Jason Isbell 来日公演レポート

2020/01/13 2nd
Billboard Live Tokyo

Jason Isbell & Amanda Shires

結論から言えば素晴らしい内容で、彼らの実力からすれば当然かもしれないけど、いきなり今年の最優秀ライヴ候補だし、大袈裟に書けば恐らく一生忘れない公演だったと思う。

私的にもJason Isbellのソロ名義作『Southeastern』(2013) と『Something More Than Free』(2015)には特に深い感銘を受けており、1歳違いのほぼ同世代の人間として、彼の描く物語や、生き様そのものにも自分自身を託すようなところもあった。

米本国ではしっかりとした高い評価を受けており、2015年作で遂にグラミーを受賞したときは、やっと広く認められたのだなと納得すると同時に、これで来日公演の夢は潰えたかな…と勝手に決めつけてしまっていた。

なので今回、このところ活動の中心となっていたバンド名義ではなく、公私ともに渡るパートナーであるAmanda Shiresと2人だけでとはいえ、初来日が決定と知ったときは一瞬受け止めきれなかった。しかし、本国ではこの2人だけでも大きい会場を埋めていたようだし、より貴重な体験をできたとも言えるだろう。

僕が観たのは、遅い時間の第2部。予定の19:30を少し回ったぐらいに、2人が登場。Jason Isbellはシャツにジーンズ、足元はスニーカーという飾らない出で立ち。おもむろに弾き始めたアクースティック・ギターの音色はなんだかキラキラと綺麗で、そこから全て自作曲で歌い継がれる、90分近いステージに引き込まれっぱなしだった。

前述のソロ作からはもちろん、映画『アリー / スター誕生』(2018、原題:”A Star Is Born”)に提供した楽曲や、嬉しいことに制作中の新作からも披露してくれた。
ギターはもう1本置いてあったが、最後の方に1曲のみ取り替えただけだったかな。
Amandaは「ときおりフィドル、ときおりヴァイオリン」で、低音を響かせたり、かなり思い切った演奏もあった。長く一緒に演奏しているだけあって的確にコーラスを付けていき、1曲のみだが彼女自身のソロ作から歌っていた。

↓手書きで恐縮ながら、分かる範囲で当日の曲目。

Jasonは南部アラバマの出身で、ロックやカントリーだけでなく、ソウルを中心としたブラックミュージックもごく自然に吸収していたはずで、その渾然一体となったところが他のシンガーソングライターと違うのかもしれない。
とにかく楽曲の素晴らしさは群を抜いているし、まだしばらく黄金期は続きそうな予感がする。

最後に少し厳しいことを敢えて付け加えると、お客さんの数は寂しい限りだった。
おこがましいのは百も承知で書くと、曲がりなりにも音楽を紹介する側の端くれの端くれとして、反省とまでいかなくても自覚ぐらいは持たないと、いよいよ洋楽市場も尻すぼみになっていくなぁと思ってしまった。そのぐらいの危機感は常にどこかで持っていないとね…。

ともあれ、来日が実現したのも事実だし、Jasonも「ギターを手にしたときから日本で演奏するのが夢だった」とも言っていたので、次回はバンドと共に来日ツアーしてくれるのを信じたい。
まずは引き続きDave Cobbがプロデュースを手がける新作を心待ちにしている。

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