KZ、4thアルバム『GA-EN』リリースインタビュー
大阪、梅田サイファーの主要メンバーであるKZが8月21日、4thアルバム『GA-EN』をリリースする。『GA-EN』は、全曲セルフプロデュース作品となっており、フューチャリング楽曲も多く、前作のアルバムとはまた違う魅力に溢れた作品に仕上がった。楽曲の中ではリスナーとのコミュニケーションの中で感じた日常に生まれる悲しみや苦悩、自分自身の10代の頃抱えた深いトラウマと向き合っている。
1stアルバム『PULP』と2ndアルバム『CASK』はすでに入手困難となっており、3rdアルバムの『NORITO』に関しても既に品薄状態である。また東京・大阪での開催を予定していたKZにとって初となるワンマンライブ「すくわれろ」は現状を踏まえ、オンラインライブに切り替わり、9月5日・19日に開催される。今回は悩んでいる人の道導になれば、と願った4thアルバム『GA-EN』の制作、客演、一曲一曲への想いなどについてKZ自身に話を聞いた。
──4thアルバム『GA-EN』制作で意識したことや、今までと変えたことはありますか?
1枚目の『PULP』は手当たり次第それまでに作ったものを詰め込んだ感じやって、2枚目の『CASK』、3枚目の『NORITO』はその時の自分の状況や心情みたいなんが中心にあって、意図的なコントロールはなくて自分のメンタルとかの状況から生まれてきた自然発生のもの。今回4枚目の『GA-EN』に関してはこういうのを作ろうっていうイメージを持って作れたアルバムになってる。『GA-EN』はもともと内に篭らず作ろうって気持ちがあったから良い意味で客観的に作ることができた。『PULP』があって『CASK』で落ちて『NORITO』で強い肯定を得てそれらを全て持った上で、人と曲を作る事も自体もそうやし、トピック選びもそうやし、自分のこと書く時もそうやし、出会った人や事柄の事も歌えるように意識して作ったところはあるかな。
今回、フューチャリングしている人たちは悩まずに決めた。
──客演が多かったのが印象的でしたね。
せやねん。今回、フューチャリングしてる人たちは悩まずに決めたな。考えた結果こうなったというよりは自然にパッとやな。作るんやったらこの人たち、みたいな。
『CASK』『NORITO』と1人でやってきたから、人とやるのしんどいかなとかあってんけど意外としんどさもなくて、向こうの歌詞とかにインスピレーションもらうことも多くて逆にペンが軽くなる瞬間も多かったりとか。普段自分が書かない事とか、対比みたいなんを結構意識して、書かせてもらったことや引き出してもらった言葉とかがあるかな。そうゆう意味では客演って悪くないなあって作り終わって感じたところ。
──どんな風に作っていったんですか?
基本はビートのストックを10〜20曲くらい渡して向こうに選んでもらって、極力自分はディレクションしない。テーマやコンセプトに関しても向こうが出してくれるものに、自分の身を委ねれるところは委ねようと思って。当然話し合いはするけど。
──「Returnhome」客演のDUSTY-Iさんを選んだ理由は?
大阪にフックアップってイベントがあってシュガやんっていうオーガナイザーがやってんねんけど、それは初めてマイク握る子も、俺も出てたし、大阪やったらDraw4も出てたし、みんな持ち時間10分とかで、どんだけライブしたことない子も普段ゲストで呼ばれてる子も誰でも出れるイベントやねんけど、たまたまそこにDUSTY-Iも来てて、お互いライブ見てて喰らった部分があって、その後話して今まで聞いてきた音楽とかも近しい事を知って、その時に曲やりたいって話してたのが実現してん。確か2018年の春先とかの話やな。
──「廻る Remix」客演のKyonsさんを選んだ理由は?
KyonsはFREAKSのラッパーの子やねんけど。もともと廻るはHRKTのTERUとDraw4の曲で、ビートが俺でTERUに提供してDraw4がフューチャリングしてて、すごい良い曲で。Rimixしたいなって思ってTERUにOKもらって、誰か呼びたいなと思った時にHRKTサイファーの空気を知ってる人と歌いたいなあと思って、ほんで自分がHRKTサイファー行ってた時にKyonsもよう来てたからKyonsと一曲やりたいなって思って。
改めて一緒にやってKyonsってラッパーをより好きになったというか、ライムの踏み方もそうやし話の展開のさせ方もそうやし、面白いラップすんなって。
──「痛みの先へ」客演の赤目さんを選んだ理由は?
赤目自体は同い年やねんけど、長いこと交流があって曲作ろうって話はずっとしてて、それがやっと実現してん。
──「Talk to Her」客演のテークエムさんを選んだ理由は?
SOLOISTにテークエムを呼んだから、そこが大きい。『PULP』の時もテークとやってて、今回はテークのソロっぽくないテークみたいなのをやりたくて。自分中ではBLさんとやってるような音像ではないビートをストックの中から選んでテークに渡した。
黒衣とDraw4とやったものも、テークエムとやったのもSOLOISTというものもが中心にあるのは事実やね。
──「ダンスは続いていく Remix」客演のpekoさんと作ってみてどうでしたか?
収まるところに収まったなあ、って(笑)実は一回立ち上がって消えてん、もっと早い段階で、それこそ記憶はうろ覚えやねんけど、何曲か入りのちっちゃいの作ろやって二人で話してて、その中に8耐のこと歌う曲も入れようって話しててんけど、梅田のプロジェクトもそうやし黒衣も自分のソロも重なって、たち消えて。でも自分の中で回収しときたかったというか、だから、作った!(笑) コロナになったせいで、すぐにはっていうのが無理やろうし、そういう意味では一区切りしといて良かった、みたいなんは思うな。
未来への希望と冒険心、未来への不安と寂しさ
──4tnアルバム『GA-EN』作り終わってみて手応えや実感は?
「まだいけんな」みたいなのはある、『PULP』から『NORITO』までは自分の目から見えた事とか自分に起こった出来事とかを歌ってきた。でも今回は人とやることも含めて、客観的な視点であったりとか、相手の心情であったりとかリスナーが話してくれたであったりとか、そういう広がりみたいなんが自分の中にあって、今回はそれが書けたこと・書けることが今回の発見。
あとは、毎回そうやねんけど、ラップが良くなる事の喜びとか書けなかったものが書けるようになる喜びがある。ビートもそうやし、それはやっぱ嬉しいというか希望に満ちてるというか。終わってパッケージして、改めて聴き直して、ここまできたっていう達成感とまだ登れる事、ここから目指すべき所があるのがわかって、希望や冒険心が湧いて来る。
もちろん多少の不安というか…「norito」書いた時に自分の中では「もうここ以上書けへんのんちゃうかな」みたいなのあって。あんまそんなこと人には言わんねんけど、不安というか、とくに歌詞書くってその時の自分のモチベーションってあるし、ライムの良し悪しもあるし、ビートにハマった時のリズムや手触り感があって、これ以上いけんのかなって、たまに思う。めっちゃ良いもん作った後に嬉しい反面、寂しいというか、恐怖というか。これよりさらにやらなあかんねやって。やる方向が決して足し算であったら良いわけでもないのが難しいところで、作れば作るほど引き算の美学というか。より単純な構造や言葉やけど、より深さのあるものみたいなものを目指してる。
すごいしんどかった。だからといって伏せたくなかった。
──1番最後に作ったのはどの曲ですか?
すくわれろ、かな。書きたいとはずっと思っててんけど、自分の中で納得するビートができんくて。特にやっぱり、1バース目。手紙もらって、すごい難しかったというか自分の中の消化の仕方もそうやし、それに対して俺ができることってなんなんやろって思いが自分の中にあって。手離しにポジティブな事も言えへんというか、すごい悩みながら作った。下手なこと出来ん、嘘ついたらあれやし、でも自分の思いを言うたら現実を願ってない自分もおるというか。現実っていうのは当たり前に進んだらこうなるんやろな、みたいなのがリアルだとしたら、どちらかというとフェイクなことを願ってる自分もいて、自分は決して奇跡を起こせるような宗教家でも名医でもないから、音楽の無力さ、みたいなんを踏まえないといけなかったから、すごいしんどかった。だからといって伏せたくなかった。
音楽は手段にはならんかも知らんけど、目的にはなるなって。もし大病のリスナーがいた時に、俺の曲を聞いて病が治ることはなくても、俺の曲や未来を見たいから、ライブに行きたいから治そうって、そういう目的になれるのが音楽の力なんやろなって。逆にそれってお医者さんが出来へん事というか、その部分を切ることはできても切りたいと思わせることはできへん。切った後にこういう未来があるから切りたい、その未来の部分を担えるのが音楽やと思って。
──「すくわれろ」を書き出す前から”未来や、生きる目的を担えるのが音楽”である、という結論は出ていたんですか?
「Bad day」「norito」「すくわれろ」もそうやけど、そういう曲を書く時って自分の中に言語化できてない部分があって、書きながら言葉にしていく。俺の中で言葉って彫刻刀とかに近くて、木の幹があってそん中に自分には見えてる何かはあんねんけど、それが何なんかが、自分もちゃんと伝えれへんみたいな。それを書いていくことによって浮き上がってくるというか。
──1番安産だった曲は?
「RUNandGUN」かな。この手の曲って、なんも考えんでいいというか(笑)
いい意味で頭空っぽモードでペン走らせられるからいくらでも書ける。
セルフボーストの曲はいくらでも書けるなあ。難しさももちろんあって、軽くはならんように気をつけて書いた部分もある。歳とったって言ったらあれやけど、ここでも引きの美学があって、それを体現できた曲。踏まなあかんけど、踏んだらいいってわけじゃない、大口叩かなあかんけど、大口叩いたらいいわけやない。「すくわれろ」とか「Liful is…」だけ書いてると、ポエティックなことに逃げてると思われるというか、それはそれで尺、っていう感じかな。一発、ガスンと。
──1番お気に入りの曲はどれですか?
どれも、やねんけど(笑)
「すくわれろ」と「Liful is…」 と「俺らまた笑ってる」は特に好きかな。
──「Liful is…」が好きな理由は?
「Liful is…」はビートと話し合いながらペンに任せて書いてんけど。ワンフレーズワンフレーズ好きなものが多くて、それこそアルバムのジャケットにも書いてんけど「俺もお前もいつか死ぬよ なら 全ての夜 棺に入れよう」とか
最近いろんな事があって”生きてると死んでしまう”に対して鈍感になってたんかもなって生活しながら思って。もっと大切に生きなあかんなって、そういう気持ちで聞いた時に自分の心情が乗ってる曲で。少なくとも自分は健康に自由に生きれてて、それが生まれてからずっと続いてて、明日も続くと思ってしまってて、そりゃそう思わな生きていかれへんやろうと思う部分もあんねんけど、そういう意味ではもっと刹那的に、一瞬一瞬を大事に生きなあかんなって。それをすごく体現してる曲やなと思うから好きやね。
──「俺らまた笑ってる」が好きな理由は?
それこそ「norito」に近い感覚で書けたというか、noritoよりももう一段簡単な言葉というか、ポピュラーでベーシックな言葉で書けたかなあ。こねくりまわさんで書けたことが嬉しくおもう。こねくりまわした曲のかっこよさっていうのは当然あると思うねんけど、それを踏まえた上で、引き算しまくってすごい良い曲ができたから。ライムの精度もそうやし、言葉とライムのバランスもすごい良いなと思うし、結構好きやね。
──アルバムのラストを飾る「Early bird ticket」について教えてください。
実はnorito作ってる時には1バース目は出来ててん。もともとスタンプカード作ってて、全部溜まったら一曲あげますって言っててんけど15個溜まった人もDMくれへんから「もうええわ!(笑)」と思って、2バース目書いて、梅田クアトロでのことも渋谷WWWでのことも書きたいなと思って書いたって感じかな。
東京・大阪で開催予定だったソロワンマンすくわれろも配信になったし、リスナーと会えへん時間が長いねんけど、この前タナウナで少ないけどお客さん入れてやるってなって、改めてお客さんがいることの重要さを感じたなあ。配信も同じ規模感のラッパーに比べたら早めに舵を切れたと思ってるし、自分の中で感じることも学ぶこともあってんけど、どんだけ配信を突き止めても”これ”には勝てへんなって思った。これで歌ったことが今すぐには叶わんくても、切っても切れへんというか、ずっと望み続けるし、提供し続けなあかん、今はこうやからこうなってるけど、未来的にはコミニケーションの未来の場所はここに戻したいなって思ってる。
KZのペン 休み知らず
──次のビジョンは、もうありますか?
もっと面白いもん作りたいなあ。一昨日くらい神門さんが配信ライブしてて、神門さんの目を通して世界を見ると世界が愛しくなるというか、奇跡が満ち満ちてることに気づかされる。それって俺的には落語とかに近いねん、立川談志がいう業の肯定に似てて。自分もアプローチの仕方は違えど、そういうものが歌いたいというのがある。
『CASK』『NORITO』『GA-EN』ときて、自分の中で言葉を削ぎ落として作った3作やったから、次はちょっと太った言葉使いたいなっていうのはボヤっとあるというか、贅肉つけてみたい。マイナスして選択肢を少なくしていくとどうしても着地が似てしまうところがあるから。
あとは「痛みの先へ」とかで書いたような、ストーリーテリング。ある場面を切り取って、その場面が大きく普遍的な意味を持つストーリーを書いていきたい。
──相変わらず歩みを止める事なく、作り続けているんですね。
それが自分にとって普通というか。偉そうに言ってる感じではなくて、それでやっと一人前というか合格点に手が届くというか。例えば自分とか多くのラッパーが働いてて、嫌いな仕事は毎朝起きて遅刻せずにちゃんと行って嫌いなことはちゃんとできる。それなのに好きなことは何でちゃんと出来ひんのやろって。自分にも感じることがあるし、できる時もあればできない時もあるけど、できるようにせなあかんなって。インタビュー読んでくれた人、一緒に頑張ろうな!
──このインタビューを読んでくれた方にメッセージはありますか?
聞いて欲しい。ってこのインタビュー読んでる人は聞いてる人やもんな(笑)
ほんまはライブ来てって言いたいけどそれも言えへんから。オンラインでもオフラインでもいいから一緒に遊べる機会を作るからタイミングが会うときは一緒に遊んで欲しいし、遊ぼうって思うな。
──ではオマケに。最近のモテエピソードは?
100キロ歩いた時に、差し入れ持って来てくれた比率がギリギリ女性が多かった。6:4くらいで…女性が多かった気がする!(笑)次は7:3目指します!
──ちょっとずつ刻むんですね!
うん、欲ばらんで!
KZ 1st album「PULP」
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CD:ソールドアウト
KZ 2nd album「CASK」
配信:https://linkco.re/daqQzRGUCD:https://ucdfbr.thebase.in/items/1521901
KZ 3rd album「NORITO」
配信:https://linkco.re/BBetcptP
CD:https://ucdfbr.thebase.in/items/22659342
KZ 3rd album「GA-EN」
CD:https://ucdfbr.thebase.in/items/32033598
【KZ ワンマンツアー「すくわれろ」】
9/5 東京:https://t.livepocket.jp/e/kzoneman
9/19 大阪:https://t.livepocket.jp/e/kzonemanosk
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