一年ごとに作文をする

春になると作文をしたくなる。小説が書きたくなる。去年と一昨年は、春から初夏にかけて小説を書いた。それぞれ一冊の文庫本になった。
今年も、書きたい。3月は年度末の終わりが見えて気が緩むのかもしれない。去年の秋から走り続けている。早く4月まで走り抜きたいけれど、走っているだけでは心が保たない。それで別の世界のことを考える。頭の一部を異界に飛ばして、残りの頭で務めを果たす。

私の頭は去年の春より深くなっている。広く、かもしれない。濃く、かもしれない。あるいは水気ばかりが増えて薄まっただろうか。去年とは違う自分の頭の中に思い切り沈む。あちこちを叩く。冬の間には思いもしなかったことが、ぼろぼろこぼれ出てくる。「こんなに大好きと思えるものたちが隠れているなんて」と大喜びしながら、それらを引き摺り出して眺めまわして触り尽くすみたいな時間。一年分の愛。一年分の人生。

それを味わう自分自身も、去年から一年増えている。出てくるものも、味わう人も、去年とは違っている。それを楽しんでいられることを幸せに思う。今年は三冊目の本を出せるといい。

ごきげんオタクライフに使わせていただきます🌱