河童20

真剣に話している幼き年寄り。
話を聞くべき男からは、
「ぐー」寝息が聞こえる。

「ダメだよおじさん。しっかり見てよ」
身体を揺らす。
「あ、みてる見てる。」
今度はしっかりと身体をおこし、身をのり出すそぶりで、指の指し示すほうを見ていた。
「なにもないぞ」
幼き年寄りの目にも見えず、気配も感じない
「あ、消えちゃったよ。あそこに変な人がいたんだ。」
「ひと。・・・見間違えだ。」男は首の凝りを片手で揉みほぐしながら、
「もののけだろう。もののけが出たんだ。この辺りじゃよくあることだ。」
男は楽しそうに言う。
「よくでるの。」
「うん、でるぞ。よくうろついている。」
男は笑いながら、
「子ども、今度はお前が寝ろ。疲れただろう。迎えがきたら起こしてやる。」

本来なら眠たくてたまらないはずが、「もののけ」が、「よく出る」と、聞いては、好奇心が眠気に勝ってしまう。
「おじさん。どんなもののけが出るの。教えておくれよ。子どもだから見たことがないんだ。おじさん山によくはいるんでしょ、今までいっぱい見たの、もののけに出会って恐ろしさに泣いたこともあるの。ねぇ、おじさん教えておくれよ。」

幼き好奇心がとまらない。

男も怖がるだろうと、からかってみたが、待ってましたとばかりに好奇心と共にぶつかってくる子どもに手をやきはじめた。

考えてみればなるはほど。
こんな夜中のこの場所に、置いていかれるだけの性根の子ども。その辺りの童とは、肝っ魂が違うようだ。

男も山に暮らす男。少々胆もすわっている。おとこは恐れ震えるどころか、目を爛々と輝かす子どもに興味をおぼえたのか、自らが幼き頃に話し聞かされたほら話に尾ひれをつけて話して聞かせた。

幼き年寄りは飽きることなく目を輝かす。男の方が疲れ話しもつきてくる。

「こども、寝ろ。夜ふかしは身体に毒だ。山の子達が連れにくるぞ。」

「・・山の子たち・・・。」
不安と更なる興味に目を輝かす。
男は迂闊なことを云ってしまったと後悔する。
「いいから寝ろ。」
男が言うと、
「おじさんそれを教えてくれたら寝るよ。そうじゃなきゃ、気になって眠れないよ。」
不安気な目を、眠たさと見た男は、
「じゃ、話して聞かせるから目を閉じて聞け。」

男が話し始めた。
幼き年寄りは身体を横たえ、話を聞いた。しかし、目を閉じる気に離れない。

男は話し好きな性根なのか、舌は好調にほら話をかたる。

「ようするにだ。カッパだな。」

自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!