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映画「ザ・コントラクター」、小説「クイーンズ・ギャンビット」のこと、東京競馬場、新宿御苑など、

10月×日
東京競馬場
この間行ったばかりだが、今年競馬場に行けるのはこれが最後になりそうなので行くことにした。

天気が良くて気持ちが良かった。

1~5Rまでやって帰る。

これはサラブレッドではなく、馬車を引く馬。
たてがみがオシャレ。

10月×日
新宿バルト9で「ザ・コントラクター」(タリク・サレー監督)
軍の特殊部隊を除隊(クビ)になってしまった主人公は民間の軍事組織で働くことになる。そこである任務に就いた主人公に思わぬ試練が・・・、そこにはある陰謀が隠されていたのだった、って感じの話。
最後まで緊張感が途切れず、楽しんで観ることができたのだが、なにか物足りない。
ネットで他の人の映画の感想を見た時に、映画の内容に対して「ちょっと説明不足」なんて言っている人がよくいるが、それにはほとんど共感したことがない。
「いや全然説明不足じゃないだろ、そんなになんでもかんでも説明してほしいのか?」と思うことがほとんどだ。
ただこの「ザ・コントラクター」に対しては「うーん、ちょっと説明不足かな」と思うところも。
全体が説明不足と言うのではなく、丁寧に描くところと省略するところ、リアリティを追求するところとリアリティを犠牲にして話の進み方を優先するところ、のバランスが上手く取れていないような感じがした。

映画を観た後、紀伊国屋書店で新潮文庫「クイーンズ・ギャンビット」購入。
この間、ウォルター・テヴィスの「地球に落ちて来た男」のことをnoteに書いた時に、彼の4つ目の長編である「クイーンズ・ギャンビット」が邦訳されていることを初めて知った。ネットフリックスでドラマ化されていたことも知らなかった。
文庫本を見つけて表紙を見て、あ、これ「ナイト・イン・ソーホー」の人だな、と思う。

印象的な顔立ち。


その後もう一件新宿で所用があったのだが、それまでに2時間ほど時間があいてしまった。
映画を観るにはちょっと短いし、喫茶店とかで時間をつぶすにはちょっと長い。
ということで、天気も良かったので新宿御苑へ。
年間パスポートを持っているので、こういう時便利。

公園のベンチに座って本を読むなんて、しゃらくさい/恥ずかしい、と思ってこれまでやったことがなかったのだが、生まれて初めて公園のベンチに座って本を読む、ということをしてみた。
なかなか悪くなかった。
年を取って良いことがあるとすれば、若い頃のどうでもいいようなこだわりを捨てられる、ということかもしれない。
ただ年を取ると、人間として持っておいた方がいいこだわりも捨ててしまう危険がある気がする(悪い例を何人か思いつく)のでそれには注意したいもの。

三分の一ほど読み進めたところで日が陰って寒くなってきたので切り上げる。
途中で切り上げるのが惜しいほど面白い。

10月×日
体調が悪く、仕事から帰ると食事もせずに横になって本を読んで過ごす。
そのおかげで「クイーンズ・ギャンビット」を読了することが出来た。
チェスの天才少女の話で、チェスの対局の場面が大きな比重を占めているのだが、こちらはチェスのことをほとんど知らないのに問題なく面白く読めるのがすごい。

物語自体は割と直線的。
両親を亡くして孤児院に入った少女ベス・ハーモンがチェスの才能を開花させ、全米チャンピオンになり、世界最強のロシアのチェスプレイヤーと対戦するまでが描かれる。
下手をするとふくらみのない単調な話になりそうだが、主人公のベスを含めて登場人物たちが、「キャラ」みたいなところに落し込まれず、重層的に描かれているので物語にも奥行きが感じられる。
特に孤児院で友人となる黒人の少女ジョリーンと、ベスを孤児院から引き取って養母になるウィートリー夫人という人が印象的だった。

印象に残ったシーン。
主人公のベスがチェスの大会で手痛い負けを喫した後の、悔しさでいっぱいのベスと、なぐさめようとするウィートリー夫人の会話。

「彼がやろうとしていたことが見えてなかった」。ベスはベニーのクイーンが彼女のポーンを取った一手を頭の中に描きながら言った。まるで痛む歯に舌を押し当てるみたいだった。
「全部うまくやるなんて無理よ」と夫人は言った。「そんなことできる人はいないわ」
ベスは彼女を見た。「チェスのことなんて何も知らないくせに」
「でも、負けるのがどんな気分かっていうことはわかる」
「そうでしょうね」。ベスはできるだけ意地悪く言った。「きっとわかるんでしょうね」
ウィートリー夫人は何かを深く考えるようにベスを静かに見つめた。そしてやさしく言った。「今ならあなたもわかるでしょう」


ウォルター・テヴィスの本はまだ長編2冊「地球に落ちて来た男」と「クイーンズ・ギャンビット」、それから唯一の短編集「ふるさと遠く」しか読んでいないが、やはり面白い作家だとあらためて思った。
まだ読んでいない長編のうち、「ハスラー」「ハスラー2」「モッキンバード」の3冊は、かなり前に日本語訳が出ているので、古本とかを探せば手に入るかもしれないが、ウォルター・テヴィスが残した6冊の長編小説のうち、唯一まだ翻訳されたことのない「The Steps of the Sun」 の日本語訳もどこかで出してくれないだろうか。
「ハイ・テクノロジーの進歩とは裏腹にエネルギーが枯渇してしまった二十一世紀を舞台にしています。アメリカは没落し、中国が栄える2063年、ニューヨークに住む資産家で初老の主人公は、私財を投げうち、中国製宇宙船でエネルギー資源を求め、宇宙に飛びだしてゆくというテヴィスにしては珍しく宇宙を舞台にしたストーリー」(「ふるさと遠く」解説より)ということで、なんとなく失敗作っぽい匂いがしなくもないがぜひ読んでみたい。

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