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越境を支えるエージェントの条件 - ubies Newsletter 庄野裕晃のコラム

クリエイターのエージェントを始めて20余年になる。依然として、日本でこの仕事は馴染みがなく、業界内ではレップ(Representative = 代理人の略)と呼ばれたり、マネージャーと誤解されることもある。無理もないのだが、自分がそう認識されるのは、実はかなり抵抗がある。

交渉や調整などを代行するのは、たしかに重要な役割のひとつだ。でもそれだけだと、クリエイターのエージェントとしての存在意義は薄い。

クリエイターにも企業にも、特有のカルチャー、思考や背景といった無数のコンテクストがある。そうすると、例えば仕事の打ち合わせや会話で同じ言葉を使ったとしても、双方の捉え方や意味合いに大きな差異が生じるケースは珍しくなく、コミュニケーション不全など問題を生む。

しかし、差異があるからこそ、絶妙につなぎ合わせることができた時、新しい価値の創造に繋がる。この “コンテクストの読解と編集” をする力を活かして、今度はアジアを越境し、クリエイターとビジネスをつなぎたくて始めたのがubiesだ。

始めた当初、アジア各地を訪ね歩いて多くのクリエイターと知り合った。ただ、それ以上に関係性を深めたり、企業とつないでプロジェクトを生み出すことがなかなか出来なかった。日本で20年もエージェントをやってきたのに、最も得意なはずのことが全く通用しなかったのだ。自分の能力では難しいのかと、日本の外での自らの価値を見出せずにいた。

そんな時、某女性誌が読み応えのある韓国特集をしていた。何かのヒントになればと、コーディネーターとしてクレジットされていたソウルの会社に連絡してみた。そこで出会ったのが、ソンさんことShinhae Songさんだ。日本の大学を卒業した後、韓国のアートギャラリー勤務を経て、コーディネーターの仕事に就いた経歴の持ち主である。

ソンさんを頼りにソウルを訪ね、ubiesの構想を話した。そこで「庄野さんに共感してくれそうな良い人がいる」と、紹介されたのが、ウチことWooChi Jeonだ。ソンさんの人選は的中し、ウチとは多くのプロジェクトを共にするだけでなく、私の50歳の誕生日のお祝いにソウルへ招待してくれるなど友人以上の存在となり、いまでは ubies Consortium で韓国の代表を務める大事なパートナーとなった。

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いま韓国でのほとんどのプロジェクトは、ubies KOREAのエージェントとなったソンさんを通じて行っているが、単にうまくいくだけでなく、ウチのように現地の方と友達以上の関係になれたり、次の何かに自然に発展することが実に多い。ソンさんと出会うまでゼロだった韓国でのプロジェクトが、COMMON GROUND / ROMAN CITY POPUGS SEOUL POPUP STORESTEREOVINYLS® など、次々と形になった。

そうした成果は、ソンさんが韓国と日本の双方のカルチャー、思考や感性を熟知し、もちろん私自身のことも理解してくれたうえで、どのようにつなぎ合わせれば良いかを心得ていたことに起因する。先述の “コンテクストの読解と編集” を見事に遂行している点で、ソンさんは極めて優秀なエージェントだ。

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これまでアジアの様々な都市を頻繁に訪ねてきたが、仕事をするときは現地のパートナーに委ねてきただけに、実は私自身は各都市の事情にそんなに詳しくない。それにはもどかしさもあるが、やはり自分でやるよりも現地の信頼できるパートナーを頼ることが最善なのだ。

韓国の例のように、アライアンスを結ぶパートナーがいるタイ、インドネシア、中国にもすばらしいエージェントたちがいて、日々新しい価値を生み出してくれている。ubiesはクリエイターのエージェントの役割を担っているが、エージェントのエージェントでもあるのだろう。

彼らの活躍によって、プロジェクトを共にしたクリエイターやクライアントの方々から「初めて訪ねる国なのに、こんなにパフォーマンスが発揮できるなんて!」と喜んでもらえた時は、ubiesを始めて良かったと、報われたような気持ちになる。

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※真ん中がソンさん


📩 このコンテンツは、8月10日配信の ubies Newsletter vol.2 に掲載されたものです。

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