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自家製麺 竜葵(新宿地下ラーメン)

今週の新宿地下ラーメンは「自家製麺 竜葵(ほおずき)」。看板メニューでインパクト大の「日本三大地鶏極上塩らぁ麺+ひつまぶし丼セット」(1,950円)を注文した。ラーメンと鰻という一見無関係の2要素は「名古屋」というキーワードで強固に結ばれていた。

日本三大地鶏極上塩らぁ麺+ひつまぶし丼セット

まずはラーメン。太さは普通で少しウェーブがかかった麺をすする。名古屋コーチンで出汁をとっただけあって足場がしっかりしたスープという印象だが、濃くはないサラリとした味でもあった。スープの中に水玉のように垂らされた黄金色の油が見目麗しく、シナチクの重量感が興味深い。

日本三大地鶏極上塩らぁ麺

このメニューの特徴は名古屋名物のひつまぶし丼にあると言えるだろう。鰻は4切れ。うち1切れを単体で口に入れたものの、そのクオリティは名古屋駅で売られているレトルト製品と大差はない。特別感はなく、食感はぼそぼそしていた。
しかし、丼に薬味を入れて、ラーメンのスープをレンゲで投入、汁が絡んだ鰻とご飯と薬味とをまとめてすくって食べると、ラーメン臭を感じない純粋な鰻のひつまぶしとなる。不思議な感覚だった。ぼそついた鰻も水を得た魚のように潤い、夢中でお米をかき込んでしまった。
以後、ラーメンとひつまぶし丼の交互に食べる。同じスープなのに味の印象がガラリと変化するのが面白く、気が付くとどちらの丼も空に。あとにはラーメンと鰻を一緒に食べたという妙な達成感が脳内に残った。

ひつまぶし丼

経営学の泰斗であるクレイトン・クリステンセンは、イノベーションを「一見、関係なさそうな事柄を結びつける思考」と表現した。ラーメンと鰻という異質な2要素の組み合わせがラーメン界に破壊的な旋風を巻き起こすか?と問われれば、答えはきっと違うと思う。
しかし、少なくとも、食べた人の記憶の中には大きな爪痕を残す。

もう竜葵より前の自分には戻れない。

この「日本三大地鶏極上塩らぁ麺+ひつまぶし丼セット」は、まさに「情報を食べる」というデジタル時代の食のエンターテイメントに相応しいクレバーなメニューだと思う。

竜葵の立て看板

そう感じて、私は静かに箸を置いた。

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