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問いと遊びのデザイン

※この記事は、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコースの授業「クリエイティブリーダシップ特論」の課題エッセイです。授業では、クリエイティブとビジネスを活用して社会で活躍されているゲストを毎回お招きしてお話を伺います。

2021年5月31日(月) クリエイティブリーダシップ特論 第8回 ゲスト
安斎 勇樹さん / 株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO、東京大学大学院 情報学環 特任助教

安斎さんのお話を伺うのは今回が初めてではない。MIMIGURI の前身である MIMICRY DESIGN が主催していた研修に何度か参加したことがある。書籍「問いのデザイン」も自分がワークショップを行う際にとても参考にしている。

講義では、安斎さんがワークショップの研究を本格的に始めた大学時代から、これまでの仕事で行ってきたワークショップの取り組みやその背景などをご説明いただいた。

本 note では、安斎さんが大切にしている「問いのデザイン」、「遊びのデザイン」について、特徴が際立ったワークショップについて紹介したい。


1. 問いのデザイン/100年間残り続ける”シチズンらしさ"を定義する

創業100年間を迎えたシチズン時計株式会社が、次の100年に残したいアイデンティティは何か考えるもの。

いきなり次の100年を考えてください、と言われても参加者が戸惑うのは容易に想像がつく。そこで安斎さんがとった手法が「問いのコンビネーション」だ。

「次の100年に残すべきシチズンらしさ」を考える前に「約6,000点の時計のうちシチズンらしい3本はどれ?」という問いを設けた。時計を選び、「なぜ自分はこの時計を選んだか」を考えることで、自分がこれまでにシチズンで大事にしてきた価値観みたいなものが見えてくる。それをもとに他者と未来も大切にしたい価値観が議論しやすくなる。

問のまなざしマトリクス

問いをマトリクス上で分類すると、
・約6,000点の時計のうちシチズンらしい3本はどれ?→“経験”の象限
から
・ 次の100年に残すべきシチズンらしさ→“ビジョン”の象限
に移っている。このように、初めからビジョンを考えるよりもタイプの違う複数の問いを組み合わせることで、最終的な問いに取り組みやすくなる。

聞くと、「なるほど!こうやって問いを分けて、見えない導線でつなげば良いのか。」と思う。だが、過去に自分も設計して分かったが、これが難しい。マトリクス上で問いを上手くバランシングできないし、導線引けないし、できたとしても実際やってみると、全く盛り上がらないとか意図とは完全に違う方向にいってしまうことがある。経験値が求められる。

でも、これはやってみることが重要。というのも、自分の立てる問いのクセみたいなものが見えてくるからだ。それだけでも大きな収穫だった。ちなみに、自分は”妄想”象限の問いを立てがちだということがよく分かった。なので、意識的に他の象限の問いは立てられないかと考えることができる。


2. 遊びのデザイン/組織ビジョンの社員への浸透

資生堂グループが掲げるVISION 2020 実現に向けたグローバル共通の行動指針を、グループ社員に浸透させるプロジェクト。行動指針は8つある。

ここで、安斎さんが取った方法が「8つある行動指針、現場ごとに1つだけ変えられるとしたら、何を新しくつくり何を取り換える?」というワークショップ。

「問いのデザイン」にも載っている事例で、初めて聞いた時は凄いと思ったのを覚えている。理由はいくつかある。恐らく会社の偉い人たちが決めたであろう行動指針を変えられるという遊び心がくすぐられる点。また、遊びながら真剣に考える、1つだけ変えられるということで行動指針一つずつと向き合うことになり、検討過程の中で行動指針が自然とジブンゴトとなっている点などだ。

人間の特性をうまく使ったワークショップだと思う。もちろん、このようなワークショップを許容した資生堂の懐の広さも成功要因の一つだろう。


ワークショップ、ファシリテートと聞くと、「自由に考えていいよ!」とか当日の即興性みたいな間違ったイメージがあると思う。実際に自分がそのイメージに過去苦しんだことがあった。だが、重要なのは本番前の準備だ。「遊び」と「問い」、この2つは大きなチェックリスト項目となり得ると思う。


【編集後記】
日常生活で問う力を養う方法として、「お笑い」が役に立つという話があった。安斎さんの note で Ippon グランプリのお題を問いで類型化した記事がバズっている。

お笑いで言うと、自分は最近のお笑い番組は全く見てないし知らない。でも、サンドウィッチマンのファン。BGM 代わりによくネタを聞いているので、彼らのネタはほぼ暗記している状態にちかい。ボケかツッコミのどちらか空欄で記述するテスト問題があれば、高得点をたたき出す自信がある。(ちょっと何言ってるか分からない。)

惹きつけられる理由の一つが、サンドウィッチマンがクリエイティブだと思うから。「ピザ屋」、「引っ越し」などテーマが変わっても爆笑を生み出す方法論と再現性がネタの一つひとつから感じられる。

自分の密かな夢が、サンドウィッチマンのネタ分析をすること。時間がかかりそうな気がするが、いつかやりたいと思っている。どのようなボケ、ツッコミパターンがあるか、またそのパターンがどのような比率でネタ中に調合されているかを可視化してみたい。

先ほど紹介した安斎さんの記事を読むと冒頭に、過去にサンドウィッチマンのコントプロセスを分析したことがあると書いてあった(読んでみたい)。やっぱりサンドウィッチマンは偉大だ!ということでこれからサンドウィッチマンの素晴らしさを10,000字くらいで紹介したいと思います。

もういいぜ!

ありがとうございました。


本日で今年度「クリエイティブリーダシップ特論」の前半は終了し、後半は9月からとなります。6~8月は最低月1回なにかしら記事を書きたいなと思ってます。

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