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【初学者向け】教科書に載ってない肩関節可動域のこと



はじめに

関節可動域は最も基本的な検査法の1つです。
医療系の学校では基本的な検査法と参考可動域について習いますが、詳しく習うわけではありません。可動域に関する情報は、読みきれないほど膨大で集めるのも読むのにも苦労します。

ここでは特に肩の可動域の改善を治療の目標の一つに加えるときに、考慮しなければならないいくつかの因子を紹介します。
これは学校で習わないことも多く、しかし臨床上重要なことです。

シリーズの紹介

本記事は「ストレッチ・可動域」シリーズです。このシリーズでは一般によく使われているストレッチや可動域についてかなり深くまで掘り下げていきます。
本記事である「【初学者向け】教科書に載ってない肩関節可動域のこと」は肩の可動域に関する記事のうち、1つ目で、比較的初学者向けになっています。

本記事では可動域検査などの学校で習うことは既に覚えていることを前提にもう少し深く考えるために必要な知識を紹介していきます。
主な内容は目次をご覧ください。
今後執筆予定の「【中級者向け】教科書に載ってない肩関節可動域のこと」ではさらに専門性の高いことを紹介していく予定です。【初学者向け】と【中級者向け】を分けたのは、【中級者向け】に出てくる専門用語(例えばSEM, Reliability, ICC, MDCなど)が基本的に学校で習うものではなく、初学者にとって敷居が高いからです。もしこれらの用語を聞いたことがなく、さらに臨床レベルを上げたい方は【中級者向け】も読んでみてください。
※【初学者向け】と【中級者向け】は全く異なる内容にする予定です。

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検査肢位が可動域に及ぼす影響

肢位が変われば可動域も変わることは多くの人が知っていると思いますが、実際どれだけ影響するかはあまり知られていないように見えます。

猫背の影響

Kebaetseらは体幹を直立させた座位と猫背の座位で可動域に違いがあるか調査しました[12]。
その結果、猫背の座位では、能動的肩外転可動域が平均23.6度減少しました。また可動域ではありませんが、筋力は16.2%減少しました。

この結果は可動域測定時の脊柱の矢上面上の変化が可動域に大きな影響を持っていることを意味しており、医療者が測定時に注意を向ける必要があります。可動域と年齢については後述しますが、通常高齢者の方が猫背姿勢である可能性が高く、高齢者の外転可動域減少に寄与していると考えられます。

仰臥位と座位、可動域がより大きいのは?

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