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エッセイ

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「不便」は楽しかった

宝箱を持っている。正確にいえば、持っていることを思い出した。 表面に花柄がぷくっと浮き出…

畦道で夏が呼ぶ

3ヶ月前、玄関を出たら雪の壁だった。白に白が重なって目がくらむほど、白。粉雪と氷の粒とが…

黄金色の芝を走るスーパーカー

「ようい、スタート」とピストルが鳴って走り出したその瞬間から、あっという間に見えなくなっ…

得たいものが、検索上位になかった

信じたいものや心地よいもののみの摂取をやめてみるのは、ときに大切だと思う。第一、世界が広…

こんな日に虹を撮る

今日は、朝から霧雨が降っていた。音もなく、風にさらさら流れてしまうような雨。傘を差す意味…

海水に溶けたレッテル

空の写真は、逆さにすると宇宙から眺めた地球に見える。昨日、輪郭がくっきりとした海の水平線…

嗅覚にとどまるどころか、脳裏から離れない

忘れられないにおいがある。きっと一生、私の記憶をつかんで離さない。ぼんやりと薄れてきても、強烈に押し戻ってくる。そんなにおい。 ハイブランドの香水。艶やかな花。高級なアロマ。私の忘れられないにおいは、そのような洗練されたものではない。地味で、野暮ったくって、イケてない。田舎くさいなあ、と、笑う人もいるかもしれない。 とはいえ、過酷なビジネス競争ひとつ取っても「香り」は非常に有効で。 ”香りのブランディング“たるものを行えば、関係を築きたい先方との間に直感的なつながりをつ