃ面白いゲームを作れる人が、アートワークや広告、ルールライトや流通、テストプレイの人集めやスケジューリングなど、山のような作業のためにたくさんの時間を使ったり、それによって出版を諦めてしまうのは、僕にとって大きな損失で、避けたいことです。
正直、これらの仕組みを作るのは本当に(本当に!)大変で、お金も時間もかかるし、不透明で試さなければいけないことばかりですが、とてもやる意味を感じています。今後も上記の考え方に沿って仕事を進めていくつもりです。
さて、僕のスタンスを明確にした上で、いい大人が冒頭のようなメッセージを他人に送りつけたり、目の前で言うのは、すごく無礼で恥ずかしい行為であることも主張しておきます。
4.法人化と新入社員と新しく参加してくれたチームメンバーについて
うちばこやは、数ヶ月以内に法人化を予定しています。
それに伴って、新しい社員さんを迎えることが決まりました。自分からこの人と一緒に働きたいと思い、お声がけさせていただきました。
来年の4月から一緒に働いていただくことになりますが、もう本当にめちゃめちゃ楽しみです。
ちなみに、来年の1月上旬発売予定のTakewatchさんデザインの二人用ゲーム「Sapporo1876」のアートワークはこの方が担当してくださいました。
楽しんで働いてもらって、うちばこやを好きになって貰えるように、仕組みを作っていきたいと思います。
また、大きな変化として、Sui worksさんをプロジェクトマネージャーとしてチームに迎えることになりました。これによって、僕がクオリティを上げるための作業にフルコミットできるようになりました。製造を委託している工場とのやりとりなども担当していただくため、品質やエラー率も改善できると思います。
お二人とも、今後よろしくお願いします!!!
5.商品の品質やエラーについて
さて、ここからは1のトラブルの発生の話とも関わってくるのですが、情報の公開が足りなかったと思うので公開しておきます。
うちばこやは、木駒を除き、全ての部品の製造・丁合・シュリンクなどを中国の製造工場に業務委託しています。
中国での製造は、国内での製造に対して、価格や、出来ることの多さ、世界各地への倉庫への物流網がある、といった優位性があります。
国内でボードゲームを作り、一般的な価格で販売し、利益を得る場合は、多くてもカード60枚くらいが限度かなぁと思います。タイルやボード等の国内の相場は、商売になるレベルにはありません。アクアガーデンを全て国内で作ったら、製造原価だけで定価を超えます。
ですが、日本で作るモノは本当に品質が高いです。エラー率でいえば、業種によりますが1%を超えるものはほとんどないと思います。対して、中国でのボードゲームの製造では、基本的に平均3-4%くらいのエラー率になります。
もっとわかりやすく言い直すと、中国で製造している以上、100人中3-4人のゲームではなんらかの不具合が発生してしまう、ということです。このエラー率はコンポーネントの種類が増えれば増えるほど上がっていきます。これが、ボードゲームの製造の現状です。
もちろん、僕は工場の担当者と密にコミュニケーションをとり、エラー率を下げるための提案と努力をしてきました。しかし、どうしても一定数エラーは発生してしまいます。
アクアガーデンの第二便では、ゲーム内の布袋の一部にカビが発生していました。
日本に到着した時点でもちろん検品は行いますが、配送前に全ての箱を開け、内容物の個数や状態を全てチェックし、シュリンクをかけ直してから送るのは、不可能です。
そのため、一通り送ってしまい、エラーがあった場合には交換対応を行うことでこの問題に対処していきたいと考えています。開封する瞬間の喜びや、届いたときの喜びを阻害してしまうことも多々あるかとは思います。本当に、大変申し訳ないです!
「お客さんの手元に、最終的に完璧な状態の商品を現実的なコストで送る」ためには、現状この方法しか思いつけずにいます。
箱の小さな凹みや傷などは対応できない可能性もありますが、今後は交換対応の範囲を少しづつ広げ、手続きの簡易化を進めていきたいと思います。また、乾燥剤を入れるなど、各々のエラーの原因に対して個別に改善を行います。
購入していただいた上に、お問い合わせなどをしていただく面倒をおかけしてしまうのは、大変申し訳なく思っております。どうかご協力のほどよろしくお願いいたします。
上記について、納得できない方もいらっしゃると思います。残念ながら、初期不良が発生してしまうこと自体は今後も避けることができないと思います。お互いに幸せになることが出来ないと思いますので、うちばこやの商品を購入しない、という選択をしていただけると助かります。
6.ゲームを遊ぶことについて
本記事の最後の項となります。
僕はうちばこやにおいて、プロとしてお金をもらいながらゲームの企画とデベロップメントや広告を行っています。
僕はお客さんに対して誠実でいたいので、自分たちの商品がより良いものになるように一つの手抜きもなく努力する意思があります。そのために、僕はあらゆるゲームを日頃から遊び、考察し、言語化することを習慣にしています。ゲームを遊ぶために引っ越しもしました。
まだまだ及ばないところは沢山ありますが、先人たちの肩に乗りながら、少しでも新しく、楽しく、面白いゲームを、確かな知識・裏打ちをもって提供していきたいと思います。
----------------------------------------
以上、大変長い記事となってしまいましたが、うちばこやの現状報告と今後の方針となります。
真面目に取り組んでいきますので、応援していただけるとありがたいです!
現在、うちばこや以外のプロジェクトにも参加していて、こちらも近々アナウンスできると思います。
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました(^.^)/ 楽しんでいくぞ〜!
うちばこや 田中潤平
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?