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スタートアップで、カルチャーが全く違う2つの組織を作った話

これは何?

50名規模の医療AIスタートアップUbie において、カルチャーや採用基準が全く異なる2つのチームを立ち上げ、数ヶ月運用してきました。
スタートアップでは比較的珍しい取り組みで、採用応募者等からもよくご質問いただくので、背景やチームごとの違いをまとめてみました。

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はじめに

現在Ubieには、0→1フェーズの「開発」をミッションとしたUbie Discoveryチーム(40名規模)と、1→100フェーズの「拡張」をミッションとしたUbie Customer Scienceチーム(10名規模)という2つの組織があります。

Ubie Discovery / Ubie Customer Scienceの2チームは、ビジョン・ミッションこそ共通ですが、機能や組織運営方針等が大きく異なります

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一般的なスタートアップの組織では、バリューや人事制度、基本的な人材要件など全社共通、「全社で一体感を持ってやっていこう」というケースが多いと思いますが、Ubieでは2チーム各々で最適な制度設計をしています。マネジメント体制・カルチャー・採用基準・報酬制度など全てが異なりますし、オフィスのフロアやSlackのWorkspaceもあえて別にしています。分割のレベルとしては、チームというより別会社のイメージに近いかもしれません。(※実際には別会社ではなくあくまで「別チーム」です)

01: 背景・目的

何故このような組織運営をしているかというと、目的は「主要な機能に最適化した採用活動やカルチャー形成を行うことにより、事業成長を加速させるためです。

これまでUbieは(当たり前のことではありますが)ビジョン・ミッションから事業、組織運営方針まで一貫性をもって考えてきました。
例) ビジョン・ミッションから考えると非連続な成長が必要なのでXXのような開発組織にする、など

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創業期から現在までのUbieにおける「主要な機能」はゼロイチで市場を切り拓く開発機能であったわけですが、ある程度プロダクト・マーケット・フィットが見えてきたことにより「主要な機能」が一つ増えました。ゼロイチで立ち上げたものを「丁寧に且つ最速で拡張する機能」です。

主要な機能が2つになったことをうけ、事業成功の鍵を握る2つの機能を最速で強化するため以下のように機能に最適化した組織を作りました。

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このように組織を分割するという選択は、企業規模が大きくなってくると比較的一般的です。ただ、現在のUbieのような規模・フェーズのスタートアップとしてはチャレンジングで、リスクをとった選択と言えると思います。

このタイミングでリスクをとった背景は、「採用」と「カルチャー形成」のためです。以下にそれぞれ説明していきます。

01-1: 採用活動

多くのスタートアップがそうであるように、Ubieでも創業以来並々ならぬ熱量をもって採用活動に挑んできました。なかでも「Ubie7つの要件」という人材要件は、UbieをUbieたらしめる要素の一つでもあり、カルチャー形成の肝でもあったので、要件とのマッチングにはこだわりがありました。
「7つの要件」は専門スキル要件ではなくスタンス要件に近いのですが、例えば「ゼロベース思考」「率直なコミュニケーション」「正面突破力」など、基本的にはゼロイチのプロダクト開発・事業開発機能に最適化された内容です。「開発チームとしてのUbieにとって最強・最高な人材を採用するならこういう人材がいい!」という内容だったのです。

昨年より「拡張」を視野に入れて採用活動を開始したわけですが、医療機関向けのプロダクトであるUbieを拡張していくためには、顧客接点を持つメンバーは「顧客である医療機関の声に耳を傾け、中長期経営に寄り添うパートナー」である必要があります。しかし、医療機関のパートナーを任せたいと思える人材は市場には多くなく、更に、採用活動を進める中で「7つの要件」との積集合が絶望的に小さいということが分かりました。

当初は「採用基準は絶対に妥協しない」という考えのもと、極めて小さい積集合の探索に時間を使いました。
しかし事業成長スピード緩めないための施策もあるのではないかと模索を始め、最終的には、全社共通の採用基準に拘泥するよりも「違うタイプの最高な人材」を定義し、採用していこう、と意思決定するに至りました。

「医療機関の最高のパートナー」としての人材要件を立ち上げ採用活動を促進した結果、採用は急速に進む結果となりました。

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01-2: カルチャー形成

さて、人材要件を分けるとなると、気になることは「カルチャー形成」です。そもそも組織の機能が異なれば、その仕事や人材に最適なカルチャーも異なります。「医療機関のパートナー」であるチームが最も成果を出しやすく、働きやすい個別のカルチャーがあるはずです。

文化が企業の成長においていかに重要かということは今更説明するまでもないかと思いますが、Ubieもこれまで非常に注意深くカルチャー形成してきました。だからこそ、別々のカルチャーを同じ組織内で形成することは中長期観点ではハイリスクと考え、組織を分化するべき。という意思決定に至りました。

現在は、2つの組織が別のカルチャーを形成することで、それぞれのチームが最高に気持ちよく、最も高い成果を出せる状態を目指しています。

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02: 役割・機能の違い

上記のような背景で組織を分けることにしたわけですが、具体的な「役割・機能の違い」と「組織運営方針の違い」についても記載していきます。まずは機能について。

Ubie Discoveryの役割は、0→1フェーズのDevelopment(広義の開発)です。具体的にはプロダクト開発・事業開発・組織開発などを行っています。ビジョン・ミッションに基づきプロダクトや事業を企画検討、PoC(Proof of Concept)までを実施するのが役割です。
例えば新規機能の開発時には、まずは医療機関の方々やUbie Customer Scienceチームメンバーにヒアリングを行いながら、スモールスタートで顧客や市場の反応を見て開発を進めていきます。

Ubie Discoveryチームに所属するメンバーの職種例
エンジニア・デザイナー・プロダクトオーナー・事業開発・組織開発 等

Ubie Customer Scienceの役割は、1→100フェーズのScale(拡張)です。PoCの結果、需要の蓋然性がある程度高まった事業や機能を最速で市場に届け、ビジョン・ミッションと現実との距離を縮めていきます。2020年4月時点では具体的にはマーケティングやセールス、顧客フォローなどを行っています。医療機関の中長期経営に寄り添うパートナーとして、医療機関との接点の大部分をUbie Customer Scienceチームが担っています。
今後も、ある程度蓋然性が高まった機能はUbie Customer Scienceチームに移管し続けていくことを想定しているので、Ubie Customer Scienceチームの役割は増していきます。

Ubie Customer Scienceチームに所属するメンバーの職種例
フィールドセールス・インサイドセールス・カスタマーサクセス 等

03: 組織運営方針の違い

組織運営も、機能に最適化する形で方針を決めています。

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Ubie Discoveryの組織運営は「革新的な0→1を生み出す大胆な仮説検証」を実現しやすいよう設計しています。
例えば、革新的といえるものを生み出すためには満遍なく合格点を取ることよりフォーカスが重要であるため、目標管理にはOKRが有効です。また、大胆な仮説検証を行っていくためには、フラット(文鎮型)な組織の中で各人が精度高く意思決定することや、失敗を許容し学習していく組織風土などが必要と考えています。人材要件としてもゼロベースで思考する力や率直さなどを定義し、大胆な仮説検証を実行出来る人材を集めています。
チームの雰囲気としては「遊びがあり合理的」です。

Ubie Customer Scienceの組織運営は「1→100を最速で実現するオペレーションエクセレンス」を実現しやすいよう設計しています。
例えば、競合優位性ともなるオペレーションエクセレンスを追求するためには、組織や業務を隅々まで磨き込む体制づくりが肝要です。組織を階層化し、マネージャーを中心的存在に据えると共に、個々人にはGRIT力(やりきり)・当事者意識・誠実さなどを極めて高いレベルで求めています。
また、事業・機能の蓋然性がある程度高まっていることを前提としているので、正しい速度で実現に向かっているかどうかはKGI・KPIによって検証していくことが可能です。
顧客や仲間への誠実さを大切にしているので、チームには細やかさや温かみがあり、一体感が醸成されています。

04: チーム間コミュニケーション

Ubie Discovery / Ubie Customer Scienceそれぞれチーム「内」のコミュニケーションは密に行っていますが、チーム「同士」でのコミュニケーションは意図的に限定しています。

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重要な指標についての進捗共有や、プロダクト改善など、必要なテーマに関してはUbie DiscoveryとUbie Customer Scienceの間で密に連携しています。
一方で、各チームの機能やカルチャー形成に集中するため、連携「しない」ための努力もしています。

▼連携「しない」ための工夫
- GSuiteのドメインを分け、カレンダーやドキュメントを別々に管理。予定などはハブとなる人やチャンネルを介して必要に応じて確認する
- オフィスのフロアを分ける
- 全社(2チーム合同)での会議はナシ。会議体はそれぞれで設ける
- Slack、NotionなどコミュニケーションツールはWorkspaceを分ける
- 採用情報を個別に取り扱うためATS(候補者管理ツール)を分ける

難しさやリスクもある取り組みではありますが、あくまで2つのチームそれぞれ個別に運営していくことを徹底しています。
(2020年始のチーム創設当初は、同じ会社なのでコミュニケーションを取りたい・連携したいという力学が働き、かなり難航したという経緯があります。長くなってしまうので、詳細の経緯はいずれ別の記事にまとめる予定です!)

05: 現在までの結果と今後の展望

2020年4月現在、Ubie Discoveryは約40名、Ubie Customer Scienceは約10名所属しています。Ubie Discovery/Ubie Customer Scienceを本格稼働し始めてから約4ヶ月ですが、現在までのところ非常に順調に組織が立ち上がり、狙い通りに事業を加速させることが出来ています

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例えば、新型コロナウイルス禍においては、Ubie Discoveryチームは医療機関向けに新型コロナウイルス対策機能を仮説検証し、重要度の高い順に迅速にリリースしていきました。一方Ubie Customer Scienceチームは、危機感が高まる医療機関の不安を払拭しながら、AI問診Ubieの適切な導入を進めています。
この結果を見て、互いに「自分達にはできないことをしているチーム」というリスペクトも強まり、「UAC凄い!この対応はUbie Discoveryメンバーには絶対に無理」「プロダクト開発速すぎ」とそれぞれのチームで驚嘆・賞賛の声があがっています。

今はUbie Customer Scienceチームの方がメンバーは少ないですが、人数比率は今後同程度になっていくことを見込んでいます。また、現在は医療機関との顧客接点を持つ「UAC」というチームのみですが、今後はScaleという機能を持つほかのチームも増やしていくことを想定しています。

おわりに

長くなってしまいましたが、「スタートアップでカルチャーの異なる組織を作る」というチャレンジについて、背景や違いをまとめてみました。
それぞれのチームの雰囲気やメンバーについて詳しく知りたいと思ってくださった方は、チームごとに採用ページがあるのでぜひご覧ください。

▼Ubie Discovery採用ページ

▼Ubie Customer Science採用ページ

採用活動は更に積極的に行っていきます。ご応募もお待ちしています!

【Ubie株式会社について】

「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」をミッションに掲げ、医師とエンジニアが2017年5月に創業したヘルステックスタートアップです。AIをコア技術とし、医療現場の業務効率化を図る「AI問診ユビー」と、症状から適切な医療へと案内する「AI受診相談ユビー(https://ubie.app)」を開発・提供。誰もが自分にあった医療にアクセスできる社会づくりを進めています。