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人のつながりと再生可能エネルギーを掛け合わせ、アイディアを実現する。|山東 晃大|タブロイド編集記

次期京都市基本計画を出発点として、U35世代の価値観や動きを縦横無尽に表現するタブロイド紙を3月末に発行します。
数ヶ月間の取材・編集作業を経た今、紙面には印刷されない数々の言葉が、私たちの手元に残っています。その中にも皆さんにお届けしたいお話がたくさんあり、掲載文字数に整える前の下書き原稿を、webで公開できないかと考えました。荒削りなところもあるかと思いますが、登場いただく方々にも了承をいただき、ここに掲載いたします。

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U35-KYOTO タブロイド p9-10 「Interview」下書き
京都大学経済研究所 先端政策分析研究センター 研究員 山東 晃大
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人のつながりと再生可能エネルギーを掛け合わせ、アイディアを実現する。

僕の専門は2つあります。1つは再生可能エネルギー、もう1つは、誰もやらないこと、皆が面倒くさがることをやる役割です。京都と、長崎県小浜温泉の二拠点で、研究と事業運営に取り組んでいます。

京都で研究者として取り組んできたのは、再生可能エネルギーの導入が地域経済に良い影響を与えることをデータとして可視化すること。エネルギーの分野は理系の人が多く、経済学と掛け合わせた研究は珍しいんです。再生可能エネルギーは、資源の輸入がいらず国内で生産できるので、地域経済の活性化にとても役立つことがわかってきました。

もう1つの拠点である小浜という小さな温泉街では、人と人とのつながりからワイナリーや塩づくり、地元タクシー会社などいくつか事業が始まっています。誰かのやりたいことと、誰かのできることを結ぶと、プロジェクトが生まれるんです。だから僕は、初めて人と出会った時には「やりたいこと」「できること」の2つを聞くように心がけています。

新しい事業に関わる時には、人と人をつなぐだけで終わらず、行動を起こすための地道な作業を一緒にお手伝いすることを大事にしています。たとえば、書類作りや町の人たちへの相談など。最初の動き出しは面倒なことも多いのですが、そこを乗り越えれば実現できることがたくさんある。動き出せばまた新しい仲間が見つかることもあります。小浜温泉は今、良い循環が生まれている実感があります。地方のまちでは、長く続く人間関係の中で変化を起こしづらいこともあると思いますが、そんな時こそ自由にいろんな人と話すことができる移住者の出番です。丁寧に対話をしないと余計にうまくいかないこともあるので、時間はかかりますが、そんなやりとりも含めて楽しんでいます。

京都は人も文化も豊富なので、新しい挑戦を応援する文化と仕組みさえできれば、意義のある取組が勝手にどんどん生まれていくと思います。そういう場からは楽しみがにじみ出るんですよね。意識して発信しなくても自然と人が集まってくる。そんな広がりのある場を増やすことこそが、僕が一番やりたいことなんです。

これまで、失敗もたくさんしてきました。たとえば、温泉熱を利用した養殖をしようとした時は、技術的には成功したけれど、設備をそろえる資金がなくて事業化はできませんでした。でもその失敗が5年を経て、ある人との出会いから再始動しています。また、2014年から小浜で実現したいことのアイディアをメモし続けているのですが、最近その数が800を超えました。まだまだこれから、やりたいことがたくさんあります。

研究者にも色々なタイプがいるのですが、僕は自分の研究を社会に還元したいという思いをずっと持っています。そのためには自分も社会の中で実践をしないと説得力がないと思い、事業運営にも携わり始めました。コンサルティングのように外から関わるのではなく、自分もリスクを負いながら腰を据えて関わることが重要だと思います。

この1年で日本の脱炭素の取組は大きく加速し、今、再生可能エネルギーの分野はとても盛り上がっています。京都は大規模な工場が少なく、脱炭素を進めやすい環境です。人のつながりを大事にしながら、率先して脱炭素の取り組みを進めていきたいですね。

京都大学経済研究所 先端政策分析研究センター 研究員
山東 晃大

京都大学で、地域経済学の視点から再生可能エネルギーを研究。長崎県にも拠点を置き、地熱を利用した事業を多数手がける。
http://www.caps.kier.kyoto-u.ac.jp/


タブロイド制作チーム:柴田 明、原田 岳、前田 展広、山本 安佳里
文:柴田 明
https://u35.kyoto/

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