河童22

話の流れから河童がいると話してきかせた。
適当に口から出る言葉を並べたにしては「上出来だ」と、男は微笑んだ。

子どもの寝息が聞こえる。
やはり疲れているのだろう。横になるとすぐに寝入ったようだ。

男はどこを見るでもなく、薄く夜を照らす月明かりで、陰の木々や草むらのを見ていた。

そしてあることに気づく。
「はて。」
草が揺れている。
自分の頬を撫でる風はない。辺りは風が走っているのだろうか。
「狸か」
辺りを見回してみると、背丈の半分ほどの草むらは、あちらこちらで揺れている。
「おや」
男が座ったまま背筋を伸ばし辺りを見回してみると。
「近づいて来てるのか」
気配がわかる。

草むらの揺れは大きくなる。タッタッと何処かで、何かの足音らしきもある。

囲む気配は、「狸じゃないぞ」と、山育ちの男に感じさせる。
「何だ。山犬でもない気がする」
四つ足、四つ足ではない気もする。
足音、気配はこちらを意識していることは男に感じさせるものだ。

足音に草の揺れ、気配の近づき。男の五感を刺激し六感を働かせ始める。

「山犬」腹を空かせているのか。
男が緊張する。
男は尻を浮かし、近くにある石を掴むと、躊躇いながら、
「脅してみるか」
揺れる草むらに、石を投げ入れようとする。
「飢えた獣だと、怒らせるだけか。熊にしては、気配は小さい。・・やはり犬」

背中に汗が伝い始めた。
子どもを起こすか、獣が去るまで一人手を尽くすか。
子どもを起こすが良いか、起こすと逆に邪魔か。

考えをめぐらしていると動きが止まった。
こちらの出方を見ているのか、それとも一気にくるのか。

山育ちの男には幾度か経験もある。もちろんそのときは、皆大人の男だ。

薄れた気配は、襲ってくる一歩のためか、寝入るのを待っているのか。

男はゆるりと片方膝をたて、杖代わりに使っている棒を手に握る。

静かな草むらにたいして、四股立ち姿で構えを作る。

「五匹・・・いや、もう少しいるのか」

気配がないのは、逆に不気味だ。
子どもを起こして取り乱されても困る。
かといって、一人で複数相手に子どもを守れるでもなく。

襲うならば、弱い子どもを襲うだろう。

五匹いるとしよう。
三匹で男を取り囲み威嚇して動きを止める。
二匹で子どもを襲い引き摺り逃げる。男を襲い足止め、適当なところで三匹も逃げる。

自分は怪我で、子どもは喰われる。

「よし、起こそう。」
人も獣も腹をすかせた水不足のなか、飢えた獣相手はまず無理。子どもであろうと、辛いだろうが我が身は自分で守らせないと。

「こども」小声で呼び掛ける必要はないが、小声で呼び掛け、足で揺すってみる。
「こども起きろ」
一度揺するだけでは起きない。
「子ども起きろ。おきろ子ども」
強めに蹴る。
「起きて儂の言うことを聞け」
一度寝入った子どもが簡単に起きることはなく、男は辺りから目をそらさぬまま、子どもを足蹴りにする。

自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!