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【第3回】新人騎手の逃げパターンを探ろう! ~斎藤新編~

ご好評いただき第3回目を迎えることになったシリーズ。今回は今年デビューの新人の中でここまで最多勝をあげている斎藤新騎手を取り上げようと思います。

*過去のシリーズはこちらからご覧になれます。
https://note.mu/u___matz/m/m227e9469fa8b

1. 斎藤新騎手のプロフィール

父は調教師である斎藤誠師。父は美浦で調教師をやっているが、親元を離れて栗東所属を選択し、2019年3月に安田隆行厩舎から騎手デビュー。デビュー翌日の3月3日の小倉4R(3歳未勝利)を自厩舎のアルファライズで制し、同期の中では最速で勝利を挙げました。ここまでの成績は28-25-22-321。

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さて、脚質別成績を見ると減量特典を活かせる先行馬での勝ち星が目立ちますが、差し馬でもしっかりと勝利できているのが他の新人騎手とは違う所。

そして、逃げ馬に騎乗した際は単勝回収率128%、複勝回収率148%という数字をマークしており、ベタ買いしてもプラスという成績。

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ただし、人気別の成績を見てみると分かるように、人気馬に乗る回数も多いのが斎藤騎手の特徴。逃げ馬の騎乗機会43回のうち、1~3人気だけで20回も騎乗しており、約半数が人気馬に乗っているということになります。

続いて、芝、ダート別の逃げ馬での成績を見てみましょう。

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芝でもダートでもしっかりと勝ち星を挙げており、コースを問わず単勝支持率・複勝回収率ともにプラスという驚異の成績。

もう少し詳しく見て行きましょう。まずは、芝での人気別成績から。

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1人気での勝利がないのは気になりますが、6人気の馬で勝利したり10人気の馬を2着に持ってきています。

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それに対してダートは上位人気、特に1人気・2人気はしっかりと勝利を挙げているのに対して、下位人気の場合がイマイチ。そして、なぜか7人気の馬に乗った際だけ複勝率100%という数字。

以上を総合し、数値の上から見た斎藤騎手の買い時をまとめてみると次のようになります。

・逃げ馬に騎乗する際は単勝・複勝ベタ買いでプラス。
 →は人気にかかわらず単勝・複勝ベタ買い
 →ダートは単勝は上位人気のみ、人気薄は複勝買い
・ダートの7人気に乗る際は要注意(オカルト)

続いて、芝・ダート別に実際の逃げパターンを見ていきましょう。


2. 斎藤騎手の逃げ ~芝編~

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斎藤騎手の芝における逃げですが、距離を問わず共通して言えることが自身の思い描くパターンに逃げを当てはめていくということです。しかも、ラップタイムなどの時計基準ではなく、隊列を基準として考えているのではないかと思われます。

以下、短距離と中距離~長距離の2つに分類して細かく検討していきます。

①短距離
斎藤騎手内での基本イメージ

テンからしっかりと流していき、そこから大きく緩めることなく、出来れば番手からは少し離して逃げたい

このイメージで乗るため、短距離戦は基本的に厳しい消耗戦になります。緩ませてしまっては差しが届いてしまうため、短距離においてはこの逃げ方は間違ってはいません。

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実際に、逃げ馬に騎乗したレースの中で、距離を1200~1400mに絞ってみると成績はこのようになります。

芝の逃げの成績が4-2-2-14でしたが、3-0-1-6という成績ですので短距離では好成績を収めていることがよくわかります。

実際に短距離で騎乗した10回のうち、掲示板を外したのはたったの2回。

2019/8/24 ミヤコシスター 9人気9着
2019/3/9   ブロワ 14人気14着

もともとが人気薄の馬で、着順も人気通りに持ってきているだけで、残る8レースは全て掲示板圏内には持ってくるという内容。


②中距離~長距離
斎藤騎手内での基本イメージ

先手をしっかりと主張し、隊列が決まってからは番手の馬を離してリードを保ったままで逃げたい

ほとんど短距離の場合と同じイメージで乗っています。しかし、1400mより距離が伸びた場合の成績は次の通り。

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短距離が3-0-1-6だったのに対し、中距離以降では1-2-0-8。明らかに短距離に比べて成績が落ちています。

(*新潟直線1000mで3着が一度あり、これを含めると全体の成績と数字が一致します。)

やや長くなってしまいますが、その理由を説明すると、違いは道中のペースにあります。

短距離はワンペースで流れることが多いため、そもそもペースの緩みが少ないのに対し、中距離以降はレースによって緩み幅が大きく異なり、ハロンタイムが13秒台まで落ち着くこともあります。

斎藤騎手のイメージは「番手から離して逃げる」というものですが、短距離の場合はペースがある程度一定のため、あるいはワンペースで速く流れるため、番手を離そうとする際に大きくスピードが加速することはありません。

逆に中距離以降の場合、ハロンタイムが11秒台~13秒台の間を上下することになるため、番手を引き離そうとする場合、そこでレース自体のラップが大きく動きます。

番手の馬が逃げ馬をピタっとマークする展開になると、斎藤騎手はこれを嫌がって加速。そうすると、息を入れられるタイミングがなく、最後は失速してしまうという展開が多々見られました。

一例を挙げるならば2019/9/21のレース。
12.5-10.9-12.4-12.5-12.4-12.0-11.9-11.4-11.7-11.8

コーナーで一度は緩んだものの、向正面で番手の馬が間合いを詰めて来たこともあって加速。4F目以降、この馬はずっと加速するラップを踏んだことになり、心肺への負担は相当なものになります。案の定、最後は大失速して勝ち馬とは約2秒離れて最下位で入線。


とやや長い説明になってしまいましたが、結局のところ端的に表現するならば息の入れ方が下手と言えるでしょう。


斎藤騎手が逃げるレースでよく見られる隊列がこれ。

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2019/6/22のレースのものですが、番手の馬が厳しくマークしてくる場合、斎藤騎手は加速→番手の馬も付いていくという展開になるため、逃げ馬+番手が離れて先頭集団、やや離れて3番手以降が第2集団を作るという隊列になり、この第2集団に有利な展開に。

ここから、冒頭にも述べた通り、時計基準ではなく隊列基準でレースを捉えており、自身の思い描く型(番手を離して逃げたい)に当てはめていることが分かります。

そのため、中距離~長距離の場合は、番手につける馬に騎乗する騎手の性格が展開を大きく左右します。

厳しくマークをする騎手の場合は共倒れまで想定できますし、逆に逃げ馬をかわいがってくれる場合は息が入れられます。

しかし、このパターンにこだわる限りは中距離以降は買いづらいというのが正直な印象です。


以上、芝での逃げパターンを見てきましたがまとめると次の通り。

・番手を離して逃げるというイメージを持って騎乗
・その際、時計基準ではなく隊列基準で捉えている
 →短距離は消耗展開になるので有利な展開になる
 →中距離以降は息が入らなくなるので苦手
  ※番手の騎手の性格が重要


3. 斎藤騎手の逃げ ~ダート編~

結論から言うと、ダートでも芝と全く同様の傾向が見られます。

まずは短距離から。

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7戦して2-2-1-2と好成績。掲示板を外したのは1度だけで、2人気ではあったが押し出せる形の2人気で、これまでの着順が4着、10着、2着、10着、11着というもので、いかにも過剰人気。消耗ペースに堪えられずに最後は失速して12着になりました。


次に中距離。

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14戦して4-1-1-8。さらに、例えば2019/8/25のレースを見てみると芝でも見られたいつもの光景が。

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このことから、芝と同様、「時計基準ではなく隊列基準でレースを捉えており、自身の思い描く型(番手を離して逃げたい)に当てはめている」と言えるでしょう。

ただし、芝の場合と違うのが中距離での成績。

芝では壊滅的だったのが、ダートになると4-1-1-8と好成績。では、芝とは何が違うのでしょうか。

一言でいってしまうと、芝とダートの適正の違いが挙げられます。

芝と違いダートの場合は基本的に前有利で、中距離でも消耗展開になることが多いのです。

そのため、ダート中距離で人気を背負うような馬(=馬柱に色がたくさんついている馬)は必然的に消耗適正が高い馬となり、厳しいペースになっても耐えられるし、むしろその方が好都合なのです。


ダートでの逃げパターンをまとめると次のようになります。

・番手を離して逃げるというイメージを持って騎乗
・その際、時計基準ではなく隊列基準で捉えている
 →短距離の場合、穴を開けることもある
 →中距離の場合、人気と着順に相関関係


4. まとめ

ここまで、芝・ダートの分析をしましたが、最後にもう一度斎藤騎手の逃げ馬に騎乗した際の特徴についてまとめておきたいと思います。

○逃げパターン
 芝、ダートともに共通
 ①番手を離して逃げるというイメージ
 ②時計基準ではなく、隊列基準で捉える

○芝
 ・短距離は買えるが、中距離以降は不安
 ・中距離以降は番手の動きに左右される

○ダート
 ・短距離は穴を開ける可能性
 ・中距離は人気馬は買えるが人気薄は軽視

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