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【第1回】新人騎手の逃げパターンを探ろう! ~団野大成編~

2019年は以下の7名の新人騎手がデビューしました。

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新人騎手は平場では3キロの減量特典があるので、先行馬の騎乗依頼がなされることが多くあります。

今回は団野大成騎手の逃げに着目し、逃げるときにどのようなパターンなのかを探っていきたいと思います。


1. 団野大成騎手のプロフィール

団野大成騎手は2000年6月22日生まれの19歳。2019年に父・団野勝が調教助手として所属する栗東・斉藤崇史厩舎からデビューしました。これまで239回騎乗し、15-11-13-200という成績。

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脚質別の成績を見てみると、やはり減量を活かして前の方で競馬をする方が好成績で、差し馬となると83回騎乗して馬券に絡んだのは2着1回という数字。

なお、芝、ダート別に成績を見てみると以下の通り。

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芝5勝に対してダート10勝。先行力を活かせるダートの方が成績は良いですが、芝だと単勝回収率が101%、単勝平均が2146円と穴を開けていることがわかります。一方でダートの複勝回収率は111%あり、芝は単勝、ダートは複勝をベタ買いしていればここまでプラスになっていました。

それでは、今回取り上げる逃げ馬に騎乗した際の成績を見て行きます。

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逃げ馬に騎乗したのは合計23レース。うち、芝が7レース、ダートが16レースとなっていますが、芝は全て着外なのに対して、ダートは1着5回、2着1回となかなかの数字。

さらにダートの場合は単勝回収率が137%という数字になっており、逃げ馬に乗った際は積極的に狙ってみたくなる数字。

数字上からみる団野騎手の買い時は

・芝は(勝率が低いのでめげずに)単勝ベタ買い
・ダートは複勝ベタ買い
・ただし、逃げ馬に騎乗する際は単複買い

とまとめることができるでしょう。

しかし、仮に儲かると分かっていても、騎手でベタ買いはなかなかしづらいですよね。以下、団野騎手の特徴を掴むために、芝、ダートそれぞれで逃げたレースの分析を行っていきます。



2. 団野騎手の逃げ ~芝編~

団野芝

団野騎手が芝で逃げたのは上記7レース。そのうち最高着順は5着と馬券には絡んでいませんが、ほとんど人気通りに持ってきているという印象。

では、団野騎手の逃げをラップの面から分析していきましょう。

まず、初めて芝で逃げた2019.3.2の小倉未勝利戦ですが、2000mという距離を考えると12.7-10.8-11.5-11.9という入りが速すぎて、実際に1000mまでは後続を離して大逃げするような展開に。しかし、ペースが速すぎたのか大きく失速し、コーナー通過順は1-1-8-18でブービーからさらに4.8秒離れて大差での入線。このレースに関しては初めてということもあって参考外。

それ以外のレースに関しては大きく分けて2つの特徴が見られます。

①逃げようという意志が強く、テンが速くなる
②中盤で脚を貯めようという意識があるのか、緩ませる

①についてですが、ラップを見ていただければ分かるように、前半3Fが速くなっており、2000mであっても12.7-10.5-11.7(2019.8.31)や12.9-11.4-11.9(2019.8.3)というラップを刻んでいます。

逃げ馬に騎乗する際には調教師から逃げるように指示が出ており、それを忠実に守ろうとする結果、何が何でも逃げるという姿勢につながってテンが速くなるのではないかと推測できます。

そうした姿勢が一番強く表れているのが2019.7.6のレース。

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スタートから馬を押して先手を奪いにいきます。しかし、3頭で先行争いの形になり、一時は最内枠から出た1番の馬がハナを取りそうになる展開。

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結局、間を走る黄色帽子の馬がポジションを下げて行き、2頭がずっと競り合う形に。

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逃げる意識の高さが仇となって、このレースは最下位に沈むことになりました。


では、次に②の中盤を緩ませるという点に移ります。中盤を緩める逃げを打ってしまうとどうなってしまうでしょうか。

正解は「脚力勝負となってしまう」です。

もちろん、先行馬にとっても間で息を入れられると脚がたまるので、末脚がある馬であればこの展開は大歓迎です。

なので、中盤が緩むと、厳密に言うならば(前にポジションを取っていた方が有利になる)脚力勝負と言えるでしょう。

しかし、この展開であれば後方からでも上りを使える馬であれば十分に馬券に絡むチャンスがあります。

さらに、団野騎手の場合、ハナを取るために自身はテンをかなり速めに刻んでいます。

○逃げ馬、付いていく馬
テン:速い ⇒ 中盤:緩む
(最初、一気に負荷をかけてその後休憩)

○付いていかない馬
テン:着いていかないので緩やか ⇒ 中盤:ペースが落ちたところを追いかけて馬群を追走
(徐々に緩やかな負荷をかけ、最後一気に体力を使う)

かなり大雑把でありますが、ポジションごとの負荷のイメージはこのような感じになります。前者はペースチェンジの幅が大きく、いくら中盤で休憩が入っているとはいえ、序盤にかかる負荷が大きすぎます。それに対して後者は、緩やかに負荷がかかっている状態で、自分が走る場合を想定すれば明らかに後者の方が楽ですよね。

以上のことから、団野騎手の逃げパターンであれば、脚力勝負ではありますがなおのこと差しが決まりやすい展開になると言えるでしょう。

なお、このパターンにあてはまらない例外が2019.8.11のレースですが、映像を見ると分かる通り、道中でいつものようにペースを下げようとするのですが、番手の馬に競りかけられていたこともあってか、馬がかかっており制御できなかったために中緩みが入らない展開となっていたのであって、ここでも基本パターンである中緩みを入れようとしていたことが分かります。

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実際にレース映像を見てみると、隊列が決まったところで手綱を引いて落ち着かせようとしていますが、馬が口を割って嫌がっています。そのため、仕方なく馬のぺースに任せて走ったため、いつものように中緩みが入らない展開となったのだと思われます。

以上、団野騎手の芝における逃げ傾向を見てきましたが、芝での逃げは買いにくいと言えるでしょう。そして、団野騎手の馬について行く番手の馬も厳しい展開となるので、かなりの消耗耐性が必要になります。逃げ馬とそれを追いかける馬から少し離れた位置を取れる馬が一番有利な展開になることが多いですね。



3. 団野騎手の逃げ ~ダート編~

団野ダート

ダートで逃げたのは全部で16レースありますが、2ケタ着順がたった4回しかなく、芝とは打って変わって好成績が目立ちます。人気馬の騎乗も多くあり、馬質も芝と比べるとはるかに向上しています。

ダートの場合、大きく分けて3つの特徴が見出せます。

①前意識が強く、前傾ラップになることが多い
②ハナを取りきったところでペースを緩める
③番手の馬につつかれるとペースを上げる

①に関してはラップを見れば明らかなように、テンが速くなっており、そこから徐々にペースが落ちて行くラップになっていることが多いです(例:2019.9.14:12.2-10.8-11.5-12.4-12.8-13.3-13.9/なお、同日3歳以上1勝クラスのダ1400mのラップは12.4-11.1-11.8-11.9-12.2-12.4-12.9。クラスが違うので単純比較は出来ないが、同じ前傾ラップでも緩み方が全然違う)。

ダートの場合、芝よりも全体的に前意識が強いため、テンから速く入るとほとんどの馬がここで追走に脚を使うこととなり消耗展開となります。こうなると、脚がたまらないため最後は脚色が同じとなってしまうため、前にいる馬が有利となります。そのため、逃げ馬に騎乗した際の団野騎手の成績が良くなっているのでしょう。

とまとめたいところですが、先に②の説明に移りたいと思います。

前傾ラップになることの多い理由が②とも関連していて、芝でも中緩みを入れようという意識が高かったですが、恐らくダートも同様の理由なのかなと思います。

ハナを取りきったところでペースを緩めてしまうので、原理としては芝の時と近い理由で、結局は脚力勝負となってしまうことが多くあります。

「前半を厳しく行ったために、後半は脚がなくなってしまったので前傾ラップになる」というのではなく、「ハナを取るためにテンは刻んでいくが、隊列が決まるとペースを緩めてしまうので結果的に前傾ラップになる」というのが正しい状況かと思います。

最後に③ですが、これも②が前提条件となっています。マクりの馬がいた時などはそこでペースが上がることがありますが、マクりが入るということは馬を動かせるほどペースが緩んでいたということの裏返しでもあります。

団野騎手は行ききらずに、ハナを取ったところですぐにペースを緩めてしまうため、番手の馬としてはまだまだ脚に余裕がある状態なので、積極的に行こうとします。

しかし、番手の馬が仕掛けようとすると、その動きに反応して団野騎手もスピードを上げてしまう、という展開がよく見受けられました。実際に、4コーナーの競馬のラップを見ると、中盤でラップの上げ下げが見られる部分がありますよね。

以上から、ダートにおける逃げも芝の時と同様に、テンを刻んでから中緩みを入れるラップで逃げるため、脚力勝負となる展開が多いという風に言えるでしょう。

ダート距離別の成績を見ると、さらに面白いことが分かります。

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ダートの逃げで5勝を挙げていますが、実は函館・札幌のダ1000m・1700mでしか勝利を挙げておらず、他には札幌ダ2400mで2着に1回入っただけなのです。

しかも、勝利した際に騎乗していた馬を見ると1人気3回、2人気1回と圧倒的な人気馬に乗っていることが多く、単純に脚力勝負になってもそもそもの脚力が優位であったために勝ち切れたというパターンが多いのです。

以上を踏まえると、実はダートの逃げ馬も買いにくいというのが個人的な印象です。脚力のある馬に騎乗した際は良いですが、そうではない場合、消耗戦に寄せ切らない分、最後は甘くなって差されるパターンが多くなります。

特に今の阪神ダートは少しでも緩くなると差しが決まる馬場なので、今開催の間、団野騎手が逃げ馬に乗る場合は疑うところから入りたいですね。




以上、団野騎手の逃げ方について分析してみました。今年は団野騎手を含めて7名の新人騎手がいるので、好評であれば順次、各騎手を順番に取り上げていこうかなと思っています。気になる騎手がおられましたら、リプ、DMなどでお知らせいただけますと優先して取り上げるかも?

なお、ラップ分析の手法に関しては手取り足取りローエングリンさんに教えていただいたものがベースになっています。

もしもラップについて知りたいという方がおられましたら、ローエングリンさんがnoteに記事を出しておられますのでそちらをご覧ください。

記事はこちらから辿れます。


長々と書き連ねましたが、最後までご精読いただきありがとうございます。

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