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違和感を自分探しの出発点に〜立命館大学 / Orang Earth 髙島 千聖〜

京都の今を生きるU35世代の価値観を集めたメディアです。
次期「京都市基本計画(2021-2025)」を出発点に、これからの京都、これからの社会を考えます。

立命館大学で「地域研究学域」を専攻しながら、地域活性化事業に取り組む学生団体「Orang Earth (オランアース)」に所属されている髙島千聖(たかしま ちさと)さん。
地域に根ざし、学生と地域の方との交流の場づくりをされてきた高島さんに、活動のきっかけやご自身の変化を伺いました。

今回は、髙島さんが大事にされている価値観「#違和感をわたし探しの出発点に」「#田舎・ローカルのポテンシャルを誇りに」「#想いで繋がり続ける関係」に迫ります。


1冊の本との出会いが、違和感を出発点に変える

─── 普段されている活動について教えてください。

大学では特定の地域について地理・社会・経済など様々な角度から探求する、地域研究学域を専攻しています。
また、Orang Earthでは、京都府北部の伊根町を中心に、都会の学生を地域に招き、一緒に農作業をしたり、お祭りをお手伝いしたり、自主企画のイベントをしています。

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─── 現在の活動をされるきっかけはどのようなことだったのでしょうか。

もともと「地域」や「田舎」に興味があって、その学びを深めたくて大学を選びました。
きっかけは高校2年生の時に出会った1冊の本なんです。
社会の授業でグローバルの反対のローカルを学ぼうと、
『里山資本主義』*という本を先生が紹介してくれました。
 *『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』 
  著:藻谷浩介  出版:KADOKAWA

その本には、里山での暮らしの事例が載っていて、「お金じゃない豊かさが里山にはある」というメッセージを私は受け取りました。
間伐材でペレットを作って暖をとったり、果物をジャムにして販売することで、新たな観光地が生まれたり、年収が少なくなっても、里山にあるもので十分豊かな生活ができることを知りました。
もともと真面目に勉強だけしてきた私には衝撃的な事実でした。


成績だけではわからない「わたしらしさ」

───今の活動がアクティブな分、勉強だけされてきたというのは意外ですね。

中学校の進路相談の時、先生は私の成績を見て「国公立の学校に行きなさい」と指導してくれたんです。ですが、そこになんとも言えない違和感があって、反発したくなったんです。

なんでそう思ったのか、気になって違和感の元を辿ると、「いい大学を出て大企業に入ってお金を稼ぐ」という既存の型にはまらない生き方をしたいと思っている自分に気づいたんです。なんのためにするのかという自分の意思がなく、世間一般がよしとするレールにとりあえず乗っているようなことが嫌だったんだと思います。

───違和感から自分探しが始まったんですね。

そうなんです。でも、すぐに答えが出るわけもなく、とりあえずやらなきゃと違和感はありながらも真面目に勉強していました。

最終的には、小さな反発をしたくて、国公立でなく私立の高校に行くことにしたんですけどね(笑)。

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それからお金を稼ぐという既存の型に違和感を持った状態で、進学して出会ったのが「里山資本主義」の本です。
「お金を稼ぐことがいい」といった考え方が全てじゃないんだと、里山のような考え方があっていいんだと、一気にクリアになって、違う景色が見えたんです。

知らないだけで、宝物がたくさんある田舎

もともと、地元が京田辺市で、自然と一緒に生活していたことが田舎への愛着を持つきっかけだと思います。

ある時、毎年綺麗な花を咲かす桜の木が伐採される姿を見て、「自然を守りたい」「人間が容易く自然を壊すべきではないのでは」と、そこに生きる命が失われていくことへの、いてもたってもいられない気持ちが生まれました。
それから、里山資本主義を読んで、自然と共存した暮らしや働き方をしている人達に惹かれ、「地域」に興味を持ちました。

大学からはOrang Earthに入り活動をはじめ、田舎には都会と違う生き方・働き方があるんだと、こういう場所で生きるのもいいなと選択肢が広がりました。

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都会の人から見ると、うらやましく感じることが田舎にはある。
田舎の豊かな暮らしを、私はとても誇らしく思っています。
社会について学ぶとき、留学など外に目を向けることが多いですよね。でも、私はまずは足元の地域を、日本を見て欲しいんです。


日本の田舎・ローカルが世界のサスティナブルのスタンダードに

───確かにそうですね。もっと世界を見ろ!という大人の声も大きいように感じます。

そうですよね。ところが、世界の方が、日本をよく見ているなと思うことがあったんです。
私は、2019年にSDGsを学ぶためにシアトルに留学したのですが、そこでSDGsの先進的な取組として、日本のとある田舎での活動が紹介されていたんです。

日本の田舎には、間伐材などその地にあるもので家具や身の回りものを作ったり、生ゴミは畑に返して肥料にしたりという習慣が今も残っています。
何百年も続けられてきた田舎の暮らしの中には、自然と共存するための知恵が豊富にあって、まさに持続可能な循環になっていますよね。

さらに江戸時代まで遡ると、資源が少ない分、あらゆるものを修理して使い続けるのでほとんどゴミが出ないんです。着物はサイズアウトしたらお下がりに、そして雑巾に。今も田舎で続いていることですが、世界から見るとそれが評価されている。私はこの田舎の持つ可能性や魅力をちゃんと発信して、日本人が、そして世界が誇る日本でありたいと願っています。

だからこそ、田舎の人口が減り続けている現状を見ると、いま手をつけないと、日本のサスティナブルな文化がなくなってしまうという危機感を持ちますね。


おっちゃん・おばちゃんも一緒に挑戦

───田舎の価値を再発見し、つなげていくには現地の方との繋がりは必要不可欠ですね。

大事ですね。ただ、これまでは現地に入り込んで、泥臭く地域密着で活動していたのですが、2020年はコロナ禍の影響で現地に向かうことが難しくなってしまいました。

さらには、私は4月から社会人になるので、地域の現場からはどうしても離れてしまいます。そんな中でどのようにして繋がり続けるのか。働きながらも地域のためにどんなことができるのかを考えなければなりません。

そんな時に、ITとは無縁だったおっちゃんがZoomデビューをしてくれたり、誕生日にSNSでメッセージを送ってくれたり、地域の方々も繋がるためのアクションをしてくれたんです。地域の方も私たちとの繋がりを大事にしてくれているんだと実感できた瞬間でした。

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会いたいけど会えないという気持ちが、お互いが繋がるためのアクションに。Zoomでおしゃべりをしながら、新しいプロジェクトも生まれています。もちろん現地で会いたい気持ちはありますが、お互いが望めば、離れてもつながれると思えました。

───たとえ離れても関係が育まれているのは素敵ですね。

これからは、Orang Earth (オランアース)のWEBサイトも活用するなど、直接足を運べなくても地域と繋がり活動できるように、お互いに考え続けたいと思います。

田舎のリアルをいろんな視点で発見・発信

───最後に、本メディアは共創を目的としています。読者の方やU35世代と髙島さんが共創したいことを教えてください。

都市近郊農村にフォーカスしたプロジェクトをやりたいです!
京都は、中心部は都市化が進んでいるものの、すぐ近くには農村が残っています。そんな京北や大原など都市に近い農村での暮らしについて、昔から住まれている方だけでなく、移住者の方にも聞いてみたいです。
歴史ある京都の近郊農村に残る文化や、先ほどお話ししたような日本の田舎にある自然と共存した暮らしのリアルについて知りたい!そしてみんなに知って欲しい!
新たな京都の魅力を発見し発信する共創が生まれたら嬉しいです!

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インタビューを終えて
髙島さんのお話しを聞き終えた後、先斗町のある女将さんから教えてもらったお茶のお話を思い出しました。
それは、急須で淹れて飲むお茶とペットボトルのお茶を飲むことも、どちらもお茶を飲むという行為ですが全然違うよね。というお話。
ひと手間をかけることの意味を説いていただいたと受け取っていたのですが、
髙島さんの大事にされていることと通じるように感じます。

自分の違和感を深堀りし内なる自分に気づくこと、田舎に暮らす方々と時間をかけて関係を育むことで生まれた繋がり。どれも一夜にして生まれるものでなく、手間暇かけた本物です。これからどんな本物が髙島さんから生まれるのか楽しみです!

今回集まったU35世代の価値観は下記の3つです。

#違和感をわたし探しの出発点に
#田舎・ローカルのポテンシャルを誇りに
#想いで繋がり続ける関係

<髙島千聖さんプロフィール>
1998年生まれ。京都府京田辺市出身。立命館大学文学部地域研究学域地域観光学専攻の4回生。学生団体Orang Earthの初期メンバーで、2019年度代表。立命館学園の社会起業家支援プラットフォームRIMIXの学生スタッフ。
一般社団法人SDGs Impact Laboratoryで長期インターン中。
2021年4月からはプロフェッショナルの経験・知見で企業の経営課題を解決するコンサルタントとして働く。

<髙島さん関連URL>
■Orang Earth (オランアース)
 HP:https://orangearth01.com/


 Facebook:facebook.com/ritstango


取材・文:仲田匡志(株式会社MIYACO / フリーランス)
写真:其田 有輝也

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