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遊ぶように働き、働きながら遊ぶ。|近藤 令子|タブロイド編集記

次期京都市基本計画を出発点として、U35世代の価値観や動きを縦横無尽に表現するタブロイド紙を3月末に発行します。数ヶ月間の取材・編集作業を経た今、紙面には印刷されない数々の言葉が、私たちの手元に残っています。その中にも皆さんにお届けしたいお話がたくさんあり、掲載文字数に整える前の下書き原稿や寄稿いただいた全文を、webで公開できないかと考えました。今回は、450文字の枠に2000字を超える熱いメッセージを寄せてくださった近藤 令子さん。ご本人に了承をいただき、ここに掲載いたします。

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U35-KYOTO タブロイド p12 「Message」寄稿全文
Voice4u株式会社 取締役 近藤 令子
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遊ぶように働き、働きながら遊ぶ。

生まれてからずっと大阪で暮らしていましたが、27才のとき一念発起して同志社大に入り直し、京都に単身移住しました。京都に来た理由は、古さと新しさが入り混じる街の良さと、鴨川を中心とする美しい風景、何よりも面白いことをしたい人が世代や肩書きを超えて集まり活動するイノベーティブな空気を感じ取ったからです。

当時は自転車業界のライター&レースアナウンサーという特殊な仕事をしていたのですが、京都は自転車で走り回りやすい街としてもピカイチですよね。そんな京都の多面的な魅力を感じて大阪から移住し、途中で東京やシリコンバレーにも行きましたが、気付けばこの地に戻り、京都歴が四半世紀近くになりました。

移住してきた1997年は、インターネットが大学で本格的に利用され始めた時期でした。あらゆる情報を取得でき、様々な人と交流できるネットの面白さに魅せられました。同時期に出会った京大生のパートナーがウェブサービスの会社「はてな」を立ち上げ、私は創業メンバーとして「はてなブログ」や「はてなブックマーク」など数々のサービスを世に送り出すために仲間と共に奮闘しました。

起業した場所は京都リサーチパーク。スーツ姿のビジネスマンがひしめくなか、TシャツとジーンズでPCに向かう粗野な私たちのことを、京都リサーチパークの人たちは親身になって応援してくださって、売上がなく困窮したときには一緒にビラ配りまでしてくれました。「はてな」なんて変な名前の会社をやっている世間知らずの若者たちをなんであんなに親切にしてくれたのか、当時はそれこそ「?」でした(笑)。

けれども今になればよく分かります。京都には、新しい価値を生み出そうと挑戦する若者を応援する気風があり、昔からベンチャーを生み育てる土壌があったのです。

はてな初期メンバーの多くが京都の学生もしくはOBで、当時は仕事というよりも遊んでいる感覚でウェブサービスを作っていました。ゼロから新しい仕組みを作り、使って喜んでくれる人が増えるたびに幸せを感じる、その楽しさがベースにあり、「働かねばならない」という意識はありませんでした。

この冊子のテーマは「遊」ということですが、まさに私たちはインターネットの黎明期に「遊ぶように働き、働きながら遊んでいた」といえます。

皆さんも感じていると思いますが、自分が心底やりたい、楽しいと思うことでなければ、頑張れませんよね。仕事だからってお金のために我慢するとか、他に就職先がないから妥協する、というのでは人生、面白くないはずです。

私は2013年にはてなを卒業し、2018年からシリコンバレー在住の仲間と共に第二の起業人生を歩んでいます。今の会社では、自閉症や発達障害など、言葉でコミュニケーションできない人のためのコミュニケーションアプリ「Voice4u」の開発販売、インターネットを活用したマーケティング支援や広報支援サービスを提供しています。メンバーはOVER-35ばかりですが(笑)、今も「遊ぶように働く」というスタンスは変わっていません。

最近は、自分より若い人から「会いたい」と言われたら絶対に断らないようにしています。だって発想が柔軟ですし、別の視点から今の社会を生き抜くヒントを与えてくれるからです。私は若い人に対して「教え導く」のではなく、常に「一緒に知恵を出し合う」つもりで接しています。おかげで、たくさんのU-35の友人がいます。

コロナ禍で将来が不安な今ですが、だからこそ何に対して自分がワクワクするのか、体験できることはどんどん体験してみて、自分の直感を信じて動いてほしいです。もし自分にアイデアがなくても、動いていれば自分を求めてくれる他者との出会いが出てくるはずです。

「コンステレーション(constellation)」という言葉は星座を意味しますが、ユング心理学の用語としても使われています。一見、意味のないような経験や人との出会いの数々が、いつの間にか自分にとって重要な意味となって立ち現れてくることをいうそうです。まさに星座ですね。一つ一つに明確な意味がなくても、目の前のことにワクワクして取り組んでいれば、いつか経験してきたことそれぞれがまとまった意味となり形となり自分らしさを作り上げるのではないでしょうか。

私もパートナーとの出会いがなければ、はてな創業メンバーにはなっていませんでした。人間は1人では幸せになれません。ぜひ仲間との出会いも自分の自己成長のエンジンだと思って、動いてみてください。それが将来、自分自身を形作る礎になるはずです。

年功序列社会や終身雇用の時代は確実に終わりを迎えようとしています。モーレツに働く昭和平成の時代も終わりです。一緒に遊ぶように働き、京都を盛り上げましょう。

Voice4u株式会社 取締役 近藤 令子
大阪府堺市出身。インターネット企業株式会社はてな創業メンバー(2001年京都にて創業、2016年東証マザーズ上場)。同社の立ち上げと成長に寄与すると共に、日本のスタートアップ文化の礎につながる数々のユニークな施策の実現に尽力。2018年春、シリコンバレー在住の仲間と共にVoice4u株式会社を京都で設立。日米をオンラインでつなぎ、自閉症や言葉の話せない人のコミュニケーション支援アプリ「Voice4u」の開発・販売、デジタルマーケティングコンサルティング事業を展開。Voice4uアプリは現在、コロナ社会に対応するためにアップデート準備中。現在、京都とシリコンバレーの二拠点からグローバルな展開を目指しながら、若者の起業や女性の自立をサポートするメンタリング活動にも尽力している。
https://voice4u.jp/


タブロイド制作チーム:柴田 明、原田 岳、前田 展広、山本 安佳里
https://u35.kyoto/

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