23/2/21

笹井宏之『えーえんとくちから』を読み進めた。
読み進めるほど現在活動している歌人への影響力というか、直接的に目にする手法の元ネタを見ていくような感覚があって答え合わせをしているような気分になった。もちろん間接的に自分も影響を受けているのだと思う。
SNS等で引用されがちな歌は紙で読むのが初めてでも暗誦できるほど親しんでいるものもあって、とはいえそれは笹井短歌の暗誦性の高さ、韻律の良さに担保されていたのだと改めて感じられた。

その中で初めて読んだ歌、恐らくはあまりSNS等で目にしたことがない歌で気に入った歌を以下にメモ

水仙にアイスピックを突き立てて祈りのような言葉を吐いた
戦争が優しい雨に変わったらあなたのそばで爪を切りたい
すこしずつ存在をしてゆきたいね なにかしら尊いものとして
世界って貝殻ですか 海ですか それとも遠い三叉路ですか

夕方に上野千鶴子が実は最近パートナーの男性と入籍していたというニュースが目に入った。
上野と言えば「おひとりさま」を宣言して婚姻制度反対のラディカルフェミニストなわけだけど、恐らく自分やパートナーの年齢や今後も加味して入籍しておいたほうが諸々有利に働くと判断したのだと思うし既存の制度にイデオロギーとして反対していてもハックできる制度は使えばいいと思う。
例えばボーヴォワールとサルトルのように生涯婚姻制度と無関係なまま添い遂げることは美しいと思うけれど時代も立場も違うのだし比較するのは現実的でない。
ファイアストーンのように床のシミになるのも美学だとは思うけれど他者に求めるようなものでもない。
なにより哲学者や思想家だって「転回」することは十分にありえるのだし。

とここまで書いていて考えたのだけど、上野千鶴子が婚姻制度にロマンを僅かでも感じていたとしたら話は変わってくるとおもうし、
そこが争点になってくるのではないか


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?