3月に浴びたエンタメをたっぷり振り返る

■2024年3月 印象に残った番組・コンテンツ・ニュース

01日 書籍『ありえない仕事術 正しい“正義”の使い方』(上出遼平)
03日 『チャンスの時間』「第3回慰問ネタグランプリ」(ABEMA)
05日 ライブ「RGが90分あるあるを歌い続け ななまがりが90分パラレルワールドから来続ける会」(ルミネtheよしもと)
05日 漫画『友達だった人』(みや)
05・12日 『ランジャタイのがんばれ地上波』「お笑い蠱毒王」(テレ朝)
07日 『バカせまい史』「ものまね王座一回戦敗退史」(フジ)
08日 鳥山明、TARAKOの訃報
08日 『ヤギと大悟』最終回(テレ東)
09日 『R-1グランプリ』(フジ)
10日 『有吉クイズ』「LINE既読クイズ」(テレ朝)
10・17日 『ガキの使いやあらへんで!』「ザコシものまねストラックアウト」(日テレ)
11日 『週刊ダウ通信』「第2の永野オーディション」(テレ朝)
11・18日 『見取り図じゃん』「魂の一曲を捧げます…ラジオネーム『過去の自分』」(テレ朝)
12日 『おげんさんのサブスク堂』(NHK)
12・19日 『午前0時の森』ゲスト・二宮和也(日テレ)
13日 『水曜日のダウンタウン』「清春の新曲、歌詞をすべて書き起こせるまで脱出できない生活」(TBS)
14日 『テレビ千鳥』「クーピーで優しい絵を描きたいんじゃ!」(テレ朝)
11~14日 『ユーミンストーリーズ』「冬の終り」(NHK)
14・21日 『アメトーーク!』「賞レース2本目やっちまった芸人」(テレ朝)
~16日 『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(フジ)
16~30日 『私が女優になる日』ゲスト・永野(TBS)
17日 ※フワちゃん、海外移住を発表
17日 『チャンスの時間』「ジム・キャリー選手権」(ABEMA)
20日 『水曜日のダウンタウン』「清春の新曲、歌詞をすべて書き起こせるまで脱出できない生活」2週目(TBS)
21日 『完全なる問題作』「キャッチャー・イン・ザ・ライ」(NHK)
22日 ※新宿アルタ 営業終了発表
22日 『アナザーストーリーズ』「木枯し紋次郎vs必殺仕掛人」(NHK)
~22日 『葬送のフリーレン』(日テレ)
23日 ※寺田農の訃報
23日 南海キャンディーズLIVE「南海キャンペーンズ」 山里亮太の日「まんざいこわい」(配信視聴)
23日 『秋山歌謡祭2024』(メ~テレ)
23日 『さんまのお笑い向上委員会』フジモン復帰(フジ)
23・24日 ライブ「THE SECOND 開幕戦ノックアウトステージ32→16」(配信視聴)
23・30日 『ゴッドタン』「この若手知ってんのか2024」(テレ東)
24日 『日向坂で会いましょう』「真剣10代なやみ場」(テレ東)
25日 ※キンタロー。が3月末で松竹芸能を退所を発表
25日 ライブ「タイマン舞台〜芸人与太郎 たじる&エレジー〜」(配信視聴)
25日 『クレイジージャーニー』丸山ゴンザレス・須賀川拓(TBS)
26日 『ランジャタイのがんばれ地上波』最終回「終王ノブ」(テレ朝)
26日 『ケの日のケケケ』(NHK)
26日 『世界の春日プロジェクト』(NHK)
27日 『有吉の壁』「アドリブ大河」「AIコント」(日テレ)
28日 ※宝塚歌劇団が全面謝罪
28日 ※尼神インターの解散を発表
28日 『ラヴィット!』(TBS)
28~30日 『若林正恭とあーだこーだ』(中京)
~28日 『勇気爆発バーンブレイバーン』(TBS)
~29日 『不適切にもほどがある』(TBS)
29日 ※「とんねるず THE LIVE」日本武道館で11月に2日間開催決定
30日 『未解決事件file10』「下山事件」(NHK)
31日 ※ハイツ友の会が解散を発表/GAGからひろゆきが脱退
31日 『鬼レンチャン』ハリウリサ(フジ)
31日 『有吉クイズ』「ローリング・クレイドル誰が1番返せるかQ」(テレ朝)

■3月のベスト

上出遼平:著『ありえない仕事術 正しい“正義”の使い方』

ものすごい読書体験だった。
もちろん、『ハイパーハードボイルドグルメリポート』の上出さんが書くのだから普通の「仕事論」ではないことは予想できました。だから、どんな“仕掛け”があるんだろうなんて考えながら、心して読もうとは思っていました。寝る前に少しずつ噛み締めながら時間をかけて読もう、と。
が、読み始めたその夜、ページをめくる手が止まらない。いや、止めてはいけないと思わせる力がありました。結局、この夜、徹夜をして320ページを超える本を一気に読み終わりました。そして完膚なきほどに打ちのめされました。その後も興奮してしばらく眠れませんでした。

(※以降、少し具体的な内容に触れます)

「はじめに」には、上出氏がこれまで何度か「仕事術」の本の執筆依頼を断っていたこと、その理由が「世に出ている『仕事術』なんて嘘ばっかりじゃないか」と思っていたからであること、本来語られるべきは「『成功』の先に『幸せ』が待っているか」なのに「『こうすればうまくいく!』と語りかけ、それによって得られる安心感に金を払わせ」る「仕事術」は、「ほとんど詐欺」ではないかと綴られています。

「にもかかわらず、今回このように『仕事術』という看板の下に筆をとったのには当然理由があります。本書を最後まで読んでいただければ、その真意をご理解いただけると信じています。少なくとも、本書には耳を塞ぎたくなるような『不都合な事実』が含まれます」

そして、「はじめに」の最後には、「仕事術」の本としてありえない注釈が付けられています。

「*これはフィクションです」

本書は2部構成。1部は「そもそも『仕事』とどう向き合うべきか」と題して、テレビマンとしての経験から得られた上出の仕事への向き合い方が具体的に綴られています。
「手に入れるべきは、幸せを感じる心の方」で「自分は競争の舞台に立ち続けたいのか、と常に自問すること」、「自分の心がいつどんな時に喜びを感じるか、具に観察する」=「欲望の整理」が重要だと説くなど、これまでの「仕事術」にはあまりない視点も多々りますが、「『世界は私に興味を持っていない』から始めよう」と題された「各論」からは、たとえば、どんなに魅力的な商品のPRをしたとしても、それを過不足なく説明しただけでは、誰も見てくれないなど、真正面からの「表現論」も語られます。
そこで有効になるのがテレビマンの考え方。なぜなら「『テレビ』の実態とは、ここをどう克服するか、という命題を七十年間考え続けた人間たちの集まり」だから。興味を持ってもらうためには「人間の欲求を直接的に刺激」して振り向かせ、「Q&A」構造で興味を持たせ続けるのが重要だと。

「あなたにも私にも、世間は一ミリも興味を持っていない。だから、人の欲望を利用する。欲望をくすぐり、振り向いてもらう。振り向いてもらったら、逃さない。そのためには問いを立てる。問われた視聴者はその答えを知るまで逃れられない。問いの罠に捕らえる。それがマス・コミュニケーションの原則的思考法だということです」

こうした「表現論」も超一級で唸るものばかり。“役に立つ”考え方も少なくありません。が、この「第1部」は本書の壮大な前フリだったということが、「第2部」を読み始めるとわかります。

本書の本筋、いわば“本編”は、「第2部」から始まるのです。
第2部は「進行中のプロジェクトを制作日誌形式で紹介」したものだと、「はじめに」で説明されています。「死」をテーマにしたドキュメンタリーシリーズ『死の肖像』にまつわる壮絶な顛末が生々しく綴られていきます。
その内容はこれ以上明かさないほうがいいと思いますが、読むと、頭をガツンと殴られたような衝撃を味わうことになるでしょう。
「仕事」とはなにか、「正義」とはなにか。
「仕事術」を装った何か別のものだと思っていたものが、まぎれもなく上出の「仕事術」を体現しているのがものすごい。そして、さらに秀逸なのが、前フリに過ぎないと思っていた「第1部」も、「第2部」を読んだ後に、さらに“効いてくる”ということです。
本書の性質上、ほとんど具体的なことは言えないので、その魅力は全然伝えられないですが、とにかく必読です!


以下、「めちゃくちゃ面白かったテレビ・配信番組5選」のことや『おっパン』×『不適切にもほどがある!』を中心に1~3月クールのドラマを振り返ったり、「顔ファン」と「ワーキャーファン」の話から、なぜか批評と是枝裕和の話に着地したり、大谷翔平と水原一平の話などをうだうだと書いています。あと、芸人にとって「スベるのが怖い」という心理についての話が別々の番組で語られているのを紹介していますが、それぞれの角度からの違いが興味深かったです。

例によってバカ長いです。
1個1個別記事にすればいいのに、っていうのは僕も思ってます…。

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