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これ(以下)の続き 長い間夢を見ていた 未来予想地図を片手に、輝く世界を掴めると 一人ではなかった 同じ夢を見る者は他にも沢山いた しかし輝くのは未来ではなく過去の栄光、偽物の太陽、ハイエナの目 世界はいつまでも闇の中で、出口も正解も何一つ見えない 冷たくて現実的、思えば太陽が偽物なのだから、あたたかい訳がなかった 人々は僕らを「夢追い人」と揶揄し、「新しいものは、変化はいらない」と叫ぶ 既に棺の準備を始めて時を待つ人々に、僕はなれなかった 書き込みだらけの地図も、やがて擦
駅のホームの端っこ。青いライトが照らす所で列車を待つ。 乗り込んだ車両から見下ろす街は星空。飛び散る光。生命。夜景の養分。さよならぼくのまち。 オーロラの道の先、通り過ぎた三日月の冷めた目から顔を背ける。わかっていた。ここも僕の居場所でないことくらい。 生命は地に足を着いてなければならない。それでも飛びたかった。一夜でいいから、この闇に抱かれて。 夜空を裂いて天の川の中。命を振り回す濁流の中でも、窓の外には青い星。手を伸ばした。 新月の憐れむ目。涙が空を舞う。 さよなら銀河駅
暗い夜空に光る雲。雲の切れ間から満月が見える。 大きな風が吹いて、近くの竹藪が大泣きしだした。その足元を三毛猫がよぎって、闇に消える。あたしも真似して細い横道に消えてみた。誰もいない。 ちっぽけな公園のベンチに座って足を揺らしてみても、何も来ない。営業時間外の古本屋とか居酒屋に思いを馳せても、やつらの朝にあたしは出会えない。夜行性はもう、その辺の空き缶とかタバコの吸い殻と同じで、ただのゴミクズだった。この世界のいらない存在。許されているのはやっぱ猫とか、イルミとか。あとコンビ
青空を愛していた。 冬の、朝の五時か六時くらいに見る、夜明けを告げる青を愛していた。 今ではすっかり仕事に明け暮れ、空を見上げることは格段に減った。 やっと見上げても、夜の黒い空ばかり。夜の住人になるというのはそういうことなのだ。スピカの輝きを忘れること。そう、冬の夜空だというのに、この空には星ひとつ見えない。月の光はこんなにも眩しい筈なのに。 「この目が黒いうちは」なんて、そんな色で何が見える。 私は青い瞳が欲しい。あの夜明けを映した青い瞳が欲しい。 世界のすべてを閉じ込め
例えば変わらない日常があったとして。 青空に白い雲、駅の群像、愛の言葉。 そういったつまらなくて下らない、退屈な日々を重ねるうちに、いつしか変わってしまった日常を求めてしまうことを知っている。 アイドルの引退、行きつけの店の死、流行病、やがて朽ちること。 「死」でさえ変化だ。生命が一番最後に残す変化。 今日も俺は変化を求めている。何でもいい。チョコレートの値段が上がることも、役者の結婚も、すべてが変化だ。 だから今日も希死念慮に刺されている。刺された傷口からまだ血は流れている
銀河の端っこでひとり ちっぽけな星を見ていた 太陽系にも入らない、一等星の輝きも持たない、特段珍しくもない星 そんな星でも、誰かの付けた名前があって 無いのならば僕が付ければいいのであって あるいは星自身が好きなように名乗ってもいいわけで 僕の見つめる星は無数の可能性に満ちている 僕の観測範囲外の星々にさえも、可能性は満ちている 今日もまた、人知れず輝く星を見つめている いつか名前を訊けるように いつか「はじめまして」を言えるまで
がらんどうの街にひとり 海を目指して歩くわたし 流星群が来るというのに 傘も差さずに夜を往く きっとそのうちの一つがわたしの脳天を撃ち抜いて、そうしたら中からクラッカーの紙くずが飛び出すの 紙くずに紛れてプラチナシルバーの指輪が落ちてしまう それを追いかけてわたし、星を一つ人質にして海に飛び込んだ 願い星のくせに、わたしを見捨てるなんて許さない 海の底が焼け落ちて、わたし達は青に呑まれていく 怖くて少し泣いてしまったら、赤い手が伸びてきてわたしの頰を包んだ 攫ってきた星を抱