100日間生きたワニの感想

映画作品としては最低限のレベルをクリアしていたと思います。
基準として
『千と千尋の神隠し』    80点
『風の谷のナウシカ』    70点
『アラジン』                        70点
『ベイマックス』                  75点
『ジョーカー』(2019)       85点
『パラサイト-半地下の家族』  85点
『カメラを止めるな』    65点
『アウトレイジ ビヨンド』   50点

これらの作品を踏まえて,ワニは

40点くらいでした。

ちなみに
『えんとつ町のプペル』は30点です。
『シン・エヴァンゲリオン』は25点です。

総評

映画としての体をなしていました。
この点でエヴァとは大きく異なります。
シンエヴァもワニも観客はある程度ストーリーを把握してきているはずなので,描写や情景説明サボろうと思えばいくらでもできます。
しかしワニは手を抜かずキチンと描写ができていたように思えます。
惜しい点といえば,静止画が多かったので,ここで動物なりに耳や尻尾を動かしていたらもっとキャラクターの心情の解像度が上がったと思います。
途中にワニとワニが映画デートに行く際に,映画はヌルヌル動いていたので,ここにコマ数を割くならメインキャラクターの心情描写にリソースを割いてほしいと思いました。
コマ数の指摘として,紙芝居感が批判されているのを散見しますが,思ったよりは紙芝居感はなかったです。
ただ,コマ数自体は少ないので,そのような批判は致し方ないのかな。とも納得はできます。

細評

ネズミくんの喋り方が気に食わない。これくらいしかありません。
原作中でもそうですが,割と現実ではありえないような喋り方をしています。
(まあ,いるんですけどねああ言う喋り方する人。)

それにしたって漫画では許されるが会話が立ってしまう映画という媒体では共感性羞恥が働きやすいかな,と言う印象です。全体を通して日常感を強調している映画なので,日常感に没入できなくなる残念なシーンだなと思います。

日常感で言うと,原作を見ている方ならわかると思いますが,身近に死を体験していない,健康な若者の,死を矮小評価した死にまつわるジョーク,のようなものが,日常に潜む死を強調していました。それは多く見られ,漫画では表現しきれない間を映像で作り出し,より深い表現になっていたのは映像化の良いところであると思います。
逆に漫画から損なわれてしまった残念な点としては,尺の都合上からか死のカウントダウンがなくなっている点です。
100ワニは顛末が確約された最大のネタバレをコンテンツにして,毎日投稿するという全く新しい形態の試みでした。それ故に,感情移入したキャラクター(こんな映画を見てこんなnoteを見ている人はワニに感情移入なんぞしてなさそうだが)死が迫るという疑似体験が出来て,それがコンテンツの要素を担う一柱だった筈ですが,それがなくなっていたのはとても残念に思えます。

集合写真を撮る際に,カメラのバッテリーがもうギリギリだったのはワニの寿命を表しているんでしょうが,他に見つけられませんでしたが,そのような小ネタでワニの死を暗示しているシーンは探せば多いのかも知れません。(二周目はしないけども)

新キャラとしてのカエルは概ね良いのではないでしょうか。あまり言うことがありません。映画としての完成度を上げている良い要因ではないかと思います。

現段階で1375文字なので,そんなに感想はかけませんでした。
普通寄りの悪くない出来栄えだと思いますが,最後に私感を交えての映画論を述べさせていただきます。
ワニのストーリーや構成から離れて,映画を見ている上で一番気にしている点は60分で通常料金という点です。
90分程度のドラえもんやコナンの映画と,3時間もあるシンエヴァやタイタニックが同じ値段はまだ納得できなくはないのですが,60分が3時間映画と同じ値段というのは納得ができません。
コスパ厨とも違う文脈で,内容の濃い60分ならまだ許せるんです。『言の葉の庭』なんて45分ですからね。
内容の濃さというのは脚本もそうですが,映画館ならではの大きなスクリーンで,音響設備を使った,美麗な映像と迫力のある音楽を魅力の一つとして売っているのなら45分だろうと3時間だろうと2000円の価値は生まれるというか,それに納得する人も多く現れると思われます。ですが,100ワニは映画館で見る必要が全くありません。配信されてスマホで倍速しながらスキップを挟み見るのがちょうど良い作品じゃないでしょうか。

総括

悪い映画ではないが,良作の映画と比較すると相対的に出来の悪い映画なの間違いがないので,『コングVSゴジラ』を見てください。
どう考えても100ワニよりもゴジラの方があなたの人生を豊かにします。
お金が余って余って仕方のない人,純粋に性格の悪い人は観に行って下さい。

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