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プロトタイプをつくるし、プロトタイピングのやりかたもつくる

※この記事は、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコースの授業「クリエイティブリーダシップ特論」の課題エッセイです。授業では、クリエイティブとビジネスを活用して社会で活躍されているゲストを毎回お招きして、お話を伺います。

2021年5月10日(月) クリエイティブリーダシップ特論 第5回 ゲスト
八田 晃 さん / ソフトディバイス代表取締役

ソフトディバイス社は、京都にあるデザイン会社。1984年プロダクトデザインから始まり、時代とともに領域が UI・UX まで広がっていった。懐かしいと言うと、自分の年齢がばれるが、1999年の i-mode 第一号機 UI も設計されている。現在は車、医療機器のデザインが多いようだ。

近年では、10年後にどのような商品を出すかのような構想に関する相談がクライアントから多いとのことだ。それも、ソフトディバイス社が先行開発のためのプロトタイプ力が評価されているからだろう。このプロトタイプづくりのプロセスをソフトディバイス社は「Sketch」と呼んでいる。今回はこのプロトタイピングがテーマだった。

“The best way to predict the future is to invent it.” (未来を予測する最も確実な方法はそれをつくりだすことだ)と言ったのはアラン・ケイ。(ちなみに入学して1か月だが、すでにこの言葉を3人の先生から聞いた。)それをもじって、ソフトディバイス社は” Predicting the Future by making.” (モノをつくることで未来を予見する)をミッションに掲げている。講義で印象的だった八田さんの言葉として、「未来は観察からつくれない。紙での議論には限界がある。モノがあると腹落ち感が違うので、まずつくってしまう。」と言っていた。

講義では、いくつかのプロトタイピングの方法について紹介があった。例えば、見た目無視で実動するものを1~2時間でつくってしまうハードウェアスケッチ、医療用ベッドの開発において、実際の病院で実験ができないために自分たちが演技するもの、視覚化するために撮影した写真に実現イメージを描きこむものなどだ。

プロトタイピングの方法そのものをつくれる要因として、ソフトディバイス社は環境づくり(ラボ)に力を入れている。以下の記事が詳しい。

身体性が重視され、壁が全面ホワイトボードであったり、プロジェクタや 3D 音響システム、3D プリンタなどもあり、見ているだけでワクワクする。

ラボのユニークな点は、クライアントとの共同プロトタイピングを可能にした点だ。つくったものの承認を得るのではなく、一緒につくってしまう。今風に言えば、参加型デザインとかコ・クリエイションと言った感じだろうか。ビジョンづくりやリサーチはリサーチ会社、プロトタイプづくりはデザイン会社、世に出すところはクライアントと言った分断されたプロセスとアクターを、言わばごちゃ混ぜにすることで、ゴールを参加者全員で共有することができる。

ソフトディバイス社は、プロトタイプで何をつくるかだけでなく、プロトタイピングの方法そのものをつくる会社と言える。

【感想】
デザイン系のアプローチは多い。その理論であったり方法論を学び、そのままなぞったとしても新しいものは生まれないんだろうなと前々から思っていた。大学院に入学してまだ1ヵ月だがその思いは強くなり、今回の講義で確信に近くなった。

もちろん既存の手法や理論は大事。だが、それらにあまり囚われないようにしたい。巨人の肩に立つなんて言うが、先人の智慧はお借りするが、それらを疑ったり、アレンジしていく、時にはまったく違うモノをつくる姿勢が重要なんだと思う。「分からねぇなぁー!」と手を動かしながら悪戦苦闘する姿勢を持ち続けられるかどうか、がとても大事なのではないかと思った今回の講義だった。

八田さんが笑いながら言っていたが、自分にはかなり理想的な状態だと思った一言を最後に紹介して締めたい。「ペーパープロトタイピング的なことをやっていて、後から(世で)それがペーパープロトタイピングと名付けられていることを知った。」

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