盗撮された話。
事件。
大学生(20)の頃の話。
私は,脱衣所で鼻歌を歌いながら,全裸で髪を乾かしていた。
なんとなく視線をうつすと,閉めたはずの窓が開いている。
何かレンズのような光が見えた。
妙な違和感を感じて,恐るおそる窓に近づいた。
カメラを向けている男と目があった。
・・・
「キャーーーーーーー!!」
状況が飲み込めないまま叫んだ。
自分でもびっくりするくらい叫んだ。
カメラを向けていた男は跳ね上がり,暗闇に消えていった。
そのあとのことはよく覚えていない。
ただ,犯人の向けるiphoneのレンズが頭にこびりついてよく眠れなかった。
次の日,警察に通報した
「恨みを買った覚えはないですか?」
「元カレとか心当たりないですか?」
事件の状況を話し,質問される。そんなものはない。
得体の知れない犯人が,とにかく怖かった。
警察と話していてもう1つ分かった事があった。
半年以上前からの常習犯かもしれないという事だ。
近所付き合いは良好だったが,人間不信になった。
笑顔が怖い。話しかけないで欲しい。
今まで普通に接していた全員が犯人に見える。
バイトも大学も休んだ。
静かな部屋でうずくまって,物音が立つたびにビクビクする毎日。
ネットに晒されているかもしれない。逆恨みされて刺されるかもしれない。
犯人と遭遇したらどうしよう。etc…。
起こってもいない不安に押しつぶされそうで,これから先どうしたら良いのか分からなかった。
どうやって立ち直ったか
あまりにも人間らしい生活ができないので,実家を離れることにした。
犯人が確実に居ないところに行きたかった。
「○○が一番安心できる環境に身を置いて欲しい。」
両親も友達も快く受け入れてくれた。
事件のあった地域から離れられることになり気持ちが少し軽くなった。
時間が経つにつれ,「なんで犯人のために時間使ってんだろ。」と思うようになった。バイトも大学も休んで,やりたい事を一切出来ていない自分に気づいた。
必要な対策はすべきだけど,自分にできることは限られているのだ。
防犯カメラや窓締めのチェックなど,せいぜいそれくらい。
盗撮魔のために使う時間も気持ちも勿体ない。
自分のために時間を使おうと思った。
そこからの回復は早かった。友達と一緒なら外に出れるようになり,徐々に1人でも出かけられるようになっていった。
この件を通して
支えてくれる人や頼れる人が周りにいることが分かった。自分だけで抱え込み,実家で生活し続けていたら本当にどうしようもなくなっていた。
支えてくれた家族にも快諾してくれた友人にも感謝しかない。
犯人は一生許せない。
被害者にも非があるなんていう奴がいるけど,そんなわけない。
犯人が100%悪いに決まってる。