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【第2回】新人騎手の逃げパターンを探ろう! ~菅原明良編~

2019年にデビューした新人騎手の逃げパターンを、実際に逃げたレースの分析を通じて明らかにしようという趣旨の第2回。

今回は要望の多かった菅原明良騎手を取り上げたいと思います。

なお、新人騎手のこれまでの成績は以下の通り。

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菅原騎手は17勝を挙げていますが、同じく美浦所属の小林騎手、大塚騎手と比べると勝利数は群を抜いている状態。

それでは、今回は菅原騎手の逃げパターンを探っていきたいと思います。

※第1回 団野大成騎手の記事はこちらからご覧ください。

1. 菅原明良騎手のプロフィール

2001年3月12日生まれ(18歳)で美浦・高木登厩舎所属。おじは元騎手で現調教助手の三浦堅治。デビューから通算63戦目、2019年4月20日の福島6R(4歳上500万下)を1番人気のタイキダイヤモンドで制し、JRA初勝利を挙げました。

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脚質別成績を見てみると、減量特典を活かせる分、やはり先行する競馬で好成績を残しており、特に逃げ馬に騎乗した際には単勝回収率211%、複勝回収率164%という成績。

つまり、菅原騎手が逃げ馬に騎乗した際にベタ買いしておけばそれだけでプラスになるという計算。

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なお、芝・ダート別の成績を見ると、圧倒的にダートの方が好成績。やはり、基本的に先行有利のダートの方が減量特典を活かせるので、その武器を最大限発揮できていますね。

では、芝・ダート別の逃げ馬の成績を見てみましょう。

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芝・ダートともに、逃げ馬に騎乗した際は単勝回収率が200%を越えており、非常に心強い数字。複勝回収率になると、芝は257%とさらに向上しますが、ダートは平均人気も高くなる分87%という数字。

以上、簡潔に数字の面から見た菅原騎手の買い時をまとめると、次のように言えるでしょう。

・逃げ馬に騎乗する際はベタ買いでプラス
 →芝の時は単勝・複勝ともに購入しても大幅にプラス
 →ダートの場合は単勝のみ購入がベター

続いて、芝/ダートに分けて、それぞれの逃げパターンを分析していきます。



2. 菅原騎手の逃げ ~芝編~

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菅原騎手が芝で逃げたのは全部で14レースあり、2-2-1-9という成績。

芝での逃げ方について、大まかな特徴は以下の2点。

①試行錯誤し、様々な形を試している
②短距離では消耗戦に持ち込むスタイルを確立している

まず、①試行錯誤し、様々な形を試しているという点から。

表の中で赤線を入れましたが、まずはこの赤線を境に大きく意識を変えたと思われます。

初めて逃げた2019.4.20のレースでは、福島芝2000mを12.3-11.7-11.6-12.6-13.1-12.2-11.8-12.5-12.1-12.1というラップで3着。1800mよりも直線が1F長くなるコースでテンが緩く入ることの多いレースですが、ここはテンから刻んで入っていきます。しかし、ローカル小回りで直線が短く、前有利になることの多いこのコースで、中盤13.1まで緩めてしまっており、ポジション有利の瞬発戦に持ち込んでしまいました。

続く2走目の2019.5.11新潟芝外1600mでも12.7-11.8-12.9-13.1-13.1-11.5-10.6-11.5というラップで、外回りの大きく回るコーナー部分で13.1まで減速し、瞬発戦に持ち込み敗退。

3走目は2019.5.18東京芝1400mで、12.6-11.2-10.7-11.1-11.2-12.0-11.7というラップ。テンから大外の馬が暴走気味のペースで入ったのに付き合って自滅する展開。人気薄の馬ではありましたが、菅原騎手の逃げたレースの中で最も低い着順で、実際に一番良くない騎乗。

以上3走分はお世辞にも褒められた競馬はしておりませんが、続く4走目以降、しっかりと刻むラップを踏み始めた菅原騎手。

4走目は2019.6.23函館芝1800mを12.4-11.9-12.1-12.4-12.2-12.2-12.2-12.2-12.2-12.3という厳しい並行ラップで逃げて4着。

5走目は函館芝1200mを11.9-10.6-11.3-11.7-11.9-12.8としっかり前傾ラップを刻んで12番人気の馬を3着まで持ってきました。

以降、特に7・8・11・12走目ではしっかりと刻んでおり、これらのレースに関しては着実に人気以上の着順に持ち込んでいます。

この中で注目したいのが8走目にあたる2019.7.28札幌芝2000mのレース。12.7-11.2-12.0-12.2-12.2-12.1-12.0-12.1-12.1-12.3と厳しい並行ラップを刻みましたが、スタートを決めて隊列が決まった後、後ろを振り返って後続との間合いを確認しています。

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逃げも回数をこなして間合いを確認する余裕も生まれており、成長を窺えるシーンでありました。

このように、毎回試行錯誤して騎乗している感じが見受けられる菅原騎手。騎乗を重ねるごとに上手になってきていますが、長距離のレースでは一度緩めてみたり、ワンペースで押しきろうとしていたり未だに試行錯誤して形を作れていない様子。

ですが、2019.8.11札幌芝2000mで行われたHTB賞では特別戦で斤量のハンデがもらえない中で10人気の馬を4着に持ってきており侮れない存在。しかも、このレースのラップが12.8-11.4-12.3-12.7-12.4-12.1-12.2-11.7-11.7-11.8で、テンを奪い切ってからコーナーを活用し一度息を入れて、そこから加速ラップを刻むというもので、後続の脚を消耗させるかなり強気だが良い騎乗をしており、積極的な逃げも打てていて好印象。

そして、試行錯誤の結果、自分の型を見つけた感があるのが短距離。

②短距離では消耗戦に持ち込むスタイルを確立しているの説明に移りたいと思いますが、これに関してはラップを見れば分かる通り、テンから刻んでその後も緩めることなくワンペースで逃げる展開に持ち込んでいます。

ワンペースに持ち込める2コーナーの競馬(1200m戦)に絞ると成績は5戦して1-1-1-2。いずれも人気以上の着順に持ってきています。

これだけ刻む競馬をしてくれると、どの馬も追走に脚を使う消耗戦となるので、消耗展開でも後方から上りを使える馬がいない限りは基本的に前方での決着となる展開になるため、馬券も前残りで決め打ちをすることができます。

また、高速馬場が今後も続いていくようであれば、しっかりと刻んでくれるという信頼があれば積極的に狙っていける騎手。

以上、菅原騎手の芝における逃げを見てきましたが、まとめると次のように言えるでしょう。

・経験を積むごとに試行錯誤し、成長してきている
 →長距離(4コーナーある競馬)は未だ試行錯誤の最中だが、しっかりと刻む上手な逃げも出来ており、本人が手ごたえをつかめば今後躍進する可能性を秘めている。
・短距離(2コーナーの競馬)では前傾ラップでワンペースの競馬を自身のスタイルとしており、成績も良い
 →さらに、この展開であれば消耗展開で決め打ちできるので馬券が組み立てやすい。


3. 菅原騎手の逃げ ~ダート編~

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ダートは逃げたのが17戦あって4-1-1-11という成績。分析してみると、芝と同様の傾向が見られました。

芝で積極的に消耗ペースに持ち込むようになったのが2019.6.23の函館からですが、ダートも時期的に重複が見られ、2019.6.15の函館ダート1000mを経験してから前意識が高くなったのかなという印象。

これ以前の逃げは中盤に緩みが入る展開で、脚力勝負に自ら持ち込んでしまっています。脚力勝負になれば人気通りに決着することも多く、ほとんど人気通りに持ってくるか、あるいは人気よりも下の着順になることもあった時期。

なお、2019.5.19の新潟ダ1800mは分かりやすく駄目な騎乗で、ラップが12.6-11.4-12.8-13.5-12.8-12.1-12.7-12.0-12.9。コーナーでラップが13.5まで減速したことで2番手の馬に突かれる展開に。

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これに反応して、その後12.8-12.1と加速して自滅してしまっています。

また、数字だけを見ると2019.3.31の中山ダ1200mはラップを刻んでいるようにも見えますが、同日の3歳未勝利と比較すると、1000万下の時計としては物足りなさを覚えるもの。

1000万下 :12.2-10.7-11.3-11.9-12.3-13.0
3歳未勝利:11.8-10.8-11.5-12.1-12.5-13.4

しかし、函館ダ1000mを経験して以降(赤線より上)、徐々にラップを刻むようになります。

そもそもワンターンで1000mという距離であることから速く流れるレースになるので、ここは意識して菅原騎手が強く行ったというわけではないかもしれませんが、速く入ることがレース全体に与える影響を考えるきっかけになったのかもしれません。

函館ダ1000mを2走経験した後、2019.6.30函館ダ1700mでは6.9-10.8-11.6-12.3-12.5-12.3-12.8-13.2-13.7というラップ。中盤でも大きく緩むことなく消耗戦に持ち込み、最後2Fは13.2-13.7と全体的に脚が止まる展開になっています。

もちろんコース条件が違うので単純比較はできませんが、これ以前の4コーナーの競馬のラップを見てみると違いは一目瞭然。

2019.5.19 新潟ダ1800m
12.6-11.4-12.8-13.5-12.8-12.1-12.7-12.0-12.9

2019.4.7 中山ダ1800m
12.4-11.6-12.7-13.0-13.2-12.5-13.0-13.1-13.4

中盤の緩み幅が確実に小さくなっており、函館ダ1000mという基本的には消耗戦にしかなりようのないコースを経験したことで逃げ方(・考え方)に変化が見られます。

その後のレースでは基本的に、しっかりとラップを刻んで消耗戦に持ち込む逃げを打っており、中央場に戻った2019.9.7中山ダ1800mでも12.6-12.4-13.4-13.0-12.4-12.1-12.3-12.3-13.2というラップで、コーナーで減速が入るもそこから加速を踏む消耗ラップを刻めています。

以上、ダートを見てきましたが、芝同様、函館開催を機にしっかりと消耗ペースに持ち込めるようになっており、今後ますます飛躍をしそうな気配が見受けられます。

ダートのまとめとしては簡潔にはなりますが以下の通り。

・ここ最近はしっかりと強気のラップを踏んで消耗戦に持ち込めている
 ※ただし、ダートは基本的に函館・札幌ダ1000mでの出走のため、中山ダ1200mや東京ダ1300m、1400mでどのような逃げを打ってくるのかは少し猶予をもって観察する必要あり。


最後に、芝、ダートをまとめた上での菅原騎手の印象ですが、前回取り上げた団野騎手とは違い、行くときはしっかりと行って刻んでくれる騎手という印象です。

ただし、転機が消耗戦にしかなりようのない函館ダ1000mにあり、ここで好成績を残せたので同じイメージを他のダートコース及び芝に持ち込んでいる可能性があり、ラップを刻むことがレースに与える影響をどこまで自覚しているのかが未知数。

もう少し逃げたレースのサンプルを積み重ねた上で改めて判断してみたいですね。


今回も長々と書き連ねた記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今週末には豪華なメンバーとともにWIN5に挑戦する企画もありますので、引き続きよろしくお願いします。


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