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ボタンの楽しみ

首まわりは詰まり気味で低めのスタンドカラーが付いていること。ボディはゆるすぎず、かたすぎず、かしこまらない程度にキレイめ。ちょっと肩からドロップするくらいのフレンチスリーブ。・・・と、そこそこに我儘な好みを既製品のシャツで探すのは難しい。

ならばと、パターンから作ることにした。

シャツにはもうひとつこだわりどころがあって、ボタンはしっかり厚い本貝が好み。とはいえ、今どき「やっぱ本貝だよね」などと知ったふうなことを言う気もなく、厚めの貝ボタン主義なのは、単純に自分が“好きだから”である。虹色の輝きが見る角度によってゆらめく感じとか、プラスチックにはない重さとか、ひんやり感とか。

一時期、仕事でシャツやブラウスを担当してた頃があって、見本帳片手に高瀬だの白黒茶蝶貝だのを値ごろシャツに付けまくっていた。今となってはあの行為はおそろしい。。。本貝も今じゃけっこう“贅沢ボタン”なのである。

積み上がったボタン箱が圧巻の大正10年創業というボタン店に行き「シャツにつける貝ボタン、11.5mm、厚めで4つ穴ありますか?」とたずねたら、うっとりするよな輝きの、ぶ厚い白蝶貝を出してくれた。今回必要な7個を合計すれば“大特価ワゴン品”だった身生地よりも断然高い。それでも“着るたび指先にくるひんやり感に一人ひっそり悦に入る”というささやかな楽しみには代えられないのだ。

ウキウキしながら持ち帰って、ウキウキしながら一個一個縫い付けた。たぶん、このシャツを着倒して、くたくたになって着なくなる日が来ても、ボタンだけは次のシャツに付け替えて使い続ける。

ひとつ“お気に入り”が増えた。

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