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小さな頃に見えていた世界。まわりとは明らかに違う世界だと気づいた出来事。

私の両親は共働きだったため、祖父母の家にいることが多かった。

家の前は団地の中の一番大きな公園で、いつも誰かが遊んでいて、友達の兄弟姉妹は当たり前、親戚の子供や、友達の友達など、みんな一緒になって遊ぶので、知らない子が居ても何も気にならないし、みんなそれが当然のように遊んでいた。


いつものように公園に行くと、知らない子が一人で遊んでいた。

知っている子ならすぐに一緒に遊び始めるのだが、さすがに知らない子と一対一で遊ぶのは気が引けた。

どうしようかなぁと考えていると、間もなく、友達が遊びに来て、また一人また一人とあっという間に公園は賑やかになった。

すぐに友達と遊び始め、みんなでかくれんぼをした。

一人で遊んでいた知らない子も一緒になってかくれんぼをして遊んだ。


夕方になり、「ご飯だよー!」と、家から声がする。

我が家の夕ご飯はだいたい5時だったので、それは5時のチャイムのようになっていた。

「バイバーイ!」
「また明日ねー!」

みんなが散り散りに帰って行く。

ふと見るとはじめに居た知らない子が立っている。

「帰らないの?」
と私は言った。
「うん」
と、その子がうなずく。
「じゃあね、バイバイ」
と私が言うと、
「うん」
とその子は笑って手を振った。
私もつられて手を振った。


それからその子は毎日公園に遊びに来た。
そして友達とタカオニやケイドロをして一緒に遊んだ。

名前は知らないけど、私達はもうすっかり友達だった。

みんなが友達になったと思っていた。


その日はとても暑い日で、汗だくになりながら遊んでいると、祖母が公園にやってきて言った。
「カルピス飲むか?」

その頃のカルピスといえば、嫌いな子はいない。
お茶じゃなくてカルピス!?
みんなが色めきだった。

一斉に
「飲む!」
と、当然の返事。
「そしたらうちにおいで〜」
と言う祖母の後を、ぞろぞろとついていく。

玄関の外でワクワクしながらみんなで待っていると、7つのコップをのせたおぼんを持って祖母があらわれた。

カルピスにみんなの視線が集中する。

「お上がり」
祖母が言うがはやいか、
「いただきまーす!」
みんなが一斉にコップに手を伸ばし、一気に飲み始める。

私も手を伸ばしコップを掴んだが、同時に、あれ?と思った。

7つ?

おぼんの上のコップはきれいになくなっている。

私は祖母に
「8人やで」
と言った。
すると祖母は
「何言うとるん、7人やで。」
と笑う。
「いや、さっき公園に来た時、人数数えとったやん。その時8人おったやろ。」
と私が言うと、
「はじめから7人やったがな。」
と祖母は言う。

そんなやりとりをしている間に、空のコップがおぼんの上に返されていく。

だって、絶対8人やったもん。

私は自分のカルピスを飲みながら周りを見渡す。
みんな満足気な顔をしている。

人数を確認してみると、やっぱり8人やん!


とはいかなかった。


7人…。


名前を知らないあの子がいない。


私は近所のA子ちゃんに
「なあなあ、最近知らん子が毎日来て、一緒にあそんどるやん、その子は?帰ってったん?」
ときくと、
「だれ?そんな子知らんで。」
と言う。
「うそやん、さっきまで一緒に遊んどったやん。」
と言うと、今日はずっとこのメンバーで遊んでいて、そんな子は居なかったと言う。

「昨日も一昨日も一緒にケイドロしとったやん。A子とも喋っとったやん!」
と言うと、
「知らんて!はよケイドロの続きしに行くで!」
と言って走って行ってしまった。

おぼんの上には空っぽのコップが6つと、私の手にあるコップ。全部で7つ…。

笑顔でおぼんを持っている祖母にコップを返し、私は何もなかったようにみんなのケイドロに加わった。


その日から知らない子は遊びに来なくなった。

さりげなくみんなにきいてみたが、全員がそんな子知らないと言う返答だった。


みんなの記憶にはない子。

だけどぜったい一緒に遊んだ子。

私にしか見えていなかった子…。



その頃から、子供ながらに、言ってはいけないことがあるのだと、生きてきた。

みんなが普通で、私が違うのだと。



今ならわかる。
今なら言ってあげられる。



あなたの見ている世界は間違っていない。

素晴らしいあなたの世界なのだと。




読んで頂きありがとうございます😊

同じことを経験し、苦しんでいる人がいるかも知れません。

馴染めないでいる人達のチカラになれたらなあ。
気にすんな。私にも見えるぞ!と言って安心させてあげられたらなあ。
理解されなくて苦しんでいる子供達を助けてあげられたらなあ。
なんて、日々思う。


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いつも有難う御座います😊





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