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もらったギフトを次の世代へ繋げることでイノベーションは創出されていく 〜京都リサーチパーク株式会社 井上 雅登~

京都の今を生きるU35世代の価値観を集めたメディアです。
次期「京都市基本計画(2021-2025)」を出発点に、これからの京都、これからの社会を考えます。

京都からの新ビジネス、新産業創出に貢献することをミッションにおいている、京都リサーチパーク株式会社(以下、KRP)のイノベーションデザイン部の井上雅登(いのうえまさと)さん。

イノベーションが生まれる場づくりや外部と連携したイベント、プログラムの企画運営などを手掛け、これまで多くのスタートアップ支援をされてきました。そんな井上さんが大切にされている価値観「#誠実に人と向き合う」「#バトンを繋いでいく」「#助け合いながら成長していく」について迫ります。

いただいたものを分かち合うことでよりワクワクする未来を創る

───普段どういうお仕事や活動をされているのか、教えてください

井上雅登(以下、井上):新しく挑戦しようとしている人達がKRPを通して、より成長できるような場の提供や、挑戦のサポートをさせていただいています。

KRP創立前の京都には、先輩の経営者の方々が若者を応援する文化はあったものの、支援が行き届いていなかったり、足りていなかったりという状態でした。

そのような背景から、「京都からの新ビジネス、新産業創出に貢献する」というミッションのもと、様々な人の協力がありKRPが誕生しました。

多方面の方と連携を取りながら新しいプロジェクトを創出していく際に、「一緒に仕事をする相手の成功とはなにか?」「どんな未来を望んでいるのか?」といった将来図を一緒に描くことが大切だと私は考えています。

───起業支援に興味を持ったきっかけについて教えてください

井上:実際に「スタートアップ」という言葉を知ったのはKRPに入ってからでした。ですが、起業支援に興味を持ち始めたのは、新卒で入社した金融機関で、京都の中小企業の支援をしていたことがきっかけです。

当時、仕事をしている中で印象的だったのは、京都の経営者の方々が「目の前の子がどうしたら成長するのか」という目線で話してくださることでした。

ある経営者の方に車で片道2時間半かけて会いに行った際、「ここに来るまでの間なにを考えていたのか聞きたい」と言われたことがあります。正直になにも考えていなかったことを話すと、「私自身、君のことを知りたいし、君にも私のことをもっと考えてもらいたい」と言われました。
そして、次に訪ねた時に、私の話を2時間も聞いてくださったんです。

いろんな先輩方が「自分」という存在にしっかりと向き合ってくださったおかげで、成長することができました。そういった経験から、自分もずっと与えられているだけではなく、会社や誰かのためになろうと思い始め、仕事に対する意識が変わりました。
もらったものをみんなと分かち合う先に、もっと楽しい未来が待っていると思うんです。

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人に頼る力がある人が成長していく

───スタートアップが成長する上で大切なことはなんだと思いますか?

井上:自分の力だけで解決しようとするのではなく、人に頼るということです。

KRPに入社した際、医療機器を開発していたスタートアップの支援に携わらせていただきました。いろいろ私なりに手伝っていたのですが、上手く支援しきれなかったんです。

当時のことをいま振り返ると、私がもっといろんな人に頼っていればその会社には違う未来があったのではないかと考えることもあります。医療の知識がある人、医療機器に詳しい人、スタートアップ支援に長けている人……。

自分の力だけでなんとかしようとするのではなく、様々な人の手を借りることで、企業も人も成長していくんだと思うようになりました。

京都では自分だけが儲かればいいという考え方の人は少なく、どうしたらこの業界がもっと盛り上がるのかという利他的で、助けを求めたら協力してくれる人たちがたくさんいます。

こういった経験から現在は「たまり場」というイノベーションスポットを運営させていただいていて、そこではいろんな人が気軽に協力し合える環境をつくっています。

───時代が変化していく中で企業のあり方はどのように変化していくと思いますか?

井上:業界を超えて繋がり、より共創が進んでいくのではないでしょうか。

これまでは場や地域というのが狭かった分、商店街や個人同士の繋がりの密度も高かったと思うんです。

これからは、本当に大事な普遍的なものは変わらないけれど、関わってくださる方々やお客様を大切にしながら、時代に合わせて変化したり、先を見据えて仕掛けたりすることが必要になってくると思います。


───人となにかを共創していくうえで心掛けていることはありますか?

井上:相手と対等に接することです。

前職の金融機関にいた頃も感じましたが、融資する側が偉いといったことはないと思います。支援させていただけるから、金融機関も成り立っていますよね。

スタートアップの支援では指示や命令ではなく、対話をしながら本人の自発的な気づきや成長を促すメンタリングをします。偉そうにするのではなく、一緒に創っていく一員として、同じ目線で物事を見られるように、どれだけ相手の心に寄り添うことができるかを心掛けています。

目の前の人を画一的に捉えるのではなく、1人の人として誠実に捉え、この人はなにがしたいんだろう、なにが一緒にできるのかなと向き合うことが共創をしていくうえで大切だと考えます。

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これまでの人たちが紡いできたものを次世代に届けていきたい

───これまでいろいろなスタートアップの支援をされてきていますが、井上さんの今後の目標を教えてください

井上:これまで先輩からもらってきたギフトの存在を示し、そして自分も次の世代へ繋げていきたいと考えています。

実家は父で5代目の京都の化粧品屋なのですが、これまで地域の人たちに支えてもらいながら経営しているのを見てきました。
3年前に父は他界したのですが、その葬儀には1200人もの方が集まっていただいたんです。その光景を見て、父が大切にしてきたものや地域の方々で守ってきたものが、父がいなくなってから途絶えてしまうのは、なんだか違うような気がしました。

家業もそうですし、スタートアップ支援をしていても通ずることですが、誰かの想いが存在し、その想いを受け取る人が存在し、その想いを渡す人がいる。自分もこういったバトン(想い)があることを伝えていきたいですし、自分も受け取って繋いでいきたいと思うようになりました。

繋げていくうえで、バトンをバトンというかたちで受け取ってもらえるかわからないし、渡す側もバトンとして渡していないかもしれない。受け取った人の中でバトンに変わるか変わらないかは分からないですが、諦めずにやり続けたいと思っています。

また、話を今後の目標に戻すと、内省する時間を持ちたいと考えています。人と人が交わることで新しいことがうまれていきますが、仕事をしているといろんなことに意識が向いてしまうこともあります。誰かのために想いをめぐらせるためには、そもそも自分自身と対話し、自分を整えることで、やっと他者に対して意識を向けることができると思うんです。

これからも先輩方が思考錯誤しながら紡いできたバトンを次世代へ繋いでいけるように、自分自身も大切にしつつ、京都からイノベーションを起こしていけたら嬉しいです。

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<インタビューを終えて>
「相手と同じ目線に立って一緒に歩んでいきたい」と話していた井上さん。その言葉からだけでなく、真っ直ぐな眼差しを通しても熱く真剣な想いが伝わってきました。描いている未来図や葛藤まで今回お聞きすることができ、人と誠実に向き合うとはどういうことなのか私も考えさせていただくきっかけをいただけました。

KRPには井上さんのように心に寄り添ってくれる、あたたかい方がたくさんいます。ぜひ新しいイノベーションの創出をKRPと共に歩んでみてはいかがでしょうか。

今回集まった新しい価値観は3つでした。
「#誠実に人と向き合う」
「#バトンを繋いでいく」
「#助け合いながら成長していく」


<井上 雅登さんのプロフィール>
京都リサーチパーク株式会社 イノベーションデザイン部。スタートアップ支援のほか、イノベーションスポット「たまり場」の運営や、外部と連携したイベント・プログラムの企画運営などを行う。
京都生まれ京都育ちで、実家は京都で5代続く化粧品屋。

<井上雅登さん関連URL>
・京都リサーチパーク株式会社:https://www.krp.co.jp

取材・執筆:ワカモノラボ PRライター Mina Nagashima 
編集:ワカモノラボ 有馬華香
写真:其田 有輝也

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