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4人の吸盤

今日は工房スタートまでの裏話。

我が工房、物件を決めたのはCOVID19で自宅監禁生活が始まるちょうどひと月前。
ガレージだった物件なので、シャッターしか付いてなくて、まずは店舗の入り口となるファザードとドアをつけなければなりません。
その予算を検討して絞り切って工事スタート!と言うところで監禁になってしまいました。

ファサードは全面ガラス!と言うイメージが物件を決めた時から決まっていたので、
知ってるガラス工さんに片っ端から予算を出してもらいました。
ヨガクラスの友達イサベルが事務をやってる同じ村のガラス工さん
旦那・ガブのお客さんのガラス工さん
鉄工所やってる友達がよく一緒に仕事するアルミ&ガラス工さん・・などなど
全部で4、5件。

ただガラスだけが張ってあるファサードにガラスのドアがほしいだけなんだけど、アルミを扱う業者さんはアルミを入れたがるし
一枚ガラスは巨大吸盤を使ってクレーンで吊ってはめるから予算がかかるとかで、その予算幅は最安値と最高値が倍以上というバラつき。

結局、一番ありがたい予算を出してくれた村のガラス工さんが一番思い通りのデザインをしてくれて(手書きの!笑)
イサベルのフォローでちゃんとこちらのアイデアが伝わっていることも確認できたので、迷うことなく決定✌︎

監禁生活が終わって、私たちがペンキを塗ったり工具棚を作ったりする脇で
ガラス工のおじさん、フェルナンドとピッチのガラスフレーム設置工事も始まりました。

天井がないところにガラスをはめるので、まずは天井の代わりになる鉄の枠を作っていました。
鉄をカットするのに火花は散るし、溶接も隣でやってるので火花が散るたびに
「はい!あっち向いて!!みちゃダメ〜」
安全基準ルールなし。笑

子供たちも一緒にいるので気を使って歩道で鉄カットしてくれている。笑 
公共ルールなし。笑

他の仕事もあるので毎日は来れず、なんだかんだと結局3週間くらいかかってやっとフレーム完成。

その間、すっかり子供たちはフェルナンドとピッチに懐いてしまい、息子は「ピッチィ〜」とタメ口。
メジャーをしょっちゅうあっちこっちに置きっぱなしにするフェルナンドに小走りでメジャーを届ける助手気分。
ピッチのサメの歯ネックレスに興味津々の息子に、化石標本くれたりしてすっかり仲良し。
フェルナンドは自分の家にあって捨てるつもりだった古いタンスをくれました。
冗談だと思ってたら次の日しっかりトラックに積んで持ってきてくれた!笑 嬉しい!ありがたい。


だんだんと下準備ができていく様子は面白いんだけど、果たしてイメージ通りに仕上がるのか多少の不安もありました。
特に一番大きいガラスは約高さ4mx幅2.5m。
他の業者さんは幅は2枚じゃないとダメだとか、
クレーンで吊ってはめるから予算がかかるという事だったけど、
フェルナンドの予算ではオペレーター2人のカウントだけでクレーンの話は出てこない。
ガラスのサイズも特大版一枚になってる。
いったいどんな作業になるのかしら??

・・・・・・・

そして遂にその一番大きいガラスをはめる日。
もう前日からドキドキで挑んだ当日朝8時半。

バカでっかいガラスを積んだいつものトラックで到着したのはフェルナンドとピッチ、に
もう2人、時々手伝いで雇っているお兄ちゃんとひょろっと背の高いもう1人の従業員。通称バッタ。笑 



だけ??



ちなみバッタさん、我が家のお向かいさん。

さすが、村。


みんな腰にコルセット巻いて
ガラスを持ち上げるための吸盤を手に
「1、2、3!せーの!よいしょ、よいしょ、よいしょ!」





めっちゃマニュアルー!!!




まずはトラックから下ろすよっこらしょ。
続いて、バスが通る前に歩道に乗せるよっこらしょ。
店舗の中に傾けながらよっこらしょ。
上枠に嵌めながら傾けてよっこらしょ。
幅が足りず(ピンチ!)枠を一度外してガラスに嵌めながらよっこらしょ。

暑い中、みんなふぅふぅ汗と冷や汗かきながらなんとか午前中いっぱいでハマりました、特大ガラス。



これ絶対予算内におさまってないんだけど、
「予算通りのお支払い」がモットーだそうで
最初からこの作業を見越しての予算のようです。
オペレーター2人ってめちゃ嘘!!笑

さらには
この日、初めてガラスを嵌めた部分のシャッターを上まで全開したんですが、
後になってこれ閉めるのにシャッターに手が届かない!!!
ガチョーン(死語)

それに気がついて、フェルナンドに「とりあえず今日シャッター閉めるのだけ手伝ってね」って言ったら

「ピッチ!!お嬢さんシャッター引っ張る棒がいるよ!作ってあげて!」

そんな微経費も込みのスバラシイサービス。
フェルナンド最高✌︎

数日後、箒の棒をリサイクルして作った自作の「シャッター引っ張る棒」を持ってきてくれたピッチは、
どこで見つけたのか古い昔の街灯ランプもくれた。
「こういうの好きだろ?何かに使いなよ」って。
素敵過ぎでしょ、この会社。

もうただの業者さん以上の信頼関係です。
せめてものお礼にスタッフさんたちに手作り布マスクを贈りました。イサベルにもね。

仕事って割り切りきってない感じが村っぽくて、こういうお仕事する人にお願いしたくなるよなあ、と
これから商いを始めるわたしにはとてもすてきなお勉強になった経験でした。

ガラスもイメージ通り。
光がいっぱい入るので入り口にクリスタルボールをかけて夏の午前は工房が小さな虹でいっぱいになります。
秋の午後にはガラスのドアを開けるとガラスそのものが虹色を放ってとても魅惑的な色を床に落としてくれます。



そしてオープンしてみたら、色とりどりの着物がガラス越しに目を惹くし、
外から丸見えなので1人でやってる身としてはセキュリティと言う意味でも安心。
家具修復って、通常閉じたドアの向こう側で作業する世界なので
ぜひそれを目に見えるものとして伝えたかった。
そういう意味でもガラスファザーどは大正解。
普段目にしない作業が丸見えなのは面白いらしく、
特大版ガラスの向こうからみんな汗だく埃だらけで作業するわたしを眺めて行きます。

近所に住んでる知り合いの9歳のアイナラは学校から帰ってくるたびにガラスを叩いてわたしに夕方5時を知らせてくれます。
隣のおじいちゃんも恥ずかしそうに毎朝手を振ってくれるし
通勤で店の前を通る友達は自転車ですっ飛ばしながら「サトコぉ〜」と手を振っていきます。

思ってた以上にずっとずっとメリットを与えてくれたガラスファザードです。
これからもよろしく。


今日のスペイン語表現


el presupuesto cerrado
文字通り訳すとクローズした見積書。
製造やサービス過程でどんなことがあったとしても
最終支払いは見積書通り、と言う意味です。
顧客側にはとてもありがたい安心な見積もり。
フェルナンドたちのモットーです。
多分相当赤字が出てると思うんだけど
お客さんは安心してお願いできるから顧客数はゲットしてると思う。



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