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【餅】逆噴射プラクティス&自作創作物のまとめ

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自作の創作佛のまとめです。 逆噴射プラクティス参加作品とZINE的なヤツや一次創作、二次創作、Webサービス及び名状しがたい何かを収蔵します。
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2019年10月の記事一覧

『牧竜』

 湾曲した杖を突きつけ羊たちの鼻先から進行方向へ差し向ける。先頭のリーダーを誘導すれば羊たちは驚くほどの一体感で曲がりくねる山道を下っていく。ラマの背に揺られながら牧場へ帰りつくと祖父が山鹿のシチューを用意して待ち構えていた。硬いパンと山鹿のシチューはあまり好きではなかったが遠い日の思い出が香辛料となり祖父が骨までしゃぶりながらワインを愉しむ姿を思い出すと笑みがこぼれてしまう。  羊や妖精と戯れた森から離れ都会へ出て何年が経っただろうか。静まり返った深夜のダイナーでまどろみ

逆噴射小説大賞2019 投稿作品+プラクティス

よく来たな。お望月さんだよ。 とりあいず、当初に想定していた実弾を撃ち終わったので作品紹介を兼ねながら構成要素(参考資料的な)等を開示していこうと思う。 なお「逆噴射小説大賞2019」へ投稿する作品で心掛けたものは「極端なインフレの防止」「等身大」「自分以外にも転がしてもらえるアイデア」です。 何段階か先までの展開を予想しやすくして描写はしない、という手法です。 『求む!最強のたまごかけごはんの作り方』構成要素:SFショートショート『最後の晩餐』、刃牙シリーズ、試し割り

『有権者八百万九十九の独裁』

《ツクモ、起きなさい。賛成六億票の過半数で結審しました。あなたは可及的速やかに起床する必要があります》 「いっけねー!遅刻遅刻!」  激しいキックに叩き起こされた長身の少年が鳩サブレを頭からかじりながら長い坂を駆け下りていく。 「ぐわわっ!!」  点滅し始めた横断歩道に差し掛かった直後に急停止!眼前を猛スピードのトラックが駆け抜けていった。 《ツクモ、信号停止違反及び危険性走行物の接近により緊急決議、過半数の承認を得て走行を緊急停止しました》 「急がせるのか止める

『アメ横・ハイドロ・ゾンビパウダー』

 「乾しスルメを新鮮な生イカ状態まで戻す方法を知ってるか?ポイントは重曹だ。重曹と共に水で一晩じっくりと戻す。これだけでまるで生きているような弾力を取り戻す。そいつを刻んで炒めても良し、刺身にしても良し、俺はネギ塩で炒めるのが大好物だ、オラッ!!」  僕に業務説明をしながらモスグリーンのエプロンにキャップ姿のチーフが出刃包丁で巨大スルメ触手を弾き逸らす。水面から上だけで3mに達する巨大スルメ触手群は悲鳴を上げて一時退散、周囲に散って包囲体制に戻る。  「知っての通り例の超

『サメがいないゴルフ場!!鮫無カントリー倶楽部』

 「ファーーッ!!」 9番ホール 550Y PAR5。アゲインスト気味の風が打球を隣接するA1番ホールまで運んで行った。  「OBにしておきますか?」武装キャディ 松島たか子(44)はそう提案したと証言する。  「Aコースは出るんですよ」  「サメか?」  「サメは出ませんけど……未知の人類とかは出ます」  オナーである犬養滅次郎(50)は1番ウッドを松島に渡すと命じた。  「8番アイアン、いや、18番ブレードを寄越せ」  無数の血を吸ってきたであろう凄味を放つ分厚

【餅選】#逆噴射ピックアップ DAY1-2

<その1><その2><その3><その4><その5> よく来たな。お望月さんだよ。 #逆噴射ピックアップ の時間だよ。 この記事はお望月さんがスキをつけたものの中からお前らも読め!と投げつけるやつです(あまり感想的ではない) 逆噴射小説大賞2019 は、1人5作品という制限があり昨年よりペースは落ちることが予想されるものの、数百作品の力の入った文章を読むと人間はカロウシしてしまうので小出しにピックアップしていきたいと思う。 なお、なるべく全てに目を通していますがバイオリ

『求む!最強のたまごかけごはんの作り方』

 どう、と対戦車ライフルが火を噴いた。裾野の大気を震わせた重金属弾頭は標的へ過たず命中したが……多くの観客の期待通りに弾き返され宙を舞った。標的は微動だにせず傷跡ひとつない柔肌で気持ちよさそうに陽光と観客の視線を浴びている。その標的とは「生卵」。ごく普通の鶏卵である。 (……私はTKGを食べたかっただけなのに……)  はじめはテーブルの角だった。「こんっ」女子高生が自然な力で叩き付けたその卵はテーブルの角(パーム材/IKEA)を弾き返し一切の無傷。「ごんっ」強い力を加え

闇太陽と摺り足のプリンス

 びゅうびゅうと吹きすさぶ風に耐え兼ねて千切れた藁の塊が転がりながら街道を横断していく。砂塵の先に列をなす荷役の摺り足が見え始めた。彼らは一様に裸で腰に一本の布を廻しただけの軽装である。ズリッズリッと彼ら荷役特有の足音が聞こえてくる。「ちゃんこ」の到着だ。  クーデター以降、前政権に見捨てられた寒村ハカタにもこうして食糧が届けられるようになった。村長は、ほっと安堵して間近に迫った護送荷役力士群(コンボイ)へ手を振り、荷下ろし地点を合図する。  安堵したのは力士達も同じだっ