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AI無きセカイへ

・自創作の「庭園」シリーズより一・五次創作(微妙なラインなので)。
・単体で読んでもあまりよくわからないと思います。自己満足用。

チョーカーに付いているハートの飾りを握る。このチョーカーもあの人が「可愛いから」とくれたもの。もう意味なんかないけど、捨てきれなかった。じっと最期の願いをこめる。選びたかった訳じゃない。でもそれ以外選べなかった。それ以外知らなかった。
以前、テレビで見た彼の庭園を思い出す。白い雪が積もる中、桜の花がたくさん咲いている。それに空の青が混ざり、冬と春の二つの季節をうまく繋いで一つの景色にしていた。あそこに行きたい。あの中でプラチナやネオンと笑い合ってみたかった。本当はそれが一番の願いだったけど、あまりに虚しくて、とても祈り続けることはできなかった。本当の祈りは涙と共に零れ落ちていく。
「ごめんなさい……」
何をもって人は「カミサマ」を定義するのだろう。全てを赦さずとも受け入れてくれるのがカミサマなら、きっとそれはどこにも存在しない。それに最も近かった存在こそ彼だったけど、それも他ならぬあたしの手で葬ってしまった。差し出そうとした手も払いのけてしまった。それではいくら「ごめんなさい」を続けたところで、赦されるどころか、届きすらしない。でもあたしが背負うにはあまりに重過ぎて、どうしようもなくて、そうは言ったって自業自得でしかないから一人で抱えるしかなくて。
だから死を選んだ。救われた気がした。何て今更。
こんな世界、大嫌い。涙なんか零れない。

だって涙は、空を舞うから。

作家修行中。第二十九回文学フリマ東京で「宇宙ラジオ」を出していた人。