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《一》 もう、限界だった。 思い当たる節なんて、腐るほどにある。 責任の重圧や周囲との人間関係、金銭問題、自己嫌悪。無限のストレッサーに心を病んだのだろう。影太はぼんやりとした足取りで、ひび割れたアスファルトの上をさまよう。 気休め程度に着けていたイヤホンからは、適当に流したランキングトップのバラードが流れている。いやに陰気に聞こえるのは世間の流行のせいか、それとも自分の気持ちのせいか。 気がつけば手すりを越え、遠い空を眺めていた。一二月の夜風が頬を撫でる