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翻訳機

「宇宙ラジオ」のifSSが出てきたので取り敢えず記録。こういうのは後々資料集というか、紙の本にしてまとめたい。

星野が天神に出会う(対面する)話。

綺麗な人だった。
黒に近い紺色の長髪。
雪みたいに真っ白な肌。
長い睫毛。何より──
透き通った青い瞳。
空のような、海のような、
あるいはアクアマリンの
ような、蒼。
でもその人は、何故か
悲しそうな顔をしていた。
今にもあの美しい瞳から
涙が溢れ出しそうで、
そうなったらどうしてか
わたしまで悲しくなって
しまいそうで。
「泣かないで」
その人は困った
ように微笑んだ。
「泣いてはいないよ。
大丈夫さ」
けれど笑顔は弱々しく、
されど優美で。
ああ、もしかしてこの人
なのか。あの子に恋をし、
あの子を愛し、本当はあの子
からも恋されていた、その人。
男の人なのか女の人なのかも
わからない。当人は良く思って
いなかった呼び方だけど、
どこにも当てはまらない感じは
「神様」を思わせる。
「──天神蒼、さん」
名前を呼ぶと驚かせたらしく、
あの青の面積が広がった。
「君は……」
「わたし、星野友月です。
地上で唯一あなたの
声を聴いていた──
たった一人のリスナーです」
届いたんだよ、天神蒼。
その声も歌も、「ぼく」のなかに。

作家修行中。第二十九回文学フリマ東京で「宇宙ラジオ」を出していた人。