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寛容性とおもしろい人を呼ぶ連鎖

※この記事は、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコースの授業「クリエイティブリーダシップ特論」の課題エッセイです。授業では、クリエイティブとビジネスを活用して社会で活躍されているゲストを毎回お招きしてお話を伺います。

2021年4月26日(月) クリエイティブリーダシップ特論 第3回 ゲスト
森 一貴 さん

山形県生まれ、福井県鯖江市在住。「社会に自由と寛容をつくる」がコンセプト。フリーのプロジェクトマネージャー/サービスデザイナーとして、人々の「できる」という確信=Capabilityを引き出す営みを探索する。職人に出会いものづくりを知る、福井のものづくりの祭典「RENEW」事務局長。半年間家賃無料でゆるく住んでみる全国連携移住事業「ゆるい移住全国版」プロデューサー。鯖江市にてシェアハウスを運営。
※森さんサイト「タマノモリ」から引用
https://dutoit6.com/about

【気になった内容を抜粋】
まず色々と活動されていて、どのように上の紹介を書けばよいか悩んだ。結局森さんのサイトから引用するという無難な手段に出た。

授業ではこれまでに手掛けてきたプロジェクトについてご紹介いただいた。内容は多岐に渡るが、コンセプトである「社会に自由と寛容をつくる」は根底で一貫している。

1. RENEW

森さんがフィールドとしていた鯖江市と周りの越前市・越前町は、ものつくりの地域として有名だ。特に眼鏡が有名で、福井県は福井市や鯖江市を中心に日本製眼鏡のフレームの約95%を生産しているらしい。ほかにも、漆器や和紙など、ものつくりの産業が集積している。

RENEW は工房見学のイベントで、3日間だけ工房や企業を一斉開放し、職人とユーザーが触れ合う機会となる。毎年80社くらいが出展しており、2020年は32,000人が来場した。森さんは2017年から、この RENEW で事務局長を行っていた。

ユーザーが喜ぶことはもちろん、職人側もユーザーと交流する機会が普段少ないため、大変刺激を受けているという。自分たちが当たり前というか、見過ごしていた作業や環境に対して、ユーザーから「かっこいい!」と言われ、魅力を再発見する。森さんはこれを「持続的かつ内発的な動機のデザイン」と呼んでいた。

2. ゆるい移住

移住促進事業というと、地元での就職やら起業促進の条件付き、KPI で何人移住したとか数字の議論がやたら多い。一言で言ってしまえば、供給者の都合が透けて見える。

だが、鯖江市の「ゆるい移住」はちがう。文字通りゆるい。力が抜ける。いつ来ても良かったり、条件が特にない。気軽に住んでみてというメッセージがある。供給者目線の移住ではなく、住む(ユーザー)側の生き方の実験という方がしっくりくる。森さんの話からも、ホームページからも実験という言葉が目立った。5都市でこの事業は展開された。

これらのほかにも、福井県庁でサービスデザインを実装する活動や、まちの関係案内所的なシェアハウスの運営、探求型学習塾ハルキャンパスの運営をされていた。過去形の表現で書いていたのも、森さんは今年の秋から、フィンランドの大学に留学される。留学後の活動が楽しみだ。

【感想】
森さんの活動がおもしろく、またそれがきっかけでおもしろい人が集まっている。そういうおもしろい人を呼ぶ連鎖みたいなものが起きている気がする。

森さんがフィールドとされている鯖江市のユニークな取り組みは、以前から聞いたことがあった。最もとんがったもので言うと、鯖江市役所の JK 課の取り組みだろう。今でも覚えているが初めてネットで目にした時、JK という単語に目を疑って二度見した。

森さんが鯖江にきた経緯は分からない(今聞いてみたい)が、もしかすると森さんも鯖江の「なんかおもしろそう」という雰囲気に惹かれたのかもしれない。そして、その環境でおもしろい人を惹きつける側に回っている。

リチャードフロリダがクリエイティブな都市の要件として、3つの T を挙げている。「Technology 技術」、「Talent 才能」、最後が「Tolerance 寛容性」だ。寛容性は、森さんの信条でもある「社会に自由と寛容をつくる」に共通している。

都市の要件とあるが、地域の要件と置き換えても問題ないと思う。地域を活性化させるために、寛容性が重要であり、それこそがおもしろい人を呼ぶ連鎖の要因な気がしてならない。寛容性については今後も考えていきたい。

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