河童1
血生臭い怠慢
天下分け目の戦から幾日過ぎたか空の下。
天高く流れる雲は、世の中の流れを関東平野へと移してゆく。この雨の夕暮れ時にも今、天下を手に入れたものが逃げ延びたものを出さないようにと馬で駆け巡る。
鉛色の小雨が降る夕暮れ時、ここにも血生ぐさい無骨な者たちがやってくる。
『何者だ。こんな村外れの社で何をしておる。…宿なしの坊主か』
古びた社に人の気を感じとり、「大坂方か」と汗くさい体で怒鳴り飛び込んでくる勝者方の武士。
社の中で驚き見つめ返してくる坊主に『坊主が社で一夜の宿か』
一人を馬に残し、二人が手入れはされている小さな社の中を見回す。
『…もしやと思うが、大阪方を匿うことは・・・。』
汗くさい匂いをまき散らしながら、泥の付いた足で社の中を歩き回る。小さな社、見た目に怪しいところもなく、手間がかかるわけでもなく、
『坊主、わかっておるだろうが、隠し立てはするな』
今一度当たりを見回し汚した床も拭かず戸も閉めず。馬に跨り小雨の中を西へと駆けてゆく。
坊主は静かに立ち上がり、血生臭く駆けていく影を見送ると、天を見上げ雨に手をかざし、
『雨は人を怠慢にするようだ』
呟くと踵を返し社の中へと戻ってゆく。床の足跡にため息をつき、『もう少し乾くの待つか』床から懐へと視線を移し、自分の不ぬぐいを手に取り、赤くなって血の匂いのする手ぬぐいで、自分の座るあたりをふき取る。
『床に血はついておらんな』
坊主は、また一つため息をつくと天井を見上げ、『怠慢で損をすれば、誰かが得をするか…。』ポツリとつぶやく。
『よいぞ。降りてこい』見上げせたまま声をかける。
カタカタと音がして、天井の角の天板がうごく。
『ううっう』と呻き声。声と共に泥だらけの脚が一本おりてくる。坊主はその脚に近づいて、逞しい腕を伸ばし脚を支える。
『・・・よし・・・。そのままゆっくりと落ちてこい、儂が身体を受け止めてやる。さあ、落ちてこい』
落ちてきたのは、右腕と左足を血で染めた二十歳程度の若者だった。
ドンっ。
『ううっ、、痛い』
坊主は受け止めそこなっていた。
自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!