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90歳のアヴァンギャルド

夏のバケーション前のお話。
おばあちゃんのお客様が入ってきて
「あら、お国に帰るんじゃなかったの?」
そういえばこのおばあちゃん、数週間前にテーブル修復の依頼で訪ねて来てくれた人。
日本へしばらく帰るから依頼については休み明けに戻って来たら連絡するね、
と言っていた向かいのマンションのおばあちゃんでした。

「今週末出発だよ」って言ったら
「掃除のおばさんがね、壁の絵の額を落として壊れちゃったのよ。直せる?」って。
修理の内容によっては休み明けだけど、ひとまず今週中に見に行きますってことで
マンションの入り口を教えてもらおうと外へ出たら
たまたま私の自転車を貸してたバイク屋のチャビィが
自転車と、お礼のレモネード持って来たところでした。
自分の分のトーフィーシェイクも抱えて来て
おばあちゃんに
「一口どう?」
彼らもお向かいさんなので古くからのお知り合い。

古参者チャビィ曰く
「この人、ずっと画材屋さんやってたんだよ。彼女も絵を描くアーティスト‼️俺の親父とよくダンスを踊ってたよねぇ。
いつもこんな小綺麗におしゃれして!見て!ピアスの色とバッグの色、お揃いにして、もう洒落てるぅ〜、セニョリータ(笑)幾つになったの?」
「今年で90よ。扇子の色も揃えてるのよ」ゴソゴソとバッグの中からお揃いのグリーンの扇子を出してパタパタ。

可愛い

後からまたチャビィが来て語るには、
彼女はまさにアヴァンギャルドで
若くしてご主人を亡くして未亡人に。
その後もたくさん恋人を作ったり、人と違うファッションで皆を驚かせたり、
当時でいう「ちょっと人騒がせ」な人生だそうです。
今では何ら珍しくもない事ですが、当時のスペインは(多分60年代くらい)フランコ政権時代。
彼女の生き方は周囲から非難の対象でもあったそうで、
チャビィの言葉を借りれば
「時代を間違えて産まれちゃって生きちゃった人」なんだそうです。
でも90歳の今でもしっかりメイクして(特にチークが可愛い)キラキラした目をしてお洒落して。
昨日伺ったご自宅の家具はしっかり流行を抑えたシャビーシック!
アートを愛した人らしく、壁にはたくさんの絵が飾られていました。印象派の風景画が多かったけれど額も素敵なものばかり。

私の夏休みが終わった10月にテーブルのお直しを約束してさよならしました。

チャビィが「どうしたらあなたみたいにいつまでも綺麗でいられるの?」って茶化してたけど
いや、真面目な話、
彼女の生き様かなって思う。
我が道を生きてきた強かさかな。
信念を持っている強さかな。

60歳でもう枯れ果ててしまっている人もいれば
90歳でもオシャレしてお茶目なスマイルな人もいる。

そこんところの秘密、知りたい。
彼女のようになれる秘密、知りたい。


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