「ついやってしまう体験のつくりかた」を読んで 第一章〜第二章

第一章

・人は常に何かを知りたがってるし、自分の身に付けた知識やこれまでの記憶の正しさを証明したがっている

・なので人は自動的に仮説→施行のプロセスを行ってしまう。つまり勝手に問題を解いてしまう。仮説が実証された時、つまり解いた答えがあっていたとき人は快感を得る。

・ただし対峙した問いが難解すぎると思考がストップし人は不快になる。

ex. 1+1 = ? 32157÷27 = ?

前者は勝手に解いてしまうけど後者は相当な数学マニアでない限り解く気にはならないはず。

なので直感的にわかる!できる!というメッセージや問いを伝えることが最も重要。

ex.スーパーマリオ1-1 背景やマリオの向きや立ち位置を利用して「右に進むはず」というメッセージを伝えている。そして敵キャラクリボーやブロックを出現させることで、「右に進むはず」という仮説を実証してあげる

・一方でユーザーが身に付けた知識や経験、いわゆる記憶を肯定する体験をデザインする時には注意が必要。

ex.ゼルダの伝説 時のオカリナにおいて、木の棒に火をつけて行く手を阻む蜘蛛の巣を燃やすという謎解き。これはユーザーが「木の棒は燃える」ということを知っていることが前提。

・上記の例のように作成者とユーザーの認知に齟齬があるとウケない。なのでユーザーを知って「わかる」体験を当てることが製品の質や正しさを高めるよりも重要なことである。

・これらのメッセージを伝えるには、製品を使用し始めた冒頭が良い。初頭効果を利用してユーザーが集中している間に覚えてもらう。

要するに脳と心の性質と共通の記憶を利用して、「仮説→施工→歓喜」というシンプルで簡単な体験を直感させるのが、直感のデザイン

第二章


ドラクエに「ぱふぱふ」がある理由

・ドラクエ1では最初の王様の部屋で多くのコマンドをプレイヤーに理解してもらわないといけない。なので部屋には鍵がかかっていて、全てのコマンド使いこなせないと部屋から出れないというデザイン

・ドラクエはそんな数々の「仮説→施行」のプロセスを行いながらストーリーが進んでいく。第一章ではメリットを伝えたが当然デメリットもある。

・それは「疲れと飽き」が来てしまうこと

・「仮説→施行」のプロセスは不安→喜びを反復横跳びさせる。当然それは人を疲れさせる。そして同じ刺激を繰り返すことは慣れも生じさせる

・これは脳の機能的として、自らの生命を守るために未来を予想しようとする。なので直感のデザインで予想を当てられた時は快感を感じる。

・しかしそれが続くと、脳は勝手に学習が不要と判断し飽きを生じさせてしまう。

・このちょうど脳が疲れてきていたり、慣れてきているタイミングで敢えて予想を外させることで再度脳を活性化させ興奮させることが有効である。

・つまりこれまでとてもシリアスは冒険世界での物語を進めてきて、プレイヤーの中で世界観が固まり始めたタイミング、疲れや飽きがちょうど発生しそうなタイミングで「ぱふぱふ」のような裏切りを置いておくことがデザインとしても有効なのである

・「ぱふぱふ」であることにも意味がある。人は勝手に変わらない日常がこれからもずっと続くと信じ込んでいる。ぱふぱふのような性的演出のことを、我々は勝手に日常の平穏な生活に登場しないのが当たり前だと思い込んでいる(今日ぱふぱふしてくれるお姉さんが現れるはず!と思って生きている人はいない。登場したら誰もが度肝を抜かれる)

タブーという便利な存在

・こういった日常生活に登場してはいけないと思い込んでしまっているものを、タブーと呼び裏切りを発生させるには宝の山である。

・このゲームの前提への思い込みとタブーへの思い込みを上手く利用して見事な裏切りを見せているのが「ぱふぱふ」というわけで、だからこそ誰もが知っている存在へとなれたのである

・裏切りを上手く使うことで、疲れや飽きを拭い去りより没入させたり、長時間の体験をもたらすことができる。ただし手順がかなり面倒。

①疲れや飽きのタイミングを見極める

②誤解へ導く世界観を事前に構築する

③誤解が露呈する演出をデザインする

・②の難易度がかなり高く、長い時間をかけて誤解させる世界観を伝え続けないと人は信じない。もちろんその過程で疲れと飽きは避けられないし、思い込みを何度も裏切ることは難しい。

・なのでタブーを用いて思い込みを覆す方法がコスパが良い。驚きは小さくなるが、確実に疲れと飽きを手軽に軽減してくれる方法だからである。

・タブーにはポジティブなものとネガティブなものがある。要約すると「その体験は人間が本能的に欲するものを描いているか?」or「その体験は目を背けたくなるものを描いているか?」

上の画像がポジティブ群タブー、下の画像がネガティブ群タブー

画像1

画像2

ドラクエ4が用いた「確率」という存在

・社会現象とまでになったドラクエ4では、8人ものプレイヤーが操作でき、ゲームも第一章から第五章までに分けられた

・当然強力な疲れと飽きと戦わなければいけないわけだが、ドラクエ4が使ったのは「カジノ」である

・今にも世界が魔王に滅ぼされようとしているシリアスな世界にあえてカジノという娯楽の代表格を置くことでまたもや世界観を裏切ってみせた。

・それだけではなく、カジノの賞品として強力な武器や防具を用意した。今まではコツコツとモンスターを倒しお金を貯めてなければいけなかったが、あえてそれを裏切った。

・努力を重ねて学びながら冒険したプレイヤーの真面目さをカジノは意図的に奪ったのである。真面目さゆえの疲れや飽きを拭い去るため、あえて冒険を一時停止させる体験をデザインした。

・もちろんいつかは本筋に戻ってもらわないといけないため、賞品を武器や防具にしている。

・すっかり遊んでスッキリした上に、しかも手元には強力な武器がある。そんな状況を作ることでプレイヤーが自然と冒険に旅立つように仕組んでいる。

・ゲームだからこそ適度な確率でカジノでプレイヤーに勝たせて、気持ちよく冒険へと送り出してくれているのである。

・同様に「かいしんのいちげき」を数%の確率で出現させ、強敵にも大ダメージを与え一発逆転をさせる。戦闘シーンにもこのような確率の裏切りを配分することで疲れや飽きを拭い去ろうとしている。

画像3

・これが9つ目のタブー。「その体験はユーザーに何かを賭けさせ祈らせているか?」

最後のタブー

・ドラクエが伝説になっている大きな理由の1つがこの最後のタブーである

・それは「プライベートのタブー」というもの、

・ドラクエは最初に必ず主人公の名前を自分で名付けないといけない。

・また屈指の名作ドラクエ5では、かの有名な結婚イベントがあり、ビアンカかフローラどちらかを選び嫁にしなければならない。これに至っては未だに至るところで議論されているほどに社会に影響を与えた強烈な印象となっている

・どちらも自分個人のセンスだったり、女性の好みが思いっきり出てしまうものである。

・これはプレイヤーのプライベートな部分をとことん引きずり出す。これもタブーの1つで平穏な日常を過ごすために人は自分のプライベートな部分を隠して過ごしている。プライベートな部分は隠さないといけないと思い込んでいるのである。だからこそこの体験は強烈なものとなった。

・要約すると「その体験は性格が出るか?」

画像4

この章を要約すると「人間が本能的に欲するものや目を背けたくなるものを描きながら、プレイヤーに何かを賭けさせ、祈らせ、プレイヤーの性格が出てしまうように仕向ける」そんな体験デザインで疲れや飽きを払拭させることで、ユーザーをさらなる体験へ導くことができる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?