見出し画像

スレイトオブなんか(品川区大井町駅)

「ふぅ」ため息をつき少年は大井町駅ホームで電車の到着を待つ。ラッシュアワーの京浜東北線が到着すると扉を押し開けて高密度のサラリーマンの群衆が吐き出された。我先にと東急大井町駅へ接続するエスカレータへ殺到するサラリーマンたちは少年を突き飛ばしてしまう。身長約150cm、体重45kg。同年代に比べるとやや小柄な少年はふらふらとへたり込む。「俺なんて俺なんて……」少年がつぶやきながら立ち上がろうと片膝を立てる。この時、少年はすでに身長300cm、体重200kgまで巨大化している。サラリーマンたちはエスカレータ前に片膝立ちで陣取る少年を見上げる形になりどよめいた。

社会人たちの視線が少年を貫く。(忙しいのに)(邪魔をするな)不安によって巨大化する超突然変異種(スーパーミュータント)の少年が視線を受けてさらに巨大化を果たそうとしたとき、力強い腕が少年の両肩を抑え込んだ。

「超突然変異種か、最近の若い子は、ムンッ、発育がいいな!」
「……」
「安心しろ。お前は何も悪くない。俺が見てるぞ」

筋肉による安心感。少年はみるみる身長を縮小させていく。

「あなたは?」
「通りすがりの副駅長さ。俺も若いころに似たクチで苦労してね」

ルチャマスクをかぶった副駅長は歯を見せて笑い、少年も釣られてぎこちなく笑った。

*スレイトオブなんかは不定期に掲載されます。

#ジャイアントマン君 #マスクド副駅長 #大井町 #短編小説

いつもたくさんのチヤホヤをありがとうございます。頂いたサポートは取材に使用したり他の記事のサポートに使用させてもらっています。