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アートは恋愛のように有用性がない?

※この記事は、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコースの授業「クリエイティブリーダシップ特論」の課題エッセイです。授業では、クリエイティブとビジネスを活用して社会で活躍されているゲストを毎回お招きして、お話を伺います。

2021年5月3日(月) クリエイティブリーダシップ特論 第4回 ゲスト
鈴木 潤子 さん / キュレーター
東京都出身。時事通信社、森美術館、日本科学未来館で通算約20年間の勤務を経て独立。 2011年より無印良品有楽町店内のギャラリースペース・ATELIER MUJIにてキュレーターとして8年間で約50件の展覧会とその関連イベントを企画運営した。2019年4月に開店した無印良品銀座店6階ATELIER MUJI GINZAにて展覧会やイベントのキュレーションを行い現在に至る。同時並行でフリーランスとしてこれまでの経験を活かした個人事務所@Jを立ち上げ、アートやデザインを中心に、幅広い分野でPRやキュレーション、文化施設の立ち上げに携わる。
【引用】 Schoo, <https://schoo.jp/teacher/2775>

今回は鈴木さんが現在進行形で取り組まれているプロジェクト「なおえつうみまちアート」について書きたい。

【なおえつうみまちアート】
なおえつとは、新潟県上越市にある直江津地区という港町である。直江津地区で現代アートのプロジェクトが立ち上がることになった。直江津には世界最大級の無印良品店舗があるが、良品計画と上越市の地域活性化を目指す連携協定を結んでいた。連携協定の関係で、良品計画がこのアートプロジェクトに全面協力をすることになり、無印良品と長年仕事をしてきて実績のある鈴木さんにプロジェクトリーダーの白羽の矢が立った。

鈴木さんは、今回のプロジェクトを「地域の人に贈るラブレター」とおっしゃっていた。歴史が豊富、かつ夕日など魅力的な風景を数多く持つ直江津であるが、住んでいる人がその地域の価値を見過ごしがちである。それをアートという形で届ければ、地域の価値を再認識できるきっかけとなる。言わば、アートがラブレターという形で地域の人に届く。

全国でアートプロジェクトや芸術祭は数多く行われているが、それらは「経済効果」や「関係人口」の言わば地域外の人にフォーカスされてきた。一方で鈴木さんは今回のアートプロジェクトを「シビックプライドの向上」、「地域の回遊」と地元の人を念頭に置いている。

まだオープンにできない情報が多く話すのが難しそうな印象を受けたが、ユニークなアーティストたちが、「うみ・まち・ひと」をテーマに数多くの作品をつくる予定だ。この夏に公開される。

【感想】
二つのことについて、書きたい。

一つ目はキャリアの話について。鈴木さんが取り組まれているプロジェクトの話も面白かったが、キャリアの話も興味深かった。鈴木さんは美術大学出身ではなく、キュレーションの仕事も日本科学未来館で働き始めるまで経験がなかった。ただ、元々「ミュージアムは社会のインフラ」と考えていたり、時事通信社に就職された理由も、会社の建物が歴史的なところに惹かれたと話されていたことより、アート分野に前々から関心があったことが推察される。

2011年に独立されるも、東日本大震災と重なり仕事があまりない状態になったそうだ。ただ、それから上記の通り、無印良品などのプロジェクトが始まり、他にも茨城県行方市の「やきいもファクトリーミュージアム」を手掛けるなど活躍されている。

今回初めに鈴木さんが、講義を通してみなさんに「寄り道と道草は無駄なし」と伝えたい、と話されていた。まさに、一見バラバラに見えるような鈴木さんの取り組みも、長期的に見ると一つひとつの取り組みが線となってつながっているように感じた。

二つ目は、芸術祭やアートプロジェクトについて。今、地方活性化の手段として、芸術祭やアートプロジェクトは正直どこでも行われている印象を自分は持っている。それこそ、B 級グルメのイベントやゆるキャラなどのように。

自分が住んでいた種子島でも「種子島宇宙芸術祭」が行われている。ただ、その効果は正直なところよく分からなかった。観光客は少し増えたように感じたが、経済効果があったのか分からない。一方で、地域側の人も認知度は高かったと思うが、どれくらい参加していたかは不明だ。

鈴木さんも当然そのような問題意識は抱えられていたため、「シビックプライド」や「地域の回遊」という言葉が出てきたのだと思う。なおえつうみまちアートに興味はあるが、正直この夏もどこかへ行くことは難しいと思っている。情報は引き続き追っていきたい。

ちなみに、タイトルの「アートは恋愛のように有用性がないのか?」は授業で出てきた言葉で、自分の回答はいまのところありません。こちらも引き続き考えたいと思います。

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