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映画「EO」のこと、東京都美術館「マティス展」のことなど、

5月×日
ヒューマントラストシネマ渋谷で「EO」(イエジー・スコリモフスキ監督)

人間の都合であっちこっちへ連れていかれるロバの名前がEO(イーオー)。
この放浪するロバを中心に置いて、それに関わる人間たちの生の断片が描かれる。

この監督の名前は知っていたけれど観るのは初めて。
なんとなく、余計なものを削ぎ落したシンプルな映画を想像していたのだが、けっこうケレン味あふれる、というか、案外いろいろゴテゴテしてたな、という印象。
とは言っても忘れがたいイメージがいくつもあり、楽しめた。

ただ、ロバに感情移入させるような撮り方をしていると感じられるシーンが(少しだが)あって、それは余計だったんじゃないか、もっと突き放した描き方の方がこの話には合っていたんじゃないかな、とは思った。

最後の方にかなりの年配だが美しい婦人が出て来て、誰かと思ったらイザベル・ユペールだった。
「主婦マリーがしたこと」が今から35年前。
「EO」を撮った時は69歳か・・・素晴らしい。

5月×日
長野県中野市の立てこもり事件。

殺人の動機が、
「ひとりぼっち、と馬鹿にされたと思ったから」
というのはなんとも悲しい。

もちろん、擁護するつもりも同情する気持ちもまったく無い。
だいたいそれが本当の動機なのかもわからないし、そもそも馬鹿にされたなんて事実は無かったのかもしれない。
ただ、それはそれとして、4人の人間を冷酷に殺した犯人がまず語った動機が、金銭トラブルでも痴情のもつれでも、世の中への呪詛でもなく、
「ひとりぼっち、と馬鹿にされたと思ったから」
というのは、なにかひどく悲しい。

5月×日
東京都美術館で「マティス展」

3つあるフロアのうち、真ん中のフロアだけが写真撮影可だった。

有名な画家の中でも、どこが良いのか今ひとつピンと来ない人の一人。ただ、今までこの人の絵をまとめて見る機会がなかったので、もしかしたら何かピンと来るかもと思って行ってみた。

別につまらない絵だとは思わないし、ちょっと面白いな、という絵もあったけれど、やっぱりあんまりピンと来ないな、という感想。

どうやらこの「近代美術を代表する巨人」であり、「モダンアートの誕生に決定的な役割を果たした彼」の芸術に反応する感性が自分には無いらしい。

この左側の「赤の大きな室内」という絵はちょっと好きだった。

自分にはわからない事、というのはいくらでもあるのだし、「ああ、自分にはこれはわからないんだ」ということがわかっただけでも意味があるとは思うのだが、それがわかるための授業料が2200円、というのはちょっと高すぎたかな(貧乏性)。

不忍池はこんな感じだった。
もうちょっとすると水が見えないくらい蓮の葉で埋め尽くされる。

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