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電力業界の今を紐解く

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電力業界の有識者に寄稿いただいた玉稿です。
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#エネルギー

第4次産業革命がもたらす未来を構想する-電化、ネットワーク融合、Vehicle to XそしてUtility3.0-

東京電力パワーグリッド株式会社取締役副社長執行役員最高技術責任者 CIGRE Japan委員長、スマートレジリエンスネットワーク代表幹事                              岡本浩 来るべき第4次産業革命がもたらす未来を構想するために、産業革命の歴史をネットワーク図(Network Diagram)で振り返ってみたい。ネットワーク図は、電化が社会に与えるインパクトを理解するのに役に立つ。 産業革命により、人類はかつてないほど大きな機械力を手に入れる

【対談】分散型電力システムの実現に向けて

岡本 浩 東京電力パワーグリッド株式会社 取締役副社長執行役員 竹内純子 U3イノベーションズ合同会社 共同代表 分散型電力システムの背景と狙い 竹内:本日は、東京電力パワーグリッド株式会社の岡本副社長をお招きし、「分散型電力システムの実現に向けて」と題して、色々とお話をお伺いしたいと思います。資源エネルギー庁は、2022年11月から「次世代の分散型電力システムに関する検討会」を開催し、2023年8月に第8回目の検討会が開催されました。早速ですが、分散型電力システムが求めら

エネルギーの分散化が創出する地域の産業革命

スマートレジリエンスネットワーク代表幹事 岡本 浩 1.産業革命の歴史とエネルギー人類が火を使い始めたのは、今から100万年以上前のことです。18世紀、ジェームズ・ワットの蒸気機関の発明により、石炭を燃やして発生する蒸気エネルギーでピストンを動かし、その力を伝えることで、人力や馬力に代わる機械が誕生しました。第一次産業革命です。しかし、燃料を燃やすと必然的にCO2が発生してしまいます。 第二次産業革

カーボンニュートラルでレジリエントな社会の実現に向けて

東京電力パワーグリッド株式会社取締役副社長執行役員技監 岡本 浩 (本記事はSTS Forumでの講演を基にしています) 日本では、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて再生可能エネルギーの大量導入を進めており、再生可能エネルギーを最大限活用する社会への移行が大きな課題となっています。 日本における太陽光発電の導入量はすでに約65GWで、米国、中国に次ぐ世界第3位の規模となりました。これは、日本の国土の狭さを考えると、非常に大きな数字です。国土を上から見ても、日本

第1回「再エネ主力電源化に向けた挑戦者たち」座談会 2021年03月15日

株式会社レノバ 代表取締役社長CEO 木南 陽介様 ネクストエナジー・アンド・リソース株式会社 代表取締役社長 伊藤 敦様 イーレックス株式会社 代表取締役社長 本名 均様 (以下、敬称略) <各位のプロフィール> 木南 陽介 Yosuke Kiminami 株式会社レノバ 代表取締役社長CEO 京都大学総合人間学部人間学科卒業 学生時代から環境に対する問題意識を持ち、環境政策論と物質環境論を学ぶ。 大学卒業後は、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパンを経て、

第2回「再エネ主力電源化に向けた挑戦者たち」座談会 2021年03月22日

自然電力株式会社 代表取締役 磯野 謙様 千葉エコ・エネルギー株式会社 代表取締役 馬上 丈司様 株式会社エネファント 代表取締役 磯﨑 顕三様 (以下、敬称略) <各位のプロフィール> 磯野 謙 Ken Isono 自然電力株式会社 代表取締役 大学卒業後、株式会社リクルートにて、広告営業を担当。その後、風力発電事業会社に転職し、全国の風力発電所の開発・建設・メンテナンス事業に従事。2011年6月自然電力(株)を設立し、代表取締役に就任。 慶應義塾大学環境情報学部卒業。

今冬の電力需給逼迫をどのように見るべきか(その1) 2021年04月15日

市村 健:エナジープールジャパン株式会社 代表取締役社長 (エネルギージャーナル社『環境とエネルギー』2021年2月18日付からの転載) コロナ禍が一向に収まらない中の年末年始から一か月にかけて、電力関係者にとっては稀に見る危機的状況が続いた。主観ではあるが、2011年東日本大震災以降では最も過酷な系統運用だったと感じている。仕事柄、各電力会社の「でんき予報」は毎日チェックするが、異変を感じたのは1月3日だった。東京電力PG管内の予備率が、正月三が日の日曜日であるにも関わら

今冬の電力需給逼迫をどのように見るべきか(その2)2021年04月16日

市村 健:エナジープールジャパン株式会社 代表取締役社長 (エネルギージャーナル社『環境とエネルギー』2021年3月4日付からの転載) 前回は、中長期的視点で今冬の電力需給逼迫を考えた。そのポイントは、欧州との比較においての三つである。第一にエネルギーセキュリティの重要性、第二にBGに対する供給義務マインドの更なる醸成、そして健全な市場構築に必要な情報公開の励行である。既に政府の審議会では様々な検証が進められているが、ここではDSR(需要側リソース)目線で、即応性のある対

第2回オークションに向けた容量市場の見直しについて(上) 2021年05月24日

戸田 直樹:U3イノベーションズ アドバイザー       東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所 1.はじめに(改めて第1回オークション結果について) 第2回メインオークションに向けた容量市場の見直し議論がこのほどまとまった(経済産業省(2021))。2020年9月に行われた第1回メインオークションの中で指摘された課題を受けての見直しである。第1回メインオークションについては、約定価格が上限価格近くの14,137円/kWとなったことが耳目を集めたこともあり、実

限界費用玉出し、容量メカニズムで誘導を 2022年04月26日

戸田 直樹:U3イノベーションズ アドバイザー       東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所 (電気新聞 2022年4月22日版 3面掲載記事を転載) 電力・ガス取引監視等委員会は21日の有識者会合で、大手電力による限界費用玉出しを適正取引ガイドラインに位置付ける方針をあらためて明示した。東京電力ホールディングス経営技術戦略研究所経営戦略調査室チーフエコノミストの戸田直樹氏は、限界費用玉出し自体は意義があると指摘する一方、それを実現する手法は規制ではなく、

3月の需給逼迫/「電源不足」の認識共有を 2022年05月14日

戸田 直樹:U3イノベーションズ アドバイザー       東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所 (電気新聞 2022年5月13日版 3面掲載記事を転載、補足のための追記あり) 内閣府の再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォースが4月25日、「2022年3月の福島沖地震による停電や需給逼迫警報を受けた提言」を公表した。関東地方の需給が逼迫した3月22日の想定最大需要を満たす供給力は「存在していた」との主張を展開した。これに対し東京電力ホールディ