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【論文記録】太陽光発電が植⽣に及ぼす影響

"Quantitatively distinguishing the impact of solar photovoltaics programs on vegetation in dryland using satellite imagery" という文献の記録です。
太陽光発電所の建設および運転中に際した用地の準備と管理は乾燥地の植生動態に直接影響します。太陽光発電所の局所的な気候への影響や太陽光発電パネルの日よけの影響も間接的な生態学的影響をもたらします。このような背景を踏まえて、この論文では乾燥地における太陽光発電が周辺の植生に及ぼす影響が検討されています。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ldr.4783


Reseach Question

  • 気候変動、および、太陽光発電の拡大が、中国の乾燥地における植生にどれだけ影響を与えているか

Data&Methodology

  1. NDVI:外部変化に対する植生の反応を評価するための植物の光合成活性の定量的指標。光学衛星データから導出される。(PV パネルの影の影響を避けるために、年間 NDVI データセットのサイズを合成するために最大値合成 (MVC) 法を適用)

  2. 気象データ:平均表面温度、最高表面温度、最低表面温度、降水量、平均風速、最大風速、日照時間

・時間的傾向分析(Temporal trend analysis)
・相関分析(Correlation analysis)
・重線形回帰分析(Multiple linear regression analysis)

Results

Temporal trend analysis(NDVIを被説明変数、Timeを説明変数としたOLS)の結果、2000年から2013年でNDVIが緩やかに増加しているのに対し、PV導入後の2013年以降はNDVIが顕著に増加しています。ただし、2013年はPV発電所建設のために用地整理がなされているためNDVIは一時的に著しく低下しました。

Correlation analysisの結果、気候要因(気温、風速など)もNDVIに影響を与えていることが分かったため、PV導入による影響と区別するために、Multiple linear regression analysisを実施しています。これにより、気候変動による影響(GS: 成長期の日照時間、SP: 夏季降水量の合算)が56%、太陽光発電導入による影響(AP: PV面積)が44%であることが明らかになりました。

PVが植生増加・回復の主な要因となっている理由として、パネルが強い日射を遮断し、降水を留めて蒸発を減らしていることなどが考察されていました。裏付けるために、パネル外(コントロールゾーン)とパネル内(インパクトゾーン)でNDVIの増加率を比較しており、実際にパネル内のNDVI増加率がパネル外に比べて1.4倍であることが示されました。

Conclusion

  • 気候変動 (56%)と太陽光発電インフラの拡大 (44%)は植生増加・回復の主な要因となっている。

  • PV 内の植生は外側よりも 1.4 倍の速さで増加。(※太陽光発電パネルが降雨の蒸発を減らし、生育期の過剰な太陽光を遮断したことが要因)

Credit:
Zilong Xia, Yingjie Li, Wei Zhang, Shanchuan Guo, Lilin Zheng, Nan Jia, Ruishan Chen, Xiaona Guo, Peijun Du. (07 June 2023) "Quantitatively distinguishing the impact of solar photovoltaics programs on vegetation in dryland using satellite imagery" Land Degradation & DevelopmentVolume 34, Issue 14 p. 4373-4385

メガソーラー開発が森林伐採に繋がっていることもあり、太陽光発電と生物多様性との関係について調べてみようと思い、今回、太陽光発電が植生に及ぼす影響を検討した論文を読んでみましたが、まさかポジティブな影響があるとは思いませんでした。

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