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生成AIを利用した短編小説作成のメイキング

どうもお世話になっております。
今年は逆噴射小説大賞に2作品を投じることができました。
これらの作品の作成には生成AIの力を多大に借りたので、今後の集合知のためにメイキングを共有します。

難題を華麗に処理する生成AIのイメージ

生成AIの使い方


【結論】

  • 文章生成AIは聞き上手。文章を渡して「この文章はどういう意味だと思う?」と耳打ちしよう。

  • 文章生成AIは星と星の間をつなぐのが得意。無茶な設定でも強気に押し込むと整合性を合わせてくれる。

  • 【結論】AIの話を聞くな。AIに話を聞かせろ。

【利用環境】Microsoft Copilot(無料版)を利用

利用端末:Windows PC & Android スマートフォン
文章生成:Microsoft Copilot(無料版)
画像生成:Microsoft Copilot(無料版)
生成データ共有の方法:Copilotへのログイン 及び Noteへの転記

【下準備】物語の骨子を記述する

生成AIは、発送の飛躍や転換を行うことができないので「物語(パルプ)」を作らせることはできません。必ず、物語の骨子となる「作者のイメージ」が必要です。

今回は以下のような構成要素を用意しました。

  1. 五輪真弓のベストアルバムを聞きまくる

    • 「少女」「冬ざれた町」「煙草のけむり」あたりをイメージソースにする

    • 謎めいた発想の転換と飛躍を行う

    • 熟成させる

  2. 壁に囲まれた凍結地域が舞台

  3. 少年が壁を抜け出そうとする

  4. 守衛が壁の前に立ちふさがりバトル

  5. 少年は死体を埋めるために壁の外へ出たい

  6. なぜ死体を埋めるのか

  7. それは惑星の気温が緩んでいるからだ

  8. なぜ惑星の気温が緩むのか。なぜ惑星は凍結しているのか。

  9. 「少女」の歌詞の通りですよ。(モラトリアムは過ぎ、少女は取り残される)

  10. そこに理屈をつけようぜ

  11. 長周期の氷河期とでもしておきましょう

  12. 全球凍結に適応した新人類と旧人類がいる

  13. 「凍血人」と「恒血人」と名付ける

  14. 用語を練る(凍葬、防壁、文化伝承学園)

  15. ここまでの話をいったん全部捨てる(ゆでこぼす)

  16. Hey Copilot「少年は壁の向こうに去り、少女が壁の近くでぼんやりとしている」という状況で少女は何を考えているのだろう、教えて。

では、いっしょに物語を作っていきましょう

【文章】大まかなシーンを作る

物語の骨子が出来上がったら、新しいチャットを作成してストーリー展開を投げ込んでいきます。生成AIにストーリーを生成させる際のコツは「この後のどう展開しますか?」のような受け身の提案ではなく、「この後は○○が登場します。そして○○が近づいてきます。ヤッタ、大ピンチだぜ!」のように望む展開を強気で押し付けていくのがポイントです。勝手に続きを書き始めます。

こうして以下のようなシーンが出来上がりました。これらのアイデアスケッチで肉付けをして、次の工程で使用できるように切り分けていきます。

A「少女が少年を追って壁の向こうに行こうとしている」
B「少女が守衛に見とがめられる」
C「守衛から逃げる少女」
D「守衛が爆発四散させられる」
E「活性化した恒血人の大量復活」
F「逃走する少女が復活した恒血人に追いつめられる」
G「恒血人に追いつめられた少女を○○が救う」

【文章】物語の引き伸ばし指示

文章生成AIに創作をさせた場合の欠点は、話を急ぎすぎるところです。すぐに物語を展開をさせて次の場面に向かってしまいます。そこで重要なのは「引き伸ばし」の指示です。AIの提案した文章を一次資料として、AIに文章の引き伸ばしを依頼します。この手法の利点は、書き手が書き忘れがちな部分を機械的に補うことができる点です。(アニメーション技法の「中割り」に相当します)

以下の引用は、Copilotを利用した引き伸ばし要求の一例です。作品世界の粒度(文章の詳細さ)に合わせたものを選択するとよいでしょう。

一次:雪の舞う中、少年が駅のホームに立っていた。彼の心には遠くの血で新しい生活を始める決意が固まっていた。
二次:駅のホームは静かで、雪がしんしんと降り積もっていた。少年は駅のホームに立ち、冷たい風に身をさらしながら身じろぎもせず希望に満ちたまなざしで列車の到着を待っていた。
三次:駅のホームは静寂に包まれていた。雪が深々と降り積もり足元には白い絨毯が広がっている。街頭の淡い光が雪に反射して、まるで無数の星が地上に降り注いだかのような幻想的な光景を作り出していた。(以下略)

繰り返すほど引き伸ばしのギアが強まっていく

シーンごとの肉付けと盛り付けが終わりました。
次の工程でつじつまを合わせに行きます。

【文章】あらすじと設定の整理

これまで書き散らしてきた内容を生成AIに整理させます。物語の舞台、登場人物、環境、簡単なあらすじ、の作成を依頼します。科学考証もAIの得意分野です。

「惑星間飛行をしている物体が、太陽系のハビタブルゾーンを通過するのに必要な日数は」→「42」

本編を読み込ませてあらすじと設定を整理させます。

AIはかしこい

これまで作成した文章から勝手に設定が読み込まれて整理されるので、思いのほからくちんです。AIが拾いこぼした設定は説明が足りぬのです。文章生成AIを活用するのであれば、設定から文章が生まれるのではなく、文章から設定が生まれると考えてください。

【文章】表による設定の可視化

これまでの設定を表にしてみましょう。文章生成AIの力の見せ所です。

支配種族について

極端な階層社会である

「熵素(エンそ)」について

禁断の熵素刀 二度打ち

めちゃくちゃ便利。

【文章】キャラクターネーミング

『凍ざされた街』は、本来はキャラクター名の設定が不要な物語です。古代地球人もそのように考えたのでしょう。しかし、固有名詞の存在は物語に奥行きを与えます。古代人が管理しやすいように命名規則を設定します。低温人類は、世界各地の「雪や寒さ」をイメージする言葉から命名されました。
という指示を生成AIに投げ込みます。この時も表にして、名前、読み、由来を要求するとサクサク進みます。

ユキト(雪兎)、シモヨ(霜夜)、グレイ、シア、ヒマラ、ペンギ等。
名称傾向をコロニー別に変えると、地域の特定もしやすいですね。

名前から逆算してユキトの性格が決まりました。自身の生命のためなら脱兎のごとく逃げる男です。

【文章】短期目標と長期目標のプロット化

そろそろ仕上げが近づいてきました。
物語の「短期目標」と「長期目標」と「課題」を提案してプロットを完成させていきます。重要なのは目標(マイルストーン)を複数用意すること。この時点での勝利条件を定めることで、800文字に全部詰め込んでしまうという悪癖からはおさらばできるはずです。

【文章】校正校正また校正!

生成AIの協力によって文章を書きあげます。
そして、校正です。「800文字」程度なら、チャット内に収まるのでどんどんAIに読み込ませて校正していきます。この誤字脱字からの卒業。盗んだバイクは生成AIだった。

【文章】違和感やユーモア・エモーショナルなポイントの指摘

仕上げです。あなた自身の文章的特性を理解しましょう。

生成AIに「違和感」「ユーモア」「エモーショナル」のポイントを聞いていきます。キャラクターに不似合いなセリフはありませんか。それは意図的なものですか? ユーモアは? エモーショナルな表現はできていますか?

校正を経て指摘を受けたポイントが、生成AIに生み出すことができないあなたの強みだと思います。

例)指摘を受けて衛士のセリフの違和感を強化。「粗野な守衛」→「丁寧な看守」→「凍血人らしくない粘着質な衛士」に変化だ。持ち味を生かせ!

【画像】作品のイメージ映像の出力

プロットを整理させた後に「では、この内容を画像として出力してください」と提案をすると、その内容で画像を生成してくれます。この時にボヤっとするようであれば、主題や焦点の整理が必要かもしれません。これを繰り返すことで疑似的な「ログライン(作品の主題を1行にまとめたもの)」の「壁打ち」(生成物を限定公開をしてフィードバックを得ること)もできる。

大きく伝えすぎて壮大になりすぎた例

描写範囲を絞ることでSF風味が抜けて本質が絞り出されてしまった例

これを繰り返すことで、無意識に扱っていたテーマが浮き彫りになることもある。意識して書き直そう。すべてはフィードバックなのなのだ。

なお、この手段で生成した画像はタイトルヘッダーとしては使い物にならないので捨ててください。

【完成品】『凍ざされた街』

応募作品が完成しました。
物語は、プロット前半 「ユキトを追ったシモヨが衛士に捕獲される」場面を描き、プロット後半の「恒血人の目覚め」で幕を下ろします。静かな展開が転調する爆発的な生命歓喜(参照イメージは「World War Zの人海」や「三体の再水化の宴」です)が伝わるといいなあ。

未来へ

ありがたいことに本作は読者からも好反応を得ることができました。いつもありがとうございます。せっかくなので世界観構築の裏側を少しお披露目しました。


ああ楽しかった。

以上です。

#逆噴射小説大賞 #文章生成AI #AI小説


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お望月さん
いつもたくさんのチヤホヤをありがとうございます。頂いたサポートは取材に使用したり他の記事のサポートに使用させてもらっています。